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不動産レポート



国税庁が相続評価額を見直し

行き過ぎたタワマン節税に待った 

高層階の住戸ほど税負担が増加へ 

 

国税庁が6月30日にマンションで新たに導入する相続税額の算定ルールを発表した。相続税価額が市場価格と乖離する要因となっている「築年数」、「総階数(総階数指数)」、「所在階」、「敷地持分狭小度」の4つの指数に基づいて評価額を補正する方向で整備し、2024年1月から適用することを目指している。この新たな算定ルールでは、相続税評価額が市場価格理論値の60%未満(乖離率1.67倍超)になっているのについて60%(乖離率1.67倍)になるよう評価額を補正するものだ。

 

実勢価格との差を縮小させて  

評価額を6割以上に引上げる

 

国税庁の「第3回マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」で新たな算定ルールがまとまった。この有識者会議には、一般社団法人協会の税制委員会委員長、中央大学法学部教授、不動産鑑定士、一般社団法人日本不動産研究所公共部長、日本税理士会連合会常務理事・調査研究部長、明海大学名誉教授、東京経済大学経営学部教授の7人で検討してきたものだ。

この有識者会議では、マンションを使った相続税の評価額について「時価(市場売買価格)」との大きな乖離が生じているケースが確認されていることで、2023年度の与党税制改正大綱(2022年12月16日決定)に「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。」との旨が記載されていた。

今回の算定ルールの見直しは、評価額が実勢価格より低いことを利用した不動産を利用した節税、とりわけタワーマンション(タワマン)の節税を抑えることが狙いだ。現在は、実勢価格の平均4割程度となっている評価額を6割以上に引き上げるもので、有識者会議では、一戸建て住宅の評価額が実勢価格の平均6割であることに合わせる。ルール改正の最大のポイントは、市場価格と乖離する要因となっている「築年数」「総階数」「所在階」「敷地持分狭小度」の4つの指数に基づき統計的手法で乖離率を予測し、その結果、評価額が市場価格理論値の60%に達しない場合は60%に達するまで評価額を補正していく。

 

昨年4月の最高裁判決が発端  

税負担の公平性から国税当局を支持

 

今回のルール見直しの発端は、昨年4月19日の最高裁の判決が影響している。国税庁が路線価などに基づいて算定した相続マンションを再評価して追徴課税した処分を争ったものだが、国税庁の追徴課税を適法と認めた。争われたケースでは、約3億3000万円の評価で申告されたマンションを国税当局がおよそ12億7300万円と評価し、財産評価基本通達の総則で「著しく不適当と認められる財産の評額は国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定しており、この例外規定についての枠組みを初めて示した。富裕層優遇との世間の見方も強かっただけに、税負担の公平性に反しているとの最高裁が判断したものだ。

相続税などの申告で土地の時価を把握するのに路線価が使われるが、その路線価は1月1日時点の標準価格で、国土交通省が発表する公示地価の8割を目安だ。さらにマンションでは、全体の敷地面積を戸数分で分けるため、戸数が多い大規模マンションやタワーマンションになるほど1戸当たりの土地の持ち分が小さくなる。

高層マンションに対する税負担の在り方を見直したのは今回だけではない。2017年にも手を加えている。高さ60mを超える20階建て以上のマンションの高層階部分の固定資産税の税額を上げた。中間の階から1階上がるごとに約0.26%税額が増え、1階下がるごとに約0.26%税額が減っていくというものだ。

今回の相続評価額の算定ルールでも高層階の住戸の税負担が増加する可能性が高くなった。特に新築、築浅で高層階ほど税負担が増す見通しだ。これより、タワーマンションの売れ行きに影響するとの見方がある。不動産大手では影響を限定的とみるが、複数の業界関係筋は、「これからの新規タワマンは本当に消費者が欲しい立地、場所でないと開発しづらくなるのではないか。その半面、税負担が増えやすい新築のタワマンに代わって中古タワマンの物色が増加することも考えられる」と述べ、タワマンの人気勢力圏が変動する可能性を指摘している。

その中古マンションの取引価格は高騰が続いている。東京カンテイの調査では、東京23区の中古マンション価格は直近の5月で平均7000万円台となり、都心部は1億円を超える水準が4カ月連続で続いている。中古マンションの取引でも億ションが珍しくない。この1億円超えの中には多くのタワマン住戸が含まれていると推察される。

 

今年の路線価は2年連続で上昇  

東京・銀座は1㎡で4272万円

 

マンションを活用した節税は、複雑なスキームを活用した租税回避ではなく、不動産を取得して相続するという一般的な手法であっただけに今後の路線価に対する注目度も増しそうだ。国税庁が7月3日に発表した路線価を見ると、全国平均1.5%上昇しており、2年連続で上がった。25都道府県で平均値が上昇している。2023年1月1日時点の評価額だ。最高路線価が上昇した都市は29都市、横ばいは13都市、下落は4都市となった。

路線価の全国最高額は、38年連続で「東京都中央区銀座5丁目」(鳩居堂前)で1㎡当たり4272万円(前年比1.1%上昇)だった。38年連続で最高となった。2位は大阪・御堂筋の1920万円(同1.3%上昇)、3位が横浜・横浜駅西口バスターミナル前通りの1680万円(同1.4%上昇)、4位が名古屋・名駅1丁目で1280万円(同2.6%上昇)、5位が福岡・天神2丁目で904万円(同2.7%上昇)だった。

上昇率トップ5は、岡山市北区本町市役所筋(前年比9.3%上昇)、札幌市中央区の札幌停車場線通り(同8.4%上昇)、さいたま市の大宮駅西口駅前ロータリー(同8.0%上昇)、福井市の福井駅西口広場通り(同6.1%上昇)、奈良市東向中町大宮通り(同5.8%上昇)だった。

また、上昇率が5%以上10%未満の都市は札幌、さいたま、福井、奈良、岡山の5都市となり、昨年の1都市から増加した。

 

上昇率が5%未満の都市は、仙台、秋田、福島、宇都宮、新潟、東京、横浜、富山、金沢、岐阜、名古屋、大津、京都、大阪、神戸、広島、高松、松山、福岡、佐賀、長崎、大分、鹿児島、那覇も24ととなり、昨年の10都市から大きく増加している。