都心部を中心に東京の分譲マンション価格が新築・中古ともに高水準で推移し、価格調整局面の兆しが見られない。国内の需要家や不動産投資家は、この高値圏を嫌い地方都市、特に日本第2の都市である大阪圏に資金を振り向ける動きが活発化している。2013年のアベノミクス以降、地価とマンション価格は右肩上がりである。今年4月には大阪・関西万博が控えており、国内では万博に向けての盛り上がりを欠くとはいえ、資産価値はそれとは反比例の動きである。直近の大阪圏でのマンション市場を追った。
新築分譲マンション市場は縮小傾向が続く。不動産経済研究所によれば、全国の発売戸数は2024年に5万9467戸と4年ぶりに6万戸を割り込み1994年の過去最多である18万8343戸から3分の1以下にまで縮んだ。首都圏は2万3003戸(前年比14.4%減)、近畿圏が1万5137戸(同1.6%減)だった。同研究所は2025年の発売と数を6万2000戸と読む。
三大都市圏など多くの多くのエリアで減少している。住宅・不動産各社は、かつての発売戸数を追求するビジネスモデルではなく、人口減少を踏まえて売れる場所に新規供給する姿勢にシフトした。大量供給時代は、即日完売を競い合い、売れない物件はたたき売りにより在庫を抱えないようにしていたが、現在では地域厳選で新築を開発し、体力のあるデベロッパー大手は、売れなくても値下げせずにじっくりと客を待ち時間がかかっても適正価格を目指す。そうした展開が今後の本流になる。
■大阪・梅田の再開発など起爆剤に成長
住宅ストックが積み上がっていく中で、新築よりも既存住宅の流通性を高める方向に国も政策をシフトしている。新築供給が絞られる中で、好立地の中古マンションは新築並みの価格帯で取引されることはもはや珍しくない。
そうしたトレンドは、近畿圏でも同じだ。不動産調査会社の東京カンテイによれば、2024年下半期の中古マンション価格の相場は坪単価で244万3000円と上半期と比べて5.3%アップし、2期連続で上昇している。大阪府を見ても同248.2万円(同8.0%上昇)となり、大阪市では同279万3000円(同8.4%上昇)である。同市中心6区(北・福島・西・中央・浪速・天王寺)に至っては、上期の306万7000円から下期には327万5000円へと上がった。新型コロナウイルス禍前の2019年の坪単価220万円から駆け上がり、1坪単価の300万円台は、ひと昔前の東京23区の平均価格にまで達した。
大阪エリアの特徴を見ていくと、JR大阪駅周辺では、三菱地所など大手デベロッパーや住宅メーカーが大規模再開発を進めて高層ビル群が目を引く。大阪駅北ヤード(梅田貨物駅)の跡地に誕生した「グランフロント大阪」や、うめきた2期地区開発事業である「グラングリーン大阪」がヒト、モノ、カネを引きつけている。2023年に開業した地下鉄北梅田駅は関西空港までダイレクトにつながる。西日本最大の地下街を持ち合わせて大規模なショッピング街をなしている。梅田駅の周辺駅の築浅(3年前後)のマンション価格は、新築時より高値で売れるケースも少なくない。
■大阪、神戸、京都は不動産投資家に人気が多い
不動産投資サイトを運営する複数の会社からは、「東京在住者にとどまらず、広島や岡山、福岡からの引き合いも多い」と述べ、大阪圏外からの資金流入の活発さを実感する。特に不動産投資家は、減価償却部分に着目するという。例えば、東京の収益マンションの場合、資材価格や労務費が上昇しているものの、土地代と建物代の割合は7対3で土地代が高い。
一方、大阪では土地代が占める割合が3~4割程度にとどまり、減価償却対象となる建物部分が6割になることで投資家を引きつける。東京都心6区(千代田・中央・港・新宿・渋谷・文京)と大阪市中心6区の昨年12月の中古マンション売り出し価格を比べると、東京都心が1億4767万円であり、大阪市中心が6940万円で2倍の開きがある。資材価格と労務費に2倍の開きがあるわけではない。
兵庫・神戸市を見ると、2024年下期は坪238万5000円(前期比0.2%上昇)となった。西宮北口駅は、阪急神戸線と阪急今津線が交差することで人流が活発だ。大阪と神戸の両方面のちょうど中間地点にある利便性の高さから商業施設が集積する。西宮北口駅から梅田駅までは特急電車でおよそ13分、神戸三ノ宮駅までは15~16分である。特に昔から阪急線のブランドが群を抜く人気だ。新築の分譲マンションも乱立する。住みたい街ランキングなどでも上位に顔を出す。周辺には甲南大学や関西学院大学など学生が集まる場所でもあるため、単身者需要がおう盛だ。収益マンションのオーナーから注目されているようだ。
インバウンドのメッカとも言える京都府。前述の東京カンテイによれば、同府の中古マンション価格の坪単価は2024年前期に288万5000円で、下期が296万5000円である。京都市を同様に見ると、前者が297万1000円で、後者が301万8000円と300万円台に乗せた。京都エリアを見ると、地下鉄東西ラインにある二条駅や西大路御池駅、太秦天神川駅といったエリアは、家族向けの分譲マンションや単身者向けの収益マンションが混在するのが特徴だ。京都駅を北上すると京都大学や同志社大学、京都府立大学、立命館大学がある。京都府立大学の周辺は高級住宅街として知られる。
ステータスがあるとされるのが鴨川沿いの分譲マンション。半面、京都駅の南側に目を移すと、昔から九条エリアを中心に治安の面で人気が今ひとつだが、最近の再開発の流れに沿って徐々に改善されてきたようだ。
地域特性により受給バランスが異なる。新規供給に適したエリアは狭まっている中で、既に好立地を抑えている中古物件に人気が集中する構図は続きそうだ。
◆2024年新規発売戸数1位は、首都圏が野村不動産、近畿圏がプレサンス
ちなみに売り主・事業主別にトップ10を首都圏と近畿圏で見ると次のようになる。首都圏の1位は野村不動産、2位が三井不動産レジデンシャル、3位が住友不動産となり、三菱地所レジデンス、オープンハウス・ディベロップメント、東京建物、新日本建設、日鉄興和不動産、東急不動産、一建設と続いた。
近畿圏での1位はプレサンスコーポレーション、2位が阪急阪神不動産、3位がエスリードとなり、TUKUYOMI HOLDINGS、和田興産、近鉄不動産、関電不動産開発、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、住友不動産となった。