実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



東京23区に高値警戒感

築5年以内の坪単価が新築・中古で逆転

分譲マンション需要は高水準の観測を継続 

 

ロシア・ウクライナ情勢の悪化に伴い世界経済のサプライチェーン(供給網)が影響を受けている。このため国内のエネルギー価格が上昇し、日用品や食料の値上がりが顕著になっている。欧米ほどではないが、国内にもインフレ経済の波が押し寄せており、給料が上がらない中での生活コストの上昇が住宅購入の意欲を減退させないか注意を払う必要が出てきた。上がり過ぎた販売価格に警戒感が及び始めている。

 

足元の分譲マンション市場は、東京五輪後、コロナ禍でも販売が好調に推移し、今年4月下旬から5月初旬にかけての春の大型連休、いわゆるゴールデンウイークの販売状況について、不動産大手はモデルルームへの来場者数が前年の同時期よりも少なかったものの、契約件数を前年比300%前後で推移するなど旺盛なマンション需要が確認できている。中古マンションの取引も旺盛で、売り物件が枯渇しており、優良な物件は市場に出るとともに買い手が付く状況にある。低金利と共働き世帯の増加が好調を支えている。

不動産経済研究所の発表によれば、首都圏の直近4月の新築分譲マンション発売戸数は2426戸と前年同月比16.1%増加した。契約率も約8割の高水準だった。旺盛な買い意欲をみせている。ただ、販売価格は首都圏平均で6291万円と4カ月ぶりに下落しており、前年同月との比較で約2割下げている。東京23区の平均価格は7344万円(同27.9%減)だった。都心部とその周辺が価格高騰にブレーキがかかった展開だ。

 

新築で大手デベのシェアが縮小傾向

高水準の価格に対する警戒感は、東京カンテイの調査でも見て取れる。2022年第1四半期(1月~3月)を見ると、首都圏の新築マンションの1坪当たりの単価は338.3万円(前期比2.1%下落)と2期連続で下落している。東京での新規供給が比較的少なく、埼玉県や千葉県での供給シェアが拡大し、デベロッパー大手の供給シェアが前期の40.4%から31.7%に縮小した。そうしたことなども単価下落につながった要因だが、価格上昇で購入時期を先送りにする動きと金利の先高観で低金利のうちに購入しておきたいという思惑が交錯している状況である。

個人所得が伸び悩む中でのインフレ経済になれば消費者は財布のひもを締めてしまう。2新型コロナウイルスが落ち着きを見せて経済再開に期待がかかるが、ロシア・ウクライナ情勢により企業の設備投資が停滞して海外経済がさらに悪化することが国内に波及する。

全般的な経済に関する観測を探れば、米国系シンクタンクなどは、ロシアへの先進国の経済制裁は、少なくとも向こう1年以上は続くとみている。そうした意味でインフレ基調やサプライチェーン(供給網)の混乱と制約は一時的というよりも2023年にかけて経済の下押し圧力になるというのが基本ラインだとしている。

 

中古需要で新築と築浅の価格差が縮小

こうしたネガティブ要素に懸念が及ぶ。その一方で、需要と賃金が増加するとともに、国外の環境が予想より早く持ち直し、改善に向かえば経済は緩やかな回復を続ける可能性もある。どちらに転ぶかは見通しづらいが、建設資材への影響は、今後の新築マンション開発に影響を与えかねない。資材高騰分を売り値に転嫁すると、顧客の購入意欲を削ぎかねないため、土地を仕入れた段階での商品企画が予算内に収まらない場合は企画の見直しを迫られたりする可能性もある。

デベロッパーとしては新規供給がやりにくい。業者間の二極化も一層進む。不動産大手の購入者の平均年収は1200万~1300万円であるため、そうした属性が購入するマンションは販売価格に資材価格上昇分を転嫁しやすいとみられるが、平均年収500万から600万円を主なターゲットとするマンションは値上げに踏み切ることは難しい。

その結果、新築をあきらめて中古マンションを選択する。前述した東京カンテイの調査で首都圏の中古マンションの平均単価を見ると、216.0万円(前期比3.3%上昇)と7期連続でプラスが続いている。築5年以内だけでなく10年以内、20年以内、30年以内、30年超のいずれの築年帯で上昇傾向となっている。築5年以内に至っては新築よりも高い坪387.3万円となっており、新築から流れてきた客層が築浅中古の価格を押し上げている。

中古流通戸数は、減少傾向が続いていたが、2022年第1四半期(1 月~3月)は8期ぶりに増加に転じた。新築に機能性が近い築浅を求める購入層と、物件の相場が過去10年で急騰したことで売り時と考える層が増えていることで、築10年以内では2期連続で流通戸数がプラスとなっている。

マンション市況が好調なのは低金利に支えられている部分もあるが、国内証券アナリストは、「現状の見方としては、日本の不動産市況が悪化していくというシナリオはベースに置いていない。新型コロナウイルス感染拡大の当初は、職住近接を売りにしていた都心マンション需要は逆風などと見られていたが、都心需要はしっかりしている」と指摘する。

大手の面開発が好循環の不動産市場を生み出す

金融政策は不動産のセンチメント(勢い)に直結しているところが気になるポイント。日銀の政策や経済情勢は気になるところだが、大手総合デベロッパーの事業戦略を転換させるまでには至っていない。金融環境はリーマン・ショックとは違い傷んでいない。

ただ、総合デベロッパーの観点からいうと、事業は分譲マンションだけではなくリスク点検は幅広くなる。商業施設や物流施設、不動産ファンド事業などがあるが、主力のビジネスはオフィスの開発・運用である。資材の値上がりは、開発事業のコストに跳ね返ってくるものの、自動車産業のように鉄の価格を車に転嫁する方程式があるわけではなく、全体のプロジェクトの中で、コストマネジメントしてゼネコンとの見直しをする。このため総合大手不動産会社は、事業の投資回収に関する目線は据え置いたままと思われる。

 

例えば三井不動産や三菱地所などの大手デベロッパーは、国内外の大規模開発が計画通りに収益の柱に育っていくという目線は変わっていないはずだ。複合開発を強みとするたけに魅力のある街づくりができたかが収益に直結する。資金をアグレッシブに投じて事業展開して働きやすい街、住みやすい街を生み出す好循環なエリア開発につなげていくことで住宅・不動産市場を下支えする。