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不動産レポート



ランニングコストに注意を払え マンション購入者を襲う「維持費インフレ」の正体

■  価格高騰の陰で膨らむ管理費・修繕積立金

マンション価格の上昇が止まらない。だが、購入希望者が本当に警戒すべきなのは、物件価格だけではない。マンションを買った後、毎月払い続ける管理費や修繕積立金もじわじわと上昇しているからだ。いまやマンション購入は、「いくらなら買えるか」だけで判断する時代ではなくなりつつある。むしろ問われるのは、「そのマンションを20年、30年と無理なく、持ち続けられるか」である。

マンション調査会社の東京カンテイによると、2026年上半期の首都圏中古マンション相場価格は前期比9.1%上昇し、坪504.2万円となった。集計開始後、初の500万円台である。東京都は615.7万円、東京23区は654.5万円まで上昇した。都心部では上昇率に鈍化も見られるものの、城南・城西や城北・城東では高い伸びが続いている。価格高騰の波は、都心の一部だけでなく周辺部へと広がっている。

問題は、その高い取得価格に加えて、所有後の固定的な支出まで増えていることだ。

2025年の首都圏新築マンションでは、70㎡換算の管理費が月2万1691円となり、前年比9.2%上昇した。修繕積立金も同10.9%増の1万148円となり、合計では月3万1839円に達する。2016年は合計2万2574円だったため、わずか9年間で約41%も増えたことになる。

年間に直せば約38万円だ。30年間、仮に同じ金額が続いたとしても1100万円を超える。実際には修繕積立金が途中で引き上げられるケースも多いため、負担はさらに膨らむ可能性がある。

しかも、購入時に一括で支払う修繕積立基金も上昇している。首都圏では2025年に87万9324円となり、11年連続で増えた。東京カンテイは、修繕積立基金がマンション価格の高騰に連動しているだけでなく、建築コストの上昇圧力によって今後さらに水準が切り上がる可能性も指摘している。

 

■「中古なら安い」は通用するのか

では、新築を避けて中古を選べば、ランニングコストは抑えられるのだろうか。

必ずしもそうとはいえない。

首都圏で2025年に流通した中古マンションを見ると、築10年の管理費は月1万7043円、修繕積立金は1万3407円で、合計は3万450円だった。新築の3万1839円との差は月1400円弱にすぎない。さらに築15年では合計3万4509円に達し、新築を上回っている。全築年の平均も3万779円で、前年より1369円増加した。つまり、「新築は高いが、中古なら維持費まで安い」という単純な図式は崩れている。

その理由は修繕積立金にある。首都圏では築1年の修繕積立金が月9706円なのに対し、築10年では1万3407円、築15年では1万7180円まで増える。築年数が進めば、外壁、防水、給排水設備などの大規模修繕や更新時期が近づくため、当然ながら必要な資金も増える。

ここにインフレが重なる。大規模修繕に必要な資材、足場、塗料、設備機器、そして施工を担う人手まで、価格は従来より上がっている。長期修繕計画を作成した時点の工事費と、実際に工事を発注する時点の金額に大きな差が生じれば、管理組合は修繕積立金の増額を検討せざるを得ない。

管理費も同じだ。清掃、管理員、警備、設備点検などは、人件費上昇の影響を受けやすい。インフレが続けば、マンション管理だけが例外的に安くなるとは考えにくい。

 

■「安い修繕積立金」が危険な理由

購入者にとって注意したいのは、管理費や修繕積立金が安いマンションを単純に「得」と評価してしまうことだ。特に中古マンションでは、現在の修繕積立金が低く抑えられていること自体がリスクになり得る。

長期修繕計画で将来必要となる工事費に対し、積立残高が不足していれば、いずれ大幅な値上げや一時金の徴収が必要になる可能性がある。購入時点では月1万円程度だった修繕積立金が、その後1万5000円、2万円と上がれば、家計に与える影響は小さくない。

したがって、中古マンションでは月額だけを見るのではなく、修繕積立金残高、長期修繕計画、今後の増額予定、大規模修繕の実施履歴まで確認する必要がある。

むしろ修繕積立金がある程度高くても、将来必要となる修繕費を計画的に積み立てているマンションの方が、財務的には健全な場合もある。

 

■豪華な共用施設にも「将来請求書」がある

新築マンションでも注意点は多い。近年はラウンジ、ゲストルーム、フィットネス施設、コンシェルジュサービスなどを備えた物件も増えている。購入時には魅力的に映るが、それらの設備やサービスには当然、維持費がかかる。

機械式駐車場やエレベーターのように、定期的なメンテナンスに加え、一定期間後に大規模な更新が必要になる設備もある。

購入時には「この設備があると便利か」という視点だけでなく、「10年後、20年後に誰が、その更新費を負担するのか」まで考えなければならない。

共用施設の充実は資産価値につながる一方で、使わない施設であっても区分所有者は維持費を負担する。豪華さはそのまま将来コストになり得るのである。

 

■住宅ローンだけ見ていては危ない

これからマンションを購入する人に最も重要なのは、「住宅ローン返済額」ではなく、「総住居費」で判断することだろう。住宅ローンに加え、管理費、修繕積立金、固定資産税、駐車場代などを合わせて、毎月どれだけ住宅に支出することになるのか。さらに修繕積立金が将来上昇する余地まで織り込んでおく必要がある。

仮に住宅ローン返済が月15万円でも、管理費と修繕積立金で3万円超、その他の費用を加えれば、実際の住宅関連支出は20万円近くになる可能性もある。

さらに今後、住宅ローン金利まで上昇すれば、購入者は「物件価格」「金利」「ランニングコスト」という3つの上昇圧力にさらされることになる。

これまでのマンション選びでは、「駅から何分か」「価格はいくらか」「資産価値が上がるか」が重視されてきた。

しかし、インフレ時代にはもう一つ、「このマンションは持ち続けられるのか」という視点が欠かせない。管理費や修繕積立金は、単なる負担ではない。建物を適切に維持し、マンションの資産価値を守るための費用でもある。だからこそ、安ければよいわけでも、高ければ安心というわけでもない。

問われているのは、その金額に合理性があり、将来の修繕に必要な資金をきちんと確保できているかどうかだ。マンション価格の高騰ばかりが注目されているが、その陰ではすでに「維持費インフレ」が進んでいる。

これからの購入者に必要なのは、購入価格の比較だけではない。物件を所有している間に一体いくら支払うのかという「生涯コスト」の発想である。

「買えるマンション」を探す時代から、「持ち続けられるマンション」を選ぶ時代へ――。インフレはマンション選びの常識そのものを変え始めている。

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