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不動産レポート



金利の上げ下げで戸惑う国内外 米銀破綻、欧州も大手銀不安で警戒高まる

日銀・新総裁が始動も 金利の観測値は低空飛行

 

2023年国内外の経済情勢への見通しがさらに不透明感を増している。3月に米国のシリコンバレー銀行など2行が破綻し、欧州では金融大手のクレディスイスの経営不安のニュースが世界を駆け巡った。ここに来て突如として、金融界の信用収縮に警戒せざるを得ない事態が浮上した。世界中で銀行株が売られ、景気後退ムードにギアが入った感じとなった。日本の住宅・不動産業界も気を引き締めている。もともと、金利上昇圧力が高まり、ロシア・ウクライナ情勢により、上がったエネルギー価格を受けて建築コスト高に見舞われ、不動産開発に欠かせないゼネコン(建設会社)の倒産が増えている。日銀は新しい総裁が就任し、今後の日銀の金融政策が注目を集めている。新年度を迎えて今後のリスクを点検する。

 

急激なインフレ退治で思わぬ副作用

 

まずは、なぜ米国の一地銀に過ぎないシリコンバレー銀行の破綻が一気に注目されたのか。その破綻のきっかけがMBSだったからだ。MBSは住宅ローン債権を束ねた証券化商品だが、リーマン・ショックの引き金になったのがこのMBSだったからだ。MBSは一般の債権に比べて金利のリスク管理が複雑なことで知られる。金利が上昇すればするほど、債券価格の下落幅が大きくなる商品だ。イメージとしては、金利が1%上がると、債券価格は10%下落し、金利が3%上昇すれば債券価格は45%下落する。シリコンバレー銀行は、こうした債券に偏った運用だったため、米国がインフレ退治に舵を切り急ピッチで利上げに踏み切ったことで思わぬ副作用を生み出し、その影響をもろに受けて破綻に追い込まれた。

 

このインフレは、昨年から日本経済にも押し寄せている。そのインフレの波が個人の給与など所得が追い付いていかず住宅販売に影を落とすのではと言われてきた。販売価格は高止まりで推移している。ただ、成約件数が減少している警戒する声が高まっている。東日本不動産流通機構の調査を見ると、今年2月の首都圏のマンションの売れ行きは、7カ月ぶりに増加となったものの、その買い意欲には勢いを感じられない。在庫数は4万5000戸に迫り、前年同月比では2割の増加となっている。

 

建築資材価格の高騰により、不動産開発会社の事業利益が低下するため、新規物件の開発を控えるなどの動きが広がり、マンション等の新規供給戸数も減少していくとみられる。

 

カネ余り時代終焉の足音も

 

 そうした状況下を踏まえながら、住宅・不動産業界で最も気にし始めたのが、金融機関の融資スタンスに変化が出るかだ。冒頭で触れた米銀の破綻やクレディスイスの経営不振が日本の金融機関にも伝播しないか。不動産協会の菰田正信理事長は、日本の金融引き締めや米銀破綻、クレディスイスといった金融環境の変化について「緊張感をもっていなければならない」と警戒ハードルを引き上げている。「カネ余りの時代から少し変わりつつある」とも指摘し、機関投資家から大きな資金が出にくくなっているとする。米銀破綻では、米国の金融機関でお金を貸し出す姿勢が慎重になれば、日本でも資金調達環境に影響しかねない。

 

これまで日本の不動産は、海外主要都市と比べて割安感があり、低金利下により資金調達がしやすい状況が続いていたことで海外マネーを引き付けてきたが、金融緩和の出口を模索するようになると不動産市場に影響を及ぼすとの見方が広がりつつある。

 

不動産証券化協会と三井住友トラスト基礎研究所が3月17日に発表した「不動産私募ファンドに関する実態調査」では、エクイティ投資家の意欲にやや陰りがあるとしている。

 

ただ、その一方で日本の金融政策については、金利が上昇するといっても急上昇することはないとの見方が大勢を占めている。固定型の住宅ローン金利と連動している10年物国債は2000年以降の過去20年以上で利回りが2%を超えたことがない。2022年12月下旬に日銀が、この長期国債利回りの許容変動幅を0.25%から0.5%に拡大したが、この0.5%の水準から2%に達するには単純に後20年間の月日を必要とする計算になる。

 

政策金利0.1%のハードル

 

今後の住宅ローンの金利動向は、今の日本ではホットな話題だ。金利の動きにナーバスになる一般消費者も多い。住宅ローンを比較するサイト「モゲチェック」を運用するMFS(東京都千代田区)によれば、一般消費者からの問い合わせか急増した。特に昨年12月に日銀が長期金利の許容変動幅を0.5%に引き上げた後に同社のホームページがダウンするほどにアクセスが集中したという。その同社によれば、「変動金」を希望する人が若干減ったとはいえ、依然として半数近くが変動金利を希望している。「固定金利」を選択する割合は1%程度にすぎない。「わからない」も半数超に上り、日銀総裁の動向見極めたいとする様子が色濃く出ている。

 

住宅ローンの固定金利は徐々に上昇曲線を描いている。固定金利は長期プライムレート(長プラ)と連動しており、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)が修正されると上がる。一方、変動金利は短期プライムレート(短プラ)と連動して動く。日銀がマイナス金利を解除しなければ変動金利は上がらない。この政策金利については、マイナス金利からゼロ金利に戻しても基本的に変動金利は上がらない。ゼロ金利は通常の金融緩和になっただけ、異次元の金融緩和から脱したにすぎない。ただ、いつまでもマイナス金利を維持することは健全な姿ではないことから、そう遠くない将来に解除すると見込まれている。

 

前述のMFSでは、政策金利0.1%が一つのハードルで、0.1%を超えると短期プライムレートが上昇し始めると説明している。もっとも、変動金利の住宅ローンでは125%ルールというものがある。例えば、変動金利の住宅ローンを組んで毎月10万円を返済していたとすると、変動金利が上昇するとしても最大12万5000円までと上限がある。

 

今後の期待としては、インフレだけではなく個人所得も増加することが挙げられる。そうした中での金利上昇という好景気の循環を生み出せるかがカギを握っている。