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不動産レポート



2024年辰年、不動産市場を占う

株高連動で高額帯需要が旺盛

能登半島地震の影響ほぼない

 

2024年は「辰年」である。辰年は、上り竜のように経済が上向くとされる。住宅・不動産業界にとってもそのような1年を期待したいところだ。今年の春季労使交渉(春闘)は、昨年以上の賃上げ回答が期待され、これが実現すれば今年の夏にも日銀のマイナス金利政策が解除されるとの見立てがもっぱらだ。ただ、不動産市場にとっての最大の敵は金利の上昇であるが、それがどの程度まで影響するのか。分譲マンションの販売現場では、金利の先行きに機敏に対応しなければならない。今年は元旦早々に北陸地方で震度7の地震が襲った。「令和6年能登半島地震」と命名され、1月4日の最初の株式取引では日経平均が一時700円を超す下げ幅となり、地震を緩やかな経済回復を妨げる悪材料と見なした反応もあったものの、東日本大震災のような悲観論にはならず正常取引に戻った。住宅・不動産市場を展望する。

 

2024年を占う際に必要なのは経済の成長である。国内のインフレに対応できる賃上げが実現し、内需主導の経済成長が実現するとの見立ては少なくない。今年の名目GDP成長率は、歴年で3.8%を予測するシンクタンクもある。名目での成長が復活することで経済のパイが拡大して企業の収益と従業員の報酬が共に増える。2023年の名目GDPは5.4%と高い伸びが観測されており、これに続く大きな伸びが続くことで実質成長につながるとの期待が集まっている。

 

日本の不動産の市況は堅調に推移している。不動産調査会社のジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)によれば、不動産投資では世界と日本で事情が大きく異なるのが現状だ。不動産取引額は世界主要都市で落ち込んでいるものの、日本は2023年第3四半期時点でプラス40%となっている。2023年の総投資額は約4兆円規模としており、2024年についても資金調達環境が現状のような良好であれば前年を上回る水準になると予測している。米国も欧州も急激な金利上昇を行ったことで、不動産市況は悪化しているのとは対照的だ。

 

■被災地考慮で利上げしづらい環境

能登半島地震により、日銀は早期のマイナス金利の解除と長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の解除をしづらくなったとの見方が浮上している。被災地の状況を考えれば、向こう1年~1年半は積極的に金利を上げるという選択肢はなくなったとの声も上がる。住宅・不動産業界にとっての事業環境としては、依然として金融緩和マネーが流れ込む構図となる。世界の主要都市が高金利のため、資金の振り向け先として、その対象は投資適格不動産が米国に次ぐ規模を誇る不動産に向かう可能性が高い。賃上げで金利が低空飛行ならば消費者の購買意欲が強気に転じることは想像に難くない。

 

■都心独り勝ち、大阪に目を向ける動き

分譲マンションの価格は、東京都心を見ると、新築だけでなく中古でさえ平均価格が1億円台に乗る水準にある。不動産調査会社の東京カンテイによれば、現状を「バブル期を超えた」と表現する。新築マンションに関しては、坪単価が1000万円を超える超高額の販売があった。「三田ガーデンヒルズ(総戸数1002戸)」は、その代表例であり、最高額は45億円である。もう一つの目玉物件が東京・浜松町で開発中の「ワールドタワーレジデンス(総戸数389戸)」である。世界貿易センタービルの建て替えと一体的に開発しているもので、世界貿易センタービルディングなどが売り主となり、地上46階建てで国内有数の高さを誇る189mを供給する。2024年度に完成する予定だ。

 

不動産開発事業者などがこうしたビックプロジェクトを相次ぎ投入できたのは10年に及ぶ大規模緩和により、事業の資金調達コストが魅力的だったことが大きい。こうした高額物件を購入する人は限られているため、不動産事業者は供給先を絞り込んでいる。新築マンションの平均価格は、東京23区の場合、坪600万から700万円となり、購入できる人が限られるので供給戸数自体は減っている。

 

高級物件の購入者は、富裕層と投資家である。仮に金利が上がったとしても、この属性はキャッシュで購入するため金利上昇の影響はない。株価と連動する層でもあり、この1年間の株高により潤っている人は多く、「中には株式を売却してそのお金で購入する人もいた」(販売現場)のが現状である。東京都心部では、マンションの家賃が高水準だが、なお上がり続けていることが安定資産として認識されている。一方で大阪市内は、ここまでの高額帯ではない。新築マンションの坪単価は350万~400万円弱の水準で、東京都心中古の平均価格の足元にも及ばずかなり割安感がある。このため、投資家の中には、割安感のある大阪市場に目を向ける動きが見られる。

 

■将来の利上げ規定路線、駆け込み需要も

中古マンション市場は、東日本不動産流通機構のデータを見ると、在庫数が増加傾向にあるが、徐々に減少に向かい始めている。レインズのデータ上では確認できないが、「特に都心部での在庫数は減っており、中古市場に物件が必要以上にだぶつく懸念は解消されつつある」(東京カンテイ)。新築同様に都心の中古賃料の水準も上がっており、独り勝ちの様相を見せている。東京は放っておいても人口が集まる構図になっている。アフターコロナで人口が戻っている理由は東京の利便が高いためだ。

 

もっとも、能登半島地震があったとはいえ、将来的な観測として金融緩和の解除は既定路線とされている。今回の能登半島地震を上回るような大災害や地政学リスクに気を配る必要はあるが、現状のところ実質金利が低い今、国内での設備投資意欲が高まり、住宅投資についても利上げ前の駆け込み需要が2024年に発生する可能性も考えられる。