日本人の人口が減少している。総務省の「住民基本台帳に基づく、人口動態及び世帯数」によれば、2025年1月1日時点の日本人住民の人口は1億2065万3227人(前年比0.75%減)となり、1968年の同調査開始以降、2009年をピークに16年連続で減少している。外国人を含めた総人口でも1億2433万690人(同0.44%減)と減っている。ただ、その外国人住民数を見ると、前年比で10.65%増となり、367万7463人である。外国人住民の人口は2013年の調査開始以降で最多となった。総人口の構成比で2.96%を占めている。
同省の統計によれば、外国人の人口はすべての都道府県で増加している。東京都はその中で人口に占める外国人比率が最も高く、総計に占める外国人住民の割合は5.15%となっている。東京都の人口は今年1月1日時点で1400万2534人であり、このうち外国人人口は72万1223人である。東京都の人口増加は、出生率の高さによる自然増ではなく、外国人を含めた他地域からの流入による社会増である。
外国人の増加率で見ると、北海道が19.57%と2割近い伸びを示して全国で1位だった。北海道は、ニセコや倶知安など外国人観光客に人気であることは知られているが、これに加えて、千歳で半導体大手のラピダスが進出したことが大きく反映されている。
それを踏まえれば、今後の地方での外国人増加率で注目されるのが熊本県菊陽町エリアが挙げられよう。ここも台湾大手の半導体メーカーであるTSMCが進出しており、実際に地元の不動産事業者からは、「台湾人が増えている」との声が上がる。地元の経済界からは、外資進出により地元経済が潤うことに対する期待は大きい。
外国人の増加は、今年7月の参議院選挙で争点の一つとして浮上した。国内での外国人比率が高まることで、日本の生活習慣を守らない人が増えて治安が悪化するといったものが国民感情にあるためだ。一方で、人手不足が著しい国内労働事情を踏まえて、外国人が増えることで、その労働力不足を補えるとの声も上がる。
外国人問題は、日本に限らず欧州や米国でも問題として問題が持ち上がっている。欧米でも外国人に職を奪われる、といった批判が挙がったりしている。移民を積極的に受け入れてきたフランスやドイツでも外国人を排斥する傾向が強まり、移民で成り立っている米国でさえも、トランプ政権により外国人に門戸を狭める内向き志向が強まっている。
しかし、どの国にとっても、自由な往来ができない鎖国的な運営をすればグローバリズムの潮流を失い経済的な成長が鈍ってしまうことは想像に難くない。
その観点から日本の住宅・不動産業界に目を転じて見ると、わかりやすい。今、日本の不動産業界は、息の長い好景気を迎えている。1980年代終わりから始まったバブル経済は、1991年に崩壊。今は、そこから初めて迎える空前の不動産ブームと言ってよいだろう。
日本は、バブル崩壊とリーマン・ショック、東日本大震災が相まって超長期のデフレ社会に甘んじて失われた30年と言われてきた。回復に向けた萌芽は2013年のアベノミクスだ。日本銀行とのタッグにより大規模な金融緩和を導入して2016年にはマイナス金利にまで踏み込んだ。それを皮切りに徐々に風景を変えていった。低い金利により、外資系ファンドなどの海外勢が割安に放置された日本の不動産に目をつけて資金を投下して次々に買い上げていったことで、国内不動産市場が回復の軌道をたどり始めた。
とりわけ東京都心に照準を当ててオフィスビルや住宅への投資を加速させた。都心部からその周辺の準都心部、そして東京23区全体へと波及し、今や東京の平均マンション価格は、中古でさえ1億円を超える水準にまでなった。
「もう東京では家は買えない」。そのように嘆く人々も多いが、一方で既に不動産資産を持っている人々にとって不動産の含み益は大きくなっている。昭和の高度経済期には、各家庭の中で「家は資産になるので、借家に住むよりも購入しよう」とされてきたが、それを現実にしている人もいるということになる。昭和時代でなくても、平成のリーマン・ショック後に不動産が買いたたかれていた頃にマンションを購入した人は大きな含み益を得ている。東京都江東区住吉エリアでリーマン・ショック後に3000万円台前半でマンションを購入した男性は、今の評価額は築年数が経過しているにもかかわらず5000万円台半ばになっているという。おそらく外資勢なしで、日本だけで今のような不動産市場の回復はなかったはずだ。
ただ、今年7月に東京都千代田区は、不動産大手が加盟する業界団体である不動産協会に対して、開発する分譲マンションを販売する際に転売を5年間禁止するなどの規制を設けてほしいといった趣旨の要望を出した。中国系を始めとする海外勢を念頭に、マンション購入後に転売利益を得ようとする投資家が必要以上に同区内のマンション価格を引き上げていると考えているためだ。千代田区に住みたいと思っている人が住めない状況に不満を持っているようだ。
一方で、業界側としては、根拠と目的があいまいであり、個人の財産権に及ぶ話であるとして、千代田区に対して説明を求めていくという対応をしている。そもそも新築時に転売規制をかけられたとしても、好立地である中古マンションを購入した後に同様の転売規制を求めることは難しいのが実態であり、マーケット全体から見れば合理性に欠けている。価格はマーケットが決めるもの、需給バランスで決まるものだ。特に不動産はシクリカルなマーケットで、それが経済原理とされるが、1991年にバブル経済が崩壊した際には、過熱した不動産市場に流れていた資金を抑制するために総量規制をかけたのが端緒だった。当局が市況に介入すれば、どうなるかを過去に経験しているだけに慎重な対応が求められている。
足元の日本の経済環境としては、日銀が利上げ姿勢を崩していないものの、金利が上がったと言っても未だに長期金利が1.5%台~1.6%台と2%に届かず、政策金利も0.5%の水準にある。今後の日銀の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げたとしても0.75%と1%に届いていない。主要な諸外国と比較すれば、低金利状態が続いており、為替を見ても依然として140円台後半で推移して円安の状態にある。