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不動産レポート



衰え知らず億ション需要

2024年上半期を振り返る

 利上げ観測寄せ付けず印象付けた都心の一人勝ち 

 

分譲マンション人気が衰えない。特に高額帯、億ションは人気だ。これは都心部の中古マンション取引価格からもうかがえる。日銀による政策金利の動向にもよるが、欧米のように急激に金利が上昇する公算は小さく、住宅・不動産業界としては、経済界が昨年と今年に大幅な賃上げを実現したことで、引き続きマンション市況は底堅く動くさみている。その一方で郊外部に目を転じると、そろりと価格調整局面の様相を呈している。

 

JR中野駅前に4億円台も登場

 

基本的に2024年上半期を振り返ってみると、大手不動産会社の分譲事業は好調だ。今期の分譲事業の粗利は20%台半ば見込むところが多い。野村不動産では、粗利25%を想定し、マンション計上戸数は4000戸の予定。都心マーケットがけん引している。

 

三井不動産と三井不動産レジデンシャルがJR中野駅北口で「パークシティ中野 ザ タワーエアーズ」(総戸数545戸)と「パークシティ中野 ザ タワーブリーズ」(同262戸)の開発を進めている。ザ タワーエアーズは制震構造と中間免震構造の地上24階地下2階建て、ザ タワーブリーズは基礎免震構造を採用した地上20階地下1階建てとなる。商業棟も併設され、大型のスーパーマーケットや飲食店などが入居する。

 

両棟を合わせた戸数は807戸となるが、地権者住戸などもあり、一般販売対象は401戸だ。地権者数は100人を超えている。一般販売はエアーズが239戸、ブリーズが162戸。住戸は105タイプをそろえており、間取りは1DK~4LDKと単身視野向けからファミリー向けまで幅広く計画している。専有面積は30~125㎡である。リビングダイニングの最高天井高が約2.65mだが、プレミアム住戸では約3mを確保している。

 

全戸に熱交換気システムを採用し、自動食器洗浄機やディスポーザー、床暖房なども標準として備えられている。マンションの棟内には、72時間分の防災備品も完備する。

 

気になる販売価格は1億2000万円台~4億円台で、1坪当たりの販売単価は700万円台である。同社では、共働きを中心に世帯年収2000万~3000万円台をターゲットに置いており、プレミアム住戸を23~24階に17戸を計画している。

 

■中古でも港区は坪1千万円近い

 

この高額帯を購入する層を狙うのは三菱地所レジデンスも同じだ。同社の分譲事業の主力である「ザ・パークハウス」のほか、投資用の「ザ・パークワンズ」なども供給している。同社によれば、購入者の属性としては世帯年収が1200万円ほどだが、最近は夫婦共働きのパワーカップルだけでなく、両親の収入などを合わせた家族全員の収入で購入する層を「パワーファミリー」と位置付けて事業展開している。そのパワーファミリーの世帯収入は3000万円超という。高額帯の購入者の特徴として、数年ごとにマンションを買い替えて都心を転々とする傾向があるようだ。3億円を超えるようなマンションを購入する人は、ローンを組まずに現金買いが多いのが特徴だ。

 

この高額帯は中古マンションにも波及している。マンション調査会社の東京カンテイの調べでは、都心6区(千代田・中央・港・新宿・渋谷・文京)の平均価格は1億2276万円(7月時点)と18カ月連続で1億円の大台に乗せている。価格上昇率を前年同月比で見てみると、5月は16.3%、6月が17.1%、7月が18.6%と上げ幅が拡大基調にある。単純に7月は1年前との比較でおよそ2割も上がっていることになる。

 

2024年1~6月の上半期の首都圏の中古マンション相場は、坪364万円(前期比8.8%上昇)しており、東京23区は453.1万円(前期比10.9%上昇)、都心は649.2万円(同14.0%上昇)である。港区を見ると、700万円台から900万円超と1000万円台が視野に入る水準まで上昇している。

 

■家賃上昇に期待する投資家たち

 

こうした高額物件には、投資マネーが流入する。特に近年の円安を受けて海外からのインバウンドマネーを取り込んでいる。日米の金利差により、円が売られ一時160円台まで円安が進行し、円は対ドルに対して最大26%もの下落を記録。今後は米国が利下げに転じ、日本が利上げに向かっていることで日米金利差が縮む見込みだ。国内の投資市場の潮目になる可能性もある。

 

ただ、不動産サービスのJLLによると、「投資家としては、レバレッジ効果が得られることで高い利回りが享受できている」と指摘するとともに、「金利上昇に伴いレバレッジ効果が若干薄らいでいるものの、引き続きレバレッジ効果を得られる世界で唯一の市場であることに変わりはない」として活発な不動産投資が続くとみている。今後は、家賃の上昇にも期待できる。

 

国内の投資家の意欲も旺盛だ。長谷工コーポレーションのグループ会社である長谷工ライブネットが8月にとりまとめた「不動産投資に関する調査」によると、住宅系のマインドが反転上昇トレンドにある。不動産投資を検討する重点エリアとして、東京23区や大阪市が8割台で推移している。向こう1年の賃料動向に関する質問には、東京都心・都心他23区と大阪市で「賃料上昇」を見込む回答が8~9割ほどを占めた。中古マンションなど建築年数が経っている物件では、専有部の設備交換や共用・外構部分の改修等の対応などでマンションの質を引き上げる姿勢が強いこともわかった。

 

■東京から大阪に資金シフトも

また、東京都心での高騰を受けて、日本第2の都市である大阪に資金を振り向ける動きも少なくない。特に国内の地方の富裕層が大阪や横浜市、福岡といった都市に目を向ける。中古マンション価格は、大阪市中心6区(福島・西・天王寺・浪速・北・中央)で平均価格6052万円(前月比3.7%上昇)となり、7カ月連続で上がっている。

 

2024年上期(1~6月)の中古相場で言えば、大阪市は1坪当たり257.7万円と前年同月との比較で12.5%と二桁の上昇幅を見せている。都心6区に至っては、坪306.7万円(同13.8%上昇)と300万円の大台に乗せている。大阪だけにとどまらず、京都府(288.5万円)など全ての府県で3期ぶりに上昇に転じた。

 

2024年の上半期の不動産市場は、マイナス金利解除で金融緩和を終了し、徐々に高まる金利上昇観測を受けながらも好調と言ってよい状況で推移した。年末に向けて一波乱があるかもしれないが、経済が腰折せず長い時間軸により徐々に金利が上がるのであれば不動産市場が悪化することはなさそうだ。