実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



買い意欲「投資」「実需」とも衰えず

今後1年先まで高騰感が続く

 キャッシュでの購入者が増加傾向 

 

金利の先高観が高まっているが、不動産の価格水準には衰えが見られない。むしろ高水準が続くとの見通しが跋扈(ばっこ)する。不動産経済研究所や東京カンテイといった不動産調査会社によると、東京23区の新築分譲マンション価格は億ションが珍しくなく、バブル経済期以上の高値での販売だが、それでも売れている。日銀・植田総裁が7月の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)において長期債の利率を実質1%まで許容する修正に動いたが、住宅購入者の多くが選ぶ変動金利と連動する短期金利はマイナス金利が続いているためだ。

 

●利上げ観測高まるも需要おう盛

 

金利の先行きについては、日銀の金融政策がいつ解除されるかがカギとなる。実際、「国際情勢の変化に伴う国内の経済社会などへの影響を見据えて金利の先行きに懸念する人が増えている。当行の住宅ローン利用を検討する人に聞くと、半数近くが将来金利は上がるとみている」(都内の金融機関)との声が漏れ伝わる。金利上昇はそう遠くないイベントの一つだと消費者はみている。

 

だが、日銀の判断基準は2%の持続的なインフレが確認できてからだ。インフレにはコストプッシュ型と需要けん引型がある。前者はロシア・ウクライナ戦争に伴う資源・エネルギー価格の高騰、日米金利差を踏まえての円安など外的要因によるものだ。日本の金融政策でコントロールできるものではない。後者は賃金の上げとともに旺盛な需要が働く好循環サイクルにより実現する。後者の状態にならなければ2%のインフレ状態にあってもマイナス金利の解除はないとの見方が強い。現状は、消費者物価指数と実質賃金を見ると、実質賃金は目減りしている状態が続いている。

 

では、いつ需要けん引型に移行するのか。賃金には底上げ傾向があるものの、複数の専門家は、「日銀・植田総裁は米利上げのマイナス影響が出尽くしたとは考えていないし、以前に比べてれば日本経済は改善しているが、持続的なインフレ率2%を達成するかどうかにまだ確信がない。賃金と米国経済の2点が肝になる」とする。住宅ローン比較サイト「モゲチェック」を運用するMFS(東京都千代田区)では、「年内は今の状態が続き、2024~2025年に(需要けん引型の)2%にいくかどうかの水準に収斂(しゅうれん)される」と見立てている。

 

マイナス金利の解除議論も2024年春ごろまではないとの見方は多い。来年の春闘の結果が賃上げ傾向だったとしても、それが織り込まれるには3~6カ月のライムラグがあるため、実質的なマイナス金利解除議論が始まるのは来年6月以降との見方もあるが、経済の成長に力強さを欠く状態が続けば議論はなお遠のく可能性もあり、MFSでは、「本格的な利上げは2030年以降と想定している。不動産市況も堅調に続く」と見通す。バブル世代が退職し、全産業で人手不足になって賃上げを本格化する動きを受けて始めて利上げも本格化するとの観測をしている。

 

●天井感募るも〝まだバブルではない〟

 

「新築マンションの1億円という価格水準はバブルではない」。こんな声も聞こえてくる。不動産経済研究所の調査では、東京23区の新築マンション価格の今年上半期の平均は1億3000万円に迫る過去最高値を記録した。同社が1973年に調査を始めて以来、過去最高値で都心部のタワーマンションなどが価格を押し上げた。

 

とはいえ、実質的には天井感が募っている。野村不動産ソリューションズが7月末に公表した「不動産投資に関する意識調査(第15回)」によれば、買い時感については、「買い時だと思う」(28.3%)は3割弱にとどまり、「買い時はしばらく来ないと思う」(50.8%)が半数を占めている。ただ、中長期的な投資スタンスでみると、「積極的に購入していきたい」(34.6%)と「バランスを見て買い替えたい」(40.4%)で75%を占めており、購入意欲が衰えているわけではない。意欲が衰えない理由として、「都心や特定地域の価格は値上がり余地がある」との見方が挙がるとともに、1年後の不動産価格についても「上がる」(37.9%)と「横ばい」(42.1%)で約8割を占めている。世界の主要都市に比べて日本の不動産は割安との見方が依然としてある。同社では、銀行のローン貸出姿勢が厳格になってきたことで、資金に余裕のある買い手がキャッシュで買い上げるケースが増加しているとする。

 

同社では、投資用マンションに限らず実需向けでも「住宅購入に関する意識調査(第25回)」を実施して8月4日に発表した。それによると、不動産価格は「上がると思う」の回答が42.0%(前回調査比6.4ポイント上昇)となった。同調査は年2回実施しているが、今回の42.0%という結果は、調査開始以来で最も多いという。物件価格の高騰を受けて、不動産の売り時感についても「売り時」と「どちらからと言えば売り時」を合わせると82.2%が売り時と感じてもいる。

 

半面、「買い時」と「どちらかと言えば買い時」を合わせると33.1%(前回比2.5ポイント上昇)だった。「住宅ローン金利が低水準にある」ことをその理由のトップに挙げる。また、「買い時だと思わない」(48.1%)が半数近くを占めるが、前回比より4.4ポイント減っており、一定の割合で買い意欲が回復している。

 

もっとも、地域による強弱も浮き彫りとなっている。前述のMFSでは、「東京23区の発売価格の相場は二極化が進んでいる」と指摘する。東京23区では、新宿西口や新宿御苑などの都心部のほか、勝どきや月島といった湾岸エリアでマンション価格が高騰している。関西エリアでは大阪・梅田が突出して強含み傾向を示しているといい、梅田の物件を貸し出した場合の賃料水準の上昇も続いている。

 

●住宅設備も選ばれる要素に

 

ちみなみに消費者が求めるマンションなど住宅に求めるクオリティーも注目されている。不動産サービスのアットホームでは、定期的に問い合わせの多い住宅設備を調べているが、2023年上半期の購入マンションでは、「駐車場」(40.8%)、「エレベーター」(31.8%)、「オートロック」(31.6%)がトップ3だが、宅配ボックスや追炊き機能、モニタ付きインターホン、防犯カメラ、温水洗浄便座などもトップ10に入っている。戸建て住宅でのトップ3は「駐車場」(52.0%)、「トイレ2カ所以上」(25.2%)、「システムキッチン」(25.2%)となった。上位10位には庭や複層ガラス、浴室乾燥機などマンションでは挙がらなかった機能もランクインしている。

 

また、今後は長期的な市場動向として、少子高齢社会という人口動態に応じて新設される住戸着工数が減少に向かう中で、政府が旗振り役となっている脱炭素社会に向けての住宅循環システムの構築も求められている。