実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



国税庁が相続増税に舵 タワーマンション節税に待った

固定資産税の評価額算出に新ルール

 

国税庁は、相続税の算出について新ルールを正式に決定した。相続税の固定資産税の評価額に関する法令の解釈を全国の国税局や国税事務所に10月12日までに通達した。これは、分譲マンションを活用しての行き過ぎた節税に待ったをかけるもので、2024年1月以降に相続などで取得した不動産から適用される。相続税の評価額は、固定資産税評価額や路線価をもとに建物と土地評価額を算定するが、その評価額と実勢価格に大きな開きがある点に問題があると国税庁が判断した。

 

2024年1月から評価額6割以上

戸建て住宅の評価額に合わせる

 

特にタワーマンションは、実勢価格と評価額の乖離を使っての節税目的に購入されることが多い。マンションの敷地を分譲戸数で割るため、1戸当たりの土地の持ち分面積が小さくなり、区分マンションの実勢価格と土地の評価額で大きな隔たりが生じやすい。

 

路線価は1月1日時点の標準価格で、国土交通省が発表する公示地価の8割を目安に売買取引の事例や不動産鑑定士などの意見を参考にして決められるが、その実勢価格に対しての相続評価額は4割程度だ。これが富裕層の優遇にあたり、税負担の公平性を欠くという指摘は前々からあったが、これに対応して2024年1月以降からは評価額を6割以上まで引き上げる。

 

数回にわたって開催された有識者会議では、マンションを使った相続税の評価額について、「時価(市場売買価格)」との大きな乖離が生じているケースが確認されている」としており、2023年度の与党税制改正大綱にも「相続税におけるマンションの評価方法は、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」といった内容が記載されていた。

 

来年1月より適用される新ルールは、戸建て住宅の相続評価額が実勢価格の平均6割であることに合わせるものである。最大の改正ポイントは、市場価格と乖離する要因となっている「築年数」「総階数(総階数指数)」「所在階」「敷地持分狭小度」の4つの指数に基づき統計的手法で乖離率を予測し、評価額が市場価格論理値の60%未満(乖離率1.67倍超)になっている不動産について、市場価格論理値の60%(乖離率1.67倍)になるよう評価額を補正することにある。一方、評価額の水準が100%を超える場合は、100%になるよう評価額を下げることになる。評価水準が60%~100%の範囲の物件は補正作業を行わない。

 

評価額算出ルールを見直す端緒となったのが、昨年4月の最高裁の判決が影響したことが挙げられる。国税庁が相続マンションを再評価して追徴課税したことに対して、マンション購入者が不服をもう立てて争ったものだが、国税庁が追徴課税したことを最高裁が適法と認めた。争われたケースでは、約3億3000万円の評価で申告されたマンションを国税当局がおよそ12億7300万円と評価し、財産評価基本通達の総則で「著しく不適当と認められる財産の評額は国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定しており、この例外規定についての枠組みを初めて示したものだ。

 

タワーマンションは、高層階ほど販売価格が高額になっており、高層階の住戸ほど実勢価格が高く補正により税負担が増加する可能性が大きくなる。タワーマンションに対する税負担の見直しは今回だけではない。2017年にも行われており、マンションの高さが60mを超える20階建て以上の高層階部分の固定資産税の税額をマンションの中間の階から1階ずつ上がるごとに約0.26%税額が増えて、1階下がるごとに約0.26%税額が減っていくという制度を導入した。

 

影響は新築・築浅だけではない

中古でも高水準の実勢価格も照準

 

新築や築浅のマンションにとどまらず、立地が都心一等地であれば中古マンションであっても購入時よりも実勢価格が高くなっているケースは珍しくない。これらは税負担が増す見通しだ。

 

最近は、「プレミアム住戸」と呼ばれる供給が相次いでいる。不動産調査会社の東京カンテイによれば、東京都のプレミアム住戸の平均価格は2000年代前半に2億6635万円、後半には3億6082万円となり、2020年代前半も3億6000万円台を維持している。1坪当たり単価で見れば500万円以上となる。2010年代後半には平均価格が5億円を突破する時期もあった。こうしたプレミアム住戸の増加は2000年代に突入してからタワーマンションの開発が本格化したことも一因である。

 

中古マンションの価格も高騰している。新駅の開業や再開発事業による影響を反映しているケースが散見される。JR山手線「高輪ゲートウェイ」駅周辺では、駅開業前1年の坪単価は平均336万円だったが、開業後1年の平均坪単価は540.5万円と6割以上の上昇率となっている。また、今年7月に竣工した「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」に合わせて開業した「虎ノ門ヒルズ」駅周辺は、駅開業前後の1年で中古マンションの売り事例が皆無という珍現象発生しているが、マンションストックがないわけではない。東京カンテイでは、2017年までの期間は売り事例が発生していたことから、「売りに出すよりも駅が開業するまでホールドするのが良い」という判断が強く働いたと推察する。

 

新駅や再開発がらみのマンションは、一時の過熱感ではなくて長期的な視点で住戸のプレミアム化が進むことが考えられることから、たとえ中古になっても実勢価格が高水準で維持される公算が大きい。