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不動産レポート



波及するか中国リスク

カントリーガーデンなどデベ大手の信用が揺らぐ

日本の不動産市場への資金流入は続く

 

中国の大手デベロッパーが窮地に立たされている。昨年から騒がれていた恒大集団(エバーグランデクループ)が米国で破産法の適用を申請したが、このほど碧桂園(カントリーガーデン・ホールディングス)の債務不履行(デフォルト)危機が報じられた。米格付け会社大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは8月末にカントリーガーデンの格付けを引き下げたことが瞬く間に世界中で報じられ、中国の不動産バブル崩壊だ、日本病として長期にわたり経済の低迷につながる、といった見方が出始めた。世界第2位の経済大国である中国が不況に陥れば世界経済にも影響するのではないか。そんな心配が台頭する中で、日本の不動産市場への影響について探ってみる。

 

ムーディーズ・インベスター・サービスでは、カントリーガーデンが債務不履行に陥った場合は、同社のオフショア社債の保有者の回収見通しは低いと想定している。カントリーガーデン社は1992年に設立され、香港証券取引所に上昇している総合不動産会社だ。都市部に限らず郊外居住者の需要宅ニーズにも応えてきた。エバーグランデに続く、これら中国不動産大手の相次ぐデフォルト危機により、中国の銀行による不動産セクターへの企業融資の負債比率は2023年にさらに上昇すると見込まれている。中国はGDPに占める不動産の割合が3割とも言われる。

 

これらが日本経済に波及するのか。中国リスクで景気後退懸念が再燃し、銀行など金融機関の不動産向けの貸出姿勢が変化して融資の蛇口を締めかねない。こうした中国不動産市場低迷によるリスクイベント発生の可能性はあるものの、国内不動産市場は金融緩和もサポートに堅調な状況が続くと予想される。複数の専門家などに問い合わせてみたところ、ダイレクトに日本の不動産になにか影響を及ぼすようなことは考えにくいというものだった。「もともと中国の不動産プレーヤーが日本国内の売買市場でアクティブだった印象はない。香港ならば影響を受けるかもしれないが、日本についての影響は薄い。必要以上に心配をする必要はない」(米証券大手)といった声に集約される。

 

気を付けなければならないのは中国発の不況で、日本企業の業績が悪化することだ。日中の貿易取引に影響し、企業業績が悪化すれば、そこで働く人々の給料・ボーナースにマイナスの影響が及ぶ。

 

● 東京への投資額は世界2位に浮上

 

ただ、日本は主要先進国で唯一、金融緩和を継続してゼロ金利政策を続けている。これから12カ月間は日銀のさらなる金利の引き締めも見込まれていない。日銀の金融政策の正常化は道半ば。現状、変動金利を住宅ローンで利用している人も多い。このため、海外の不動産プレーヤーは、引き続き期待利回りと長期金利の差を十分に得られる環境が続きそうだ。海外渡航がしやすくなったことに加え、経済成長の不安などから国外に資産を持ちたいと考えて富裕層が増えている。

また、新型コロナウイルス禍への対応として、各国は市中に大量に資金を投入したが、その資金が世界中で滞留しており、行き先を探すマネーが日本の不動産に流れ込むとの見方もある。日本国内の不動産価格は、過去10年で急上昇してきた。ある海外の投資家は、「現在のフェーズとしては一度上がりきった価格が調整して次の上昇ペースを待っているような感じだ。もっとも、円安が進んでいることで割高感はあまり感じない」として良い不動産があれば積極的に投資していきたとの意気込みを見せている。

ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)の調査によると、2023年上半期の日本の不動産投資額は前年同期比52%増の2兆1473億円に達している。「世界の都市別投資額ランキング」では同上半期に東京が2位にランクインし、その不動産投資額は93億ドルだった。2022年通期には16位と後塵をはしていたがトップクラスに返り咲いた。アメリカ大陸や欧州、アフリカ、中東、アジア太平洋は軒並み前年同期を下回ったのと日本は対照的な結果となった。

同社では、主要各国は、利上げとインフレによる不動産投資利回りの上昇と投資家の保守的な物件評価で投資市場の停滞が続くとするが、良好な資金調達環境にある日本は投資需要が底堅いとみて2023年通期は前年比2割増しで4兆円の大台を回復すると見込んでいる。今後も着実な景気回復と低金利状況の継続が国内外の投資家を引きつけるとみている。

 

●バブル経済期超えのマンション価格

 

これに伴い実物不動産の価格も高騰が続きそうだ。新築分譲マンションの価格は、1980年代後半のバブル経済期を超えたとされるが、当時と今は環境が異なる。現在は、東京の供給が占める割合が大きくなっていることと、バブル経済期はワンルームマンションやコンパクトマンションが多く供給され、現在は1戸当たりの専有面積が広がっているためグロス価格がバブル超えであって、不動産調査会社の東京カンテイによれば、単価ベースではバブル期の8合目当たりでなお価格上昇余地かあるとする。

とはいえ、すでにエリア間の格差も拡大している。東京23区の分譲マンションを見ると、不動産調査会社の東京カンテイの調べでは、東京の都心部の1坪当たりの単価は560万円となり、城南・城西が402万円、城北・城東が301万円である。

一方、郊外に目を向ければ、相模原市は203万円、さいたま市が262万円、千葉市が181万円などとなる。アフターコロナで人流は都心回帰の様相を見せる中で、郊外が下火になるのは仕方がないとの声も聞かれ、郊外でもまだ価格が下がり始めていないが、成約の見込みが乏しかったり、時間をかけてゆっくりと販売しても消化しきれない物件は価格を下げ始めたり、家具等を取り付けたモデルルーム販売のような売り方も増える可能性もある。

 

●第2のリーマン・ショックになり得ない

 

また、冒頭の中国リスクに話を戻せば、隣国の中国では不動産バブル崩壊に対する警戒感がピークに達しているが、幸いにしてリーマン・ショックのように世界中に波及するとの観測は見られない。カントリーガーデン社の場合、2022年2月以降、新たな住宅ローン担保証券(RMBS)の発行は行われていない。これはマンションの開発プロジェクトが中断されたためだ。リーマン・ショックの時に商業用不動産ローン担保証券(CMBS)の発行が難しくなり、外資レンダーが融資を止めて流動性に波及した際とは違い証券化商品に影響することは考えづらい。日本の景気回復が緩やかにでも続けば不動産市況が悪化する可能性はなさそうだ。