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不動産レポート



大手も参入したリノベマンション 新築供給の減少で注目を浴びる

新規では出にくい好立地を求めるニーズ

分譲マンションに適した用地が年々少なくなる中で、その用地の取引価格と建築コストの高騰というダブルパンチを受けて新築マンションの供給も年々減っている。バブル期の頃は、年間に8万戸超が供給されていたものが、今や3万戸を割り込む水準にまで落ち込んでいる。人口の減少も加速していることで、新築供給をしづらい環境にもある。そんな中で、注目株が中古マンションだ。築浅ではなく、築20年や築30年と一定程度の年数が経過しているマンションであってもリノベーションを行うことで資産価値を保つことができる。分譲マンション市場は、新築だけでなく中古をリノベにより資産価値を高めるビジネスが活況を呈しそうだ。

 

住宅ストックが積み上がっている。新築供給が少ないことで中古住宅の取引は活発に推移している。矢野経済研究所の調査によれば、中古住宅の買い取り再販市場の規模は拡大トレンドにある。直近2022年の調査結果では、買い取り再販の成約戸数(中古マンション・中古戸建て住宅)は4万1000戸と前年比で5.1%増と推計している。同研究所は、市場拡大の要因としては、中古住宅の増加が挙げられるとしており、市場規模は2025年に年間4万5000戸、2030年に2022年比で22.0%増の5万戸になると予測している。

魅力のある再生がリノベマンションの売れ行きのカギを握る。分譲マンションの区分を買い取って専用部をスケルトン状態にしたうえで大改装するが、それにとどまらずに機能面を最新バージョンに引き上げていくことが重要だ。例えば、スマートハウス機能を導入して生活リズムに連動した照明の自動制御や家中の照明をスマートフォンから一括制御できたりするもの、天気予報やゴミの収集日といった生活情報を音声で知らせるといったものだ。

 

■不動産大手も独自ブランドで展開

不動産各社もこのリノベマンションに領域に本格的に参入している。三菱地所レジデンスでは、2013年に「リノレジ」のブランドでリノベーション事業をスタートした。同社では、単なるリノベではない。新築分譲マンションに準じた省エネ設備機器を導入し、「ZEH水準省エネ住宅」、もしくは「省エネ基準適合住宅」にしてから再販する。高断熱浴槽やLED照明、節湯水栓など省エネ性能の高い設備に更新している。施工箇所へのアフターサービスなども提供している。中古といっても新耐震基準で建築確認を取得したマンションのみを取り扱っているのが特徴だ。

東急リバブルでは、一棟丸ごとマンションを買い取ってリノベーションを手掛ける。そのマンションで退去・空室が出たところから、区分リノベを実施して「リディアス」のブランドで再販している。築30~40年以上の経年マンションをテコ入れし、過去には、東京・目黒駅から近い場所で築44年のマンション(総戸数114戸)の区分を6000万円で再販した実績がある。大京は「リノアルファ」のブランドで再販を手掛けている。

こうした大手不動産各社がリノベ再販事業に本格介入する背景には、資金に余裕のある富裕層当が新築では出にくい好立地を求めていることが挙げられる。とりわけ、都心マンションの売買仲介と買い取り再販の回転は速い。東京都港区西麻布では2億円以上で再販され、キャッシュですぐに買い手が付いた。高額案件で、そうしたケースは珍しくない。リフォーム、リノベーションによって、古臭さを消して新築に近い環境にできることが魅力である。

リノベ市場も引き続き活況を呈すると予想される。複数のデベロッパーや、その系列の不動産仲介会社によれは、「築20~30年のマンションがリノベ・リフォーム後に平均30~40日で成約に至り、ときにはリノベーション中に成約が決まることもある」と話す。

また、一棟収益マンションでは、不動産会社がリノベーション後に客付けを行い満室にしてから投資家に販売したり、一括借り上げや住まいの困りごとサービスなどを加えて管理をしている。実需と投資のニーズに対応できる。

 

■個人の不動産投資家も注目する

リノベーションは、政府が主導するSDGs(持続可能な開発目標)でも注目され、リノベる(東京都港区)が金沢工業大学および国士舘大学と共同で研究したところ、マンションは建て替えるよりも一棟リノベーションのほうが二酸化炭素と廃棄物排出量の削減効果が大きいという結果が出ている。同じ規模の新築に建て替える場合と比較すると、リノベーションのほうが最大76%のCO2排出量と最大96%の廃棄物排出量を削減できる。

実需のみならず、リノベマンションは、不動産の個人投資家からの引き合いが多いのも特徴だ。税引き後のキャッシュフロー、もしくは融資返済後のキャッシュフローが新築よりも魅力的なためだ。建築費との兼ね合いがカギを握る。建築費はダイレクトに利益部分に影響するからだ。東京23区内で投資する個人投資家の一人に話を聞くと、「税金や償却の問題もある。総合的な勝負となるため、自分の財務状況を踏まえながら構造体にあったリノベーションで運用資産の価値を高めていきたい」と語る。

 

■金利の先高観に注視も都心影響は限定的

一方で、そろりリスク面に注視を払う環境が強まっている。開発コストの高止まりに加えて、日銀の利上げ政策が影響しているためだ。東京都心はともかく、周辺県を地盤とする不動産事業者からは、「買い取り再販専業者の在庫が積み上がり始めている」との声が聞かれるようになった。都心部の消費者は、キャッシュ買いが中心で金利の上げ下げにさほど影響されない。金利に対する感応度は、都心部・東京23区よりも銀行など金融機関から融資を受ける層の多い地域ほど高い。