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不動産レポート



大阪中心部コロナ回復に出遅れ感~正念場の商業不動産、住宅需要は回復路線へ

地価動向から見える訪日客消滅の影響 

 

新型コロナウイルスによる影響を最も大きく受けたのが大阪だ。訪日客需要が地価上昇のけん引力となっていただけにインバウンドが消滅したことで、国土交通省の今年1月1日時点の公示地価は全国の下落率トップ10に大阪市内の地点が8地点を占めた。大阪圏の商業地は前年の1.8%下落から横ばいに転じたものの、大阪市内は依然として下落基調が続いている。その下落幅は前年の4.4%から1.1%に縮小したがコロナの影響が色濃い。下落率1位は2年連続で道頓堀の「旧づぼらや」(15.5%下落)となり、1㎡当たり490万円だった。ワースト4位までの下落率は2桁となり大阪市中央区の低迷が前年から続いている。

 

道頓堀中心に厳しい状況だが 梅田と御堂筋エリアは堅調保つ

 

大阪圏の最高地価は、下落率ワースト10がひしめく同じ大阪市内にあり、2年連続で梅田エリアの「グランフロント大阪南館」(3.5%下落)となった。1㎡当たり単価は2210万円だった。梅田も回復途上。一等地のオフィス需要は比較的堅調であるが、店舗やホテルの収益せいが低下していることで地価の下落が継続中だ。道頓堀は、コロナ前にビジネス街の梅田から大阪圏の最高地価を奪取したことがあるが、コロナによりトップの座を梅田に返上する形となっている。心斎橋・なんば地区は、観光客の減少から店舗・ホテル等の需要が減退しており、訪日客の依存度が大きかった地点ほど悪影響が及んでいる。

 

心斎橋筋商店街はインバウンド激減のダメージは大きい。空室も多くみられる。老舗フグ店やユニクロ心斎橋店が閉店するなどマイナスのイメージがぬぐえていない。日本不動産研究所の調査では、心斎橋エリアの中でも道頓堀は厳しい状況が続いており、高級ブランド店舗が集積する御堂筋は堅調さを保っているという。店舗賃料について、プライムロケーションでは1階で月額坪2万~2万5000円に山があるとしている。

 

同研究所では、今後の見通しについて、ドラッグストアの跡地は賃料下落の構図だが、御堂筋が賃料水準でエリアNO.1の賃料に返り咲き、宝飾系ブランドを中心に出店動向が活発になって高水準の賃料を維持すると見ている。

 

 

需要を呼び込むイベントに期待 万博、スーパーシティ構想など

 

ただ、まん延防止等重点措置が解除され、徐々に人流が回復傾向にある。大阪圏であっても、京都市の商業地は前年の2.1%下落から0.7%上昇とプラス圏に浮上した。大阪とは違い回復度合いが強まっている。店舗や宿泊施設に収益性の低下が見られるものの、緊急事態宣言解除後に国内観光客が戻ってきたことが反映され、特に清水寺や祇園といった観光スポットが集まる地点の回復が顕著である。京都市東山区は前年の6.9%の下落から0.2%とプラス圏になった。京都市中心はコロナ前までホテル需要に押され気味だった土地がマンション用地として取引されるなどが商業地を押し上げる要因として働いた。

 

全国の主要都市と比べて大阪は全体的に弱含み感が否めないが、コロナ・ショックの影響は薄れつつある。入国制限が完全に解除になっていないものの、徐々に緩和に向かっていることで賑わいが戻ってくることに期待感もある。最初はウィズコロナだが、アフターコロナを見据えながら2025年の関西・大阪万博の開催が控えていることや、政府はスーパーシティ構想特区で茨城県つくば市と大阪市を指定することを決めたり、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致に向けた動きなどに期待する声もある。

 

大阪府と大阪市は、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)にカジノを含む統合型リゾート(IR)の事業者にアメリカのMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同チームを選定したと発表している。2020年代後半の開業を目指しており、年間の来場者数は2050万人と想定し、その経済波及効果も年間で7600億円を超えると見込んでいる。

 

今年の「春商戦が試金石」 住宅需要は底堅く動く見通し

 

足元、商業地に比べて住宅地の需要については、落ち着いた安心感のある回復路線を歩みそうだ。今回の公示地価でもその片鱗が窺えた。大阪圏の住宅地は0.1%上昇で、2年ぶりに上昇に転じた。地最高価格は6年連続で大阪市福島区福島3-1-55だった。1㎡当たり108万円と前年と同じ2.9%の上昇率を示した。最大変動率を見ると、おう盛なマンション需要により大阪市天王寺区の地点が前年から4.6ポイント拡大して6.6%上昇した。1㎡当たりの単価は85万5000円となった。市中心部へのアクセスのよい住宅の引き合いは強い。

 

大阪市内の不動産事業者によると、新築戸建て住宅の取引件数が特に増えており、マンション需要は、タワーマンションを中心に在宅勤務のしやすい広めを物色する流れなどを受けて成約する平均価格が上がってきた。4月下旬からのゴールデンウイーク突入とともに春商戦を迎えるが、マンション販売現場からは、「ここでの売れ行きは今後のマンション市況を占う試金石だ」との声が上がっている。

 

ただ、見通しとして、価格がなお上昇するとの見方は少ない。東京カンテイの直近2月の調査によると、中古マンションは、大阪市中心部で4891万円と4カ月連続で上がっているが、その上昇幅は前月比0.3%と昨年12月の1.0%上昇から縮んでいる。大阪市平均は3773万円(同0.1%上昇)で強含みを継続しているものの、今年に入ってから上値がやや重たい状況にあるとした。前年同月との比較では、昨年10月を境に上昇率は徐々に縮小に向かっている。経済環境との見合いが続く中で、物件の買い時感を探る局面が続きそうだ。