分譲マンションの管理組合が機能していないことが問題視されている。新築分譲の供給が減ってきたとはいえ、新たなマンションが毎年供給されるとともに、中古マンションの数も増加する。築40年、築50年という老朽化が進むマンションの資産価値を上げるためには、管理がしっかりしていることが大切になる。マンションは「管理を買え」というくらい重要な位置づけだ。ただ、老朽化マンションほど居住者の年齢が上がり、高齢者が多くなると管理組合の成り手がいなくなり、管理機能不全に陥ってしまう。そこで「第三者管理方式」という管理方法が注目を浴びているが、その導入は実需向けよりも投資用マンションでの導入で導入が進んでいる。
一般的にマンションの管理組合は、理事長、副理事長、監査役を居住者(物件オーナー)の輪番制が取られている。管理が行き届いていないとマンション価値が毀損する。例えば、外壁やエレベーター、照明などの共用部の不具合個所を適宜修正できなかったり、ゴミ出し、清掃といったルールの徹底がなされないといったことが頻繁化する恐れがある。それはマンションの資産価値が毀損することにつながり、売却するときの売り値が高くできなかったり、賃貸として貸し出す場合になかなか入居者が決まらず、決まったとしても適正な家賃が取れないといったケースに波及する。
とりわけ投資家が好むようなマンションは、その区分を所有する人が住んでいるわけではないので、管理組合が機能しにくいといった事情が介在しやすい環境にある。所有するマンションから離れたところに住んでいる、理事会が面倒くさい、高齢であるため理事会に参加するのは身体にきつい、こういったことが主な理由である。
理事会にきちっと出て、輪番制で役員をしっかり勤めている入居者にとっては不公平感が募る一方だ。「輪番制で順番が来ても役員を無視する人の管理費を上げろ」、「役員をする人に少額でも報酬を出すべきでは?」、「役員をする人に何らかのメリットを与えてはどうか」などの意見が噴出する組合も少なくない。
こうした管理環境の悪化を受けて今注目されているのが、「第三者管理方式」だ。この方式は、文字通りマンション管理組合の構成員を区分所有者以外の第三者に委託することだ。マンション管理会社を始めとする国家資格のマンション管理士を会社や弁護士等々に委託してまかせる。共用部分の修繕検討や長期修繕計画などをプロの目線から手掛けていくことでマンションの資産価値を上げてくれることに期待するものだ。
大和ハウスグループの大和ライフネクストは、分譲マンション管理の新たな選択肢として、第三者管理受託サービス「TAKSTYLE(タクスタイル)」を提供している。マンション管理に精通したプロの人材が管理組合における管理者の役割を担う「第三者管理」を受託することで、的確かつスピーディな管理運営を実現し、快適なマンションライフの創造とともに管理組合員の精神的・物理的負担の軽減、マンションの資産価値向上に貢献するという。
同社では、国家資格である「マンション管理士」や「管理業務主任者」などの資格を有し、マンション管理経験が豊富なプロの人材を登用するほか、第三者管理受託サービスを提供する部門と、管理の実務を行う部門、マンションの会計を担当する部門を明確に切り分け、互いに牽制機能を持つことで不正を防止する体制を重視する。管理業務に関する内部監査を適宜行い、利益相反となりうる取引については、総会で承認のうえで履行する。
大和ハウスグループだけでなく、大手不動産系列の管理会社も同様な第三者管理サービスを提供している。
■悪質業者を踏まえ国交省がガイドライン
しかしながら一方で、悪質な事業者が少なくないことも想像に難くない。第三者管理を受けた会社が善良であるとは限らない。区分所有者に了解も得ず、見積もりも取らずに大規模修繕工事を自社系列の会社に高値で発注したり、不必要な工事を発注したりするケースは少なくない。もっと悪質なケースは、管理費や修繕積立金を横領・着服して警察沙汰になるケースもある。つまり、管理組合のお金をいいように使われて問題になるケースが少なくないことだ。
国土交通省では、2023年12月に「第三者管理方式に関する実態調査」を実施している。マンション管理業協会会員351社を対象に152社から有効回答を得ている。それを見ると、管理組合から第三者管理方式を受託しているのは48社とおよそ3割あることが分かっている。管理組合数としては1991件になる。その種別を見ると、「投資用マンション」が最多となり、管理組合数は1055件に上っている。2番目に多いのが「自己居住用及び投資用マンション」の435件(重複回復)、「自己居住用マンション」の306件だった。
管理者業務に関する報酬について、「報酬を設定している」は4割となり、残りの6割は「報酬を設定していない」だった。また、管理規約等で管理者が総会の決議を経ずに行うことができる発注限度額を規定しているのは15%にとどまり、「規定を設けていない」が85%と大半を占めている。規定を設けている場合の上限額を見ると、平均額は10万~140万円の範囲である。
このような状況を踏まえて、国交省は2024年6月に従来の「外部専門家の活用ガイドライン(平成29年6月)」を再構成して「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」として作成している。
マンション管理会社やマンション管理士といった外部の専門家が管理者として就任する場合の留意事項を整理している。新築ではなく、既存マンションで導入する場合のプロセスや、管理者権限の範囲等、通帳・印鑑の保管の有り方、利益相反等におけるプロセスや区分所有者に対する情報開示のあり方、大規模修繕工事におけるプロセスなどの情報開示などである。
例えば、管理組合運営のあり方(管理者権限の範囲等)については、管理者の任期は「原則1年程度とすることが望ましい」としていることや、管理組合の財産を管理する口座の印鑑等は「監事が保管することが望ましい」、大規模修繕工事は「修繕委員会を設置し、これを主体として検討することが望ましい」とした。
少子高齢社会に伴う人口減少は、マンションの資産価値に影響を与える事態になっている。より良い資産を将来にわたって持ち続けるために、個々のマンション管理組合は、管理のありようを見直す時期に来ている。