日本の不動産価格は高止まりし、バブル経済期を超える水準に達している。不動産経済研究所の調査では、東京23区の平均価格が2023年に1億円を超えた。中古マンションでも都心で億ションと呼ばれる物件が珍しくない。日本不動産研究所によれば、2023年10月から2024年4月までの価格変動率を世界の主要都市と比較したところ、東京と大阪のマンション価格の上昇率は共に1.5%で世界1位だとする調査結果を発表した。2013年以降のアベノミクス、日銀の大規模金融緩和であふれた緩和マネーに加えて、円安進行に伴う割安感を受けて海外投資家のマネーが価格を押し上げている。過去10年間で資産価値が2倍になったマンションも少なくない。
日本国内の一般消費者にとって、新築マンションは高根の花となった。購入したマンションを家賃換算してみると、投資回収にかかる期間に半世紀を要する物件も出てきた。不動産調査会社の東京カンテイでは、首都圏の新築マンション価格が賃料の何年分に相当するかを「新築マンションPER」として算出している。そのPERは、「マンション価格÷(月額賃料×12カ月)」で算出する。それによれば、2023年の首都圏平均値は26.36となり、前の年に比べて0.69ポイント上昇し、最高値を2年連続で更新した。要するに、購入した新築マンション価格を家賃で回収するには26.36年が必要ということだ。
首都圏129駅を対象に調べたところ、このPERが最も高い駅、つまり割高なエリア1位は、東京メトロ南北線の「麻布十番」で49.32である。実に投資回収に49年もかかり、首都圏平均と比較して回収に23年近くも余計に時間を要する計算となる。価格は2億7009万円(専有面積70㎡換算)で、月額賃料が45万6353円だった。ちなみに、同調査で賃料事例が発生していた物件のうち専有面積が100㎡以上の住戸に限定した場合の平均賃料は87万4992円で、これに基づきマンションPERを算出すると、25.72まで低下している。
2位はJR山手線の「浜松町」でPER45.75、価格が2億3516万円、賃料42万8380円だった。3位が小田急小田原線の「代々木上原」でPER43.80、価格が2億462万円、賃料38万9328円である。
割高な駅トップ20(プレスリリース抜粋・表参照)を見ると、東京23区以外からは、神奈川県内の「元町・中華街」や「橋本」が登場している。
一方で、割安な上位20駅を見ると、そのトップは、JR京葉線の検見川浜でPER16.09だった。価格は3875万円、賃料が20万633円だった。投資回収にかかる期間は16.09年で、賃料水準に対して価格が最も割安な駅とされる。2位はJR京葉線の海浜幕張のPER17.04、価格が4856万円、賃料23万7474円となり、3位にJR常磐線の金町でPER17.61、価格が5238万円、賃料24万7838円が続いた。
上位20位を見ると、郊外・近郊外エリアが目立ち、PER10台は15位のJR京浜東北線の南浦和まででPER19.94だった。20位は京王線の聖蹟桜ヶ丘でPER20.22だった。
賃料見合いにおいて新築価格が比較的割安であるエリアは、東京都下や周辺の神奈川、埼玉、千葉の3県に分布している。都心部やその周辺、城南~横浜エリアにかけて強い割高感を示した。
新築時よりも資産価値が上がっている中古マンションも都心部に集中する。同社では、築10年が経過したマンションの価格をリセールバリューとして発表しており、中古流通している物件を「リセールバリュー(%)=中古流通時の価格÷新築分譲時の価格×100」で算出。2023年を見ると、リセールバリューが最も高い駅は、東京メトロ千代田線の「新御茶ノ水」で295.5%だった。新築分譲時の1坪当たりの平均単価424万8000円であるが、中古流通市場では1255万2000円と3倍近い値上がりである。新御茶ノ水での対象物件は大手建設会社が施工した地上41階の駅近タワマンのみで、中古市場に流通している住戸は全て20階以上となり、築後10年を経た現在の価格は坪1200万円を優に超えている。
2位は、東京メトロ南北線の「六本木一丁目」で265.7%となり、新築分譲時に424万8000円が中古流通時に1274万2000円だった。3位はJR総武線の「飯田橋」で223.1%となり、新築分譲時に393万8000円、中古流通時に878万4000円だった。
リセールバリューランキング上位30駅(プレスリリース抜粋・表参照)を見ると、すべて東京23区内で占めている。30位の東京メトロ「茗荷谷」でも新築時よりも約8割高での再販価格になっている。国内外の投資家や富裕層からのニーズを集める港区が最多の12駅を占めており、番町エリアを擁する千代田区から7駅がランクインし、100年に一度の駅前大再開発が進む渋谷区から5駅が入っている。
2022年の調査では、東京23区以外も上位30に顔を出していたが、今回は姿を消している。それに取って代わって東京オリンピック・パラリンピックを契機に再開発が推し進められた東京メトロ日比谷線の「築地」や都営地下鉄大江戸線の「国立競技場」がランクインした。
ちなみに新築マンションPERで割高1位の「麻布十番」は、リセールバリューが200.7%と8位にランクインしている。新築分譲時に372万2000円だったが、中古流通時の価格はに747万1000円となった。相場の坪賃料は2万305円だった。8位の麻布十番までがリセールバリューで200%以上である。
上位30駅を見ると、海外の投資家や富裕層からのニーズを集める港区が最多の12駅、番町アドレスをはじめ国内の富裕層から人気を集めている千代田区から7駅がそれぞれランクインした。再開発事業で賑わう渋谷区から5駅がランクインした。
このようにデータで見ると、東京のマンション価格はうなぎのぼりだ。しかし、海外の富裕層・投資家にとっては、東京はまだ上値余地があるとみる。ハイエンドのマンションに絞って価格水準を比較すると、世界の主要国に水をあけられているからだ。日本不動産研究所が指数化しており、東京都港区元麻布のマンション価格1戸を100とした場合、香港は268.2となり、ロンドンが207.5、ニューヨークが144.6、台北と上海が共に165.6、シンガポールが140.2、北京が131.3と軒並み東京・元麻布を上回っている。
こうした都市には天井感が漂っていることで、富裕層の投資マネーが東京都心に向かう公算は大きい。