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不動産レポート



大阪に集まるヒト・モノ・カネ

地元経済界は「2025年万博」「IR誘致」に期待

住宅・不動産の取引は成約までの期間短縮傾向に

 

ポスト東京五輪・パラリンピック。大阪は日本経済のけん引役として注目を集めている。大阪・関西万博の開催を2025年に控えているほか、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致というイベントをきっかけに地元経済が活性化する。大阪に熱い視線が集まる大きな理由だ。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は7月26日に東京オフィスを虎ノ門に開設して国内外への情報発信と関係省庁・企業・諸団体との連携強化を加速している。

 

万博会場となる夢洲(ゆめしま)は、高度経済成長期に開発が進められたが、バブル経済が崩壊して遊休地化が進んで隣接する咲洲とともに負の資産とされてきた。万博により汚名返上の好機が訪れている。大阪湾岸エリアが賑わいを取り戻す可能性も出ている。

 

IR誘致については、地元住民の反対などを受けて横浜市の新市長が撤退を決めたり、和歌山県では、計画を国に申請するための県の議案を県議会が反対多数で否決するなど全国的な人気は今ひとつ。大阪府・大阪市でも、IR誘致の賛否を問う住民投票の実施に向けて市民団体が有効署名数を集めた。ただ、賛否を問う住民投票条例案について、大阪維新の会や公明党などの反対多数で否決された。府議会が住民投票を行わないことになったことで、大阪はIR誘致に向けてアクセルを踏み込みそうだ。

 

IR施設はカジノが注目の的だが、国際的な会議や展示会、見本市などが開催できる「MICE」と呼ばれる施設ができ、周辺の京都市や神戸市などを含めて東京とは異なる国際都市圏へと飛躍するチャンスだとされている。国としては、〝第二の高度経済成長期へ〟と期待した「2020東京五輪・パラリンピック」が新型コロナ禍でこけただけに大阪の二大イベントが日本経済を挽回するきっかけにならないかとの期待が膨らむ。

 

●地方中枢都市での評価「大阪市」が1位

森記念財団 都市戦略研究所(東京都港区)が7月25日に公表した「日本の都市特性評価2022」によると、東京23区を除く全国138都市の中で大阪市が前年に続き総合点で1位となった。同調査は、「経済・ビジネス」「文化・交流」「生活・居住」「環境」「研究・開発」「交通・アクセス」の6分野ごとにスコアを算出して総合点で順位を付けたもので、大阪市は「経済・ビジネス」と「交通・アクセス」の分野別でもトップとなった。付加価値額、地域内総支出、昼夜間人口比率などで強みを持ち、空港アクセスへの時間の短さ、新幹線の利用のしやすさが評価を受けている。近畿圏の経済、交通の中心地だ。文化・交流の「受入環境」も高い評価を受けており、アフターコロナを見据えて観光客にとっても訪れやすい都市であると評価する。

 

大阪市は地方中枢都市の中で最も高い評価を受けた。ここに万博とIRという景気浮揚の好材料とされる二大イベントが加わり、ヒト・モノ・カネを引き付けるのは間違いない。

 

●近畿圏の不動産価格、首都圏同様に高騰中

そうした中で、住宅・不動産市場の現状を見てみると、首都圏・近畿圏では大半のマンション価格が上昇しており、新築からわずか1年で市場に売りに出されて10%以上の値上がりを見せる事例も珍しくはない。近畿圏不動産流通機構(近畿レインズ)のデータによれば、中古マンション価格は、東京圏と同様に上がり続けている。近畿圏の平均価格は直近6月で2,708万円(前年同月比8.7%上昇)となり、この1年間で価格は下げ知らず。大阪府の直近6月の平均価格は2,986万円(前年同月比11.3%上昇)と3,000万円台を目前とし、昨年6月からの1年間で前年同月との比較で下落したのは今年3月のみだった。

 

ただ、その一方で成約件数を見ると、価格の強含みほどの引き合いは見られない。6月の成約件数は近畿圏全体で1,472件(前年同月比5.1%減)となり、過去1年間で前年同月比を上回ったのは5回だけである。今年3月は18.1%減と約2割の減少幅を見せている。大阪府で見ると、成約件数は804件と前年同月比2.0%増となっているが、過去1年間で見ると、半分の月が減らしており、二桁の減少幅が多い。

 

2022年4~6月の四半期ベースでの近畿圏の成約件数を見ても4,348件(前年同期比1.2%減)と2期連続で減少している。一方、成約価格は2,648万円(前年同期比7.1%上昇)と8期連続で上がっている。成約件数が減少傾向にあるのに価格が強含み続ける。この状況をどう見るべきかだが、売り主が「まだ高値でも売れる」と強気の姿勢を崩していないと想定できる。つまり、買い主の価格目線とのギャップが開いている。

 

●売り出しから半年で3分の2が成約に

売り出し価格と成約価格(取引価格)の乖離率のデータがある。不動産調査会社の東京カンテイでは、中古マンションの売り出し価格と成約価格に基づいて取引価格の乖離率を調べており、7月28日に公表した最新版で2021年下期を見ると、近畿圏の価格乖離率はマイナス6.92%だった。つまり、売り出し価格は平均2,976万円で、成約価格が平均2,770万円である。同様に2021年上期を見ると、売り出し価格は平均2,851万円、下期の成約価格が平均2,636万円で乖離率はマイナス7.54%となった。

 

上期と下期の乖離率は0.62ポイント縮めている。これは売り出し価格よりも取引価格の上昇率が上回っていることを意味する。とはいえ、売り希望額と買い希望額の差が縮まっているとまでは言い難い。2020年の最初の緊急事態宣言が解除されて以降、中古マンション市場ではニーズの高まりを背景に売り手市場の様相が見て取れる。

 

●売却期間1カ月以内が4分の1を占める

同社では、売り出しから成約までの期間も調査している。首都圏は2021年上期に3.29カ月、下期に2.89カ月となっている。近畿圏の上期は4.88カ月、下期に4.59カ月だ。首都圏に比べれば成約までに時間を要するが成約までの期間が短縮に向かっている。

 

売却期間の長短は価格乖離率と比例する。近畿圏の場合、1カ月以内で成約した場合の乖離率はマイナス3.74%であるが、3月以内ではマイナス4.82%へと広がる。売却から成約まで6カ月と長期化すると、売り出し価格に対して1割超の値下げをして取引がようやく成立する。期間が長くなるほど、希望額では売れなくなることが分かる。

 

成約の割合では、売却期間が1カ月以内のシェアは24.7%と全体の4分の1となり、3カ月以内の累計シェアは51.4%と半数を占める。2回目の専属専任媒介・専任媒介契約が終了する6カ月の間に72.5%が成約に至っている。ちなみに首都圏では、3カ月以内に69.1%、半年で84.1%が成約に達している。

 

直近の成約件数に減少傾向があるが、今後の発展を見据えて大阪市を中心に近畿圏の不動産需要は旺盛な状況が続く可能性がある。