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不動産レポート



能登半島地震 建物耐震性への注目、再び

能登半島地震

建物耐震性への注目、再び

 資産価値を守る方策に熱視線 

 

2024年元旦、新年の門出を祝っている最中に能登半島を強い地震が襲った。帰省客や旅行客でいつもより人が多い時期と重なり、それが被害者を増やした。2011年3月11日の東日本大震災を思わせる津波や液状化現象も町を破壊した。建物が波で押し流されたり、液状化により建物が傾いたりした。加えて、1995年1月17日の阪神・淡路大震災のようにビルが倒壊し、2階建て家屋の1階部分が押しつぶされた。日本は地震大国だ。阪神・淡路大震災、東日本大震災、能登半島地震。十数年に一度の頻度で大きな震災が発生している。日本の建物の耐震性は、世界的にも評価が高いが、すべての建物に当てはまるものではなく、旧耐震の古い建物は心もとない。液状化現象では、建物が頑丈でも建物が傾いたりして住めなくなる。能登半島地震を踏まえ建物の耐震性と液状化現象とは何かを探ってみた。

 

低層部ほど耐震壁が多い作り必須

能登半島地震は2024年1月1日の16時10分に発生した。能登半島北東部を震源とするもので、最大震度7、地震規模は震源の深さがおよそ16㎞でマグニチュード7.6だった。石川県だけでなく、周辺の新潟県や富山県と幅広いエリアで震度5強の強い揺れを観測した。建物の全壊・半壊は珍しくなく、損壊を受けなかった建物はほとんどないような状況だ。建物が古く、しかも耐震補強等がなされていないことが被害を拡大した。

日本で言う新耐震基準とは、1981年に施行された基準を指す。建物が全く損壊しないと約束しているものではないが、震度6~7の地震であっても建物が崩れない仕様が求められている。建物の丈夫さを測る指標に耐震等級というものがあるが、これは「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が2000年4月に施行され、「住宅性能表示制度」で耐震等級1などと指標で表す。同制度の等級2は等級1の1.25倍、等級3では等級1の1.5倍の力を受けても倒壊しないレベルの耐震性とされる。

今回の能登半島地震では2階が1階を押しつぶしたケースを散見するが、下の階の耐震力が不足しているために発生した現象だとみられる。1階が店舗や車庫といった壁の少ないスペースでは耐震力が足りないことが少なくない。東京23区内では、狭小地に地上3階建ての戸建て住宅を建てて販売するシーンをよく見るが、そのような建物は、通常より補強をしておく必要がありそうだ。地震の力は、水平方向への力が大きくかかってくるので、とりわけ1階部分の耐震壁が多いつくりが有利となる。不足している壁量を確保することと、劣化している接合部分の補強が欠かせない。上の階の重荷は軽いほうが下を押し潰す可能性が低くなる。建物全体にかかる地震力よりも建物の耐力のほうが強い設計が必要となる。

古い建物であっても耐震補強で地震に強い住まいに作り変えることは可能だ。耐震診断を行い、一次診断で設計内容をチェックし、その後の二次診断で現地の施工状態を確認するが、二次診断以降は建築士や構造一級建築士が行う。

 

複合施設開発では柱・梁を減らしても強靭へ

マンションなど集合住宅でも耐震診断は有効だ。目視・触診・打診の結果を見てから機械を伴った本格調査をする。ただ、本格的に機械を入れて実施する調査は、それなりにコストが発生するのでマンション管理組合が及び腰となりがちだが、専門家でも外から見ただけではわからない部分が多い。例えば、外壁等にクラックが多い場合は、何らかの原因があるので、しっかり調査をしておくほうが安心感はあるし、調査をした結果、問題がなければ耐震性に優れていると判定され、それをもとに長期修繕計画が作れるので、後々の大規模修繕で無駄な工事をすることがない。資産価値も上がり、売却もしやすくなる。

スーパーゼネコンの鹿島は2月6日、開放的な居室空間を提供しながら、より高い安全性を確保した超高層建物を実現する構法を開発したと発表した。「K-ARCS」(カークス)構法と呼び、強度と靭性に優れたCFT構造と、高耐力・高靭性を兼ね備えた超高層鉄筋コンクリート造技術「HiRC工法」(ハイアールシー工法)を組み合わせ、さらに制震装置「HiDAX」(ハイダックス) を搭載する。この混合構造により、従来の耐震・制震架構よりも柱・梁を減らすことができる。単一構造では困難だった自由度の高い開放的な空間も提供が可能という。「浜松町二丁目地区第一種市街地再開発事業」(東京・港)に初めて採用する。開発規模は地上46階地下1階建てとなり、マンションやオフィス、飲食店、公共施設などが入居する複合ビル開発。第1期引き渡しは今年11月、全体引き渡しが2026年12月の予定だ。

 

液状化現象の被害の可能性を知る

また、今回の地震で見られた液状化現象は、粒径が均一で緩い砂地盤と長周期地震動、地下の地下水が比較的に浅いところにあるという条件がそろえば全国どこでも液状化が発生することを示している。特に切土や盛土といった人工地盤での液状化発生が多い。住宅を新しく建てる場合や、中古を購入する場合には、震動・地形・地質などの危険度をハザードマップなどで調べて宅地ごとの液状化被害の可能性を知ることができる。ただ、ハザードマップ、液状化マップは万能ではなく、すべてを網羅できていない。対象となる物件の土地の成り立ち、例えば昔は沼や田んぼがあったり、近くに河川があったなどは古地図等でわかる。その土地に液状化の可能性があれば、地盤改良など抑止工事を施すことが一考だ。

地盤調査のジャパンホームシールドでは、2月2日に能登半島地震の被害調査報告を出したが、その中で「液状化現象と言っても震度や地形・地質といった条件の違いにより発生する現象もまた異なる。まずは自分の地域がどんな地盤なのか、どんな被害が起きる可能性があるかを知ることが重要だ。液状化の調査を行えば、事前に液状化の被害の可能性を知ることができる」と提言をしている。