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不動産レポート



ウクライナ危機、不動産市場に影響は?新築マンション価格、東京なお上昇余地を残す

日本人に高嶺の花も、円安進行で外国人は割安感が増大 

 

ロシアがウクライナに本格的に軍事侵攻したことで世界の経済情勢は一気に警戒ムードに包まれた。ロシア軍のウクライナへの攻撃が強化することで原油先物相場は急上昇しており、相場の指標とされる米国のWTIは1バレル100ドルの大台を突破した。また、米国は金融政策を利上げに舵を切ったことで、低金利を続ける日本への影響は為替相場に反映され、円安が進む見通しだ。これらが国内景気を押し下げる要因ともなりかねない情勢になりつつある。そうした中で、今回は住宅・不動産市場に与える影響を探ってみる。

 

米国の利上げ政策は、低金利政策を継続する日本にも及んでいる。日銀の黒田東彦総裁は、ゼロ金利政策を維持するため、10年物国債利回りの抑え込みに必死となっている。この長期国債利回りが0.2%台に乗ったことで、日銀は0.25%を上限とする無制限の公開市場操作(買いオペ)を実施した。住宅ローンの金利は固定型と変動型があるが、固定型は長期金利に連動するため、長期国債利回りの水準が上がればローン金利に反映される。その一方、変動型は日銀の政策金利に連動しており、日銀の金融政策であるマイナス金利を解除しない限りローン金利は上がらない。このことを踏まえて、今のところ住宅購入者は変動金利を選ぶ人が依然として多い。今後は、日銀がマイナス金利の解除に向けて、金融引き締めに向けての地ならしをいつから始めるかに焦点が移り始める。黒田総裁の発言から目が離せない。

 

内閣府が2月中旬に発表した2021年10~12月の国内総生産(GDP)は実質で1.3%増加しており、年率換算にすると5.4%増となる。2四半期ぶりのプラス成長である。2021年通年では、前年比1.7%増と3年ぶりのプラス成長となった。昨年は、ワクチン接種が加速度的に進んだことで秋口から年末にかけて新型コロナウイルスの感染者数が急減したことを映し出している。足もとの経済指標はウクライナ危機の影響も受けていない。

 

ただ、年明け以降は変異株オミクロン型が急拡大した。このコロナ第6波により、まん延防止等重点措置が講じられ、その影響が2022年1~3月に出て景気回復に急ブレーキがかかる公算が大きい。このため、政府は3月4日に中小企業の資金繰りや事業継続をサポートするため、コロナ禍で打ち出した実質無利子・無担保融資制度の延長を決めている。本来なら期限は3月末だったが6月末まで延ばした。融資期間も15年以内から20年以内に延長する。自己資本とみなされる日本政策金融公庫の劣後ローンの供与についても2022年度末まで続ける。ウクライナ危機の影響も1~3月に出る可能性も高くなっている。

 

単価では90年代バブルの8割水準 新築価格の東京坪単価は401万円

 

景気が悪化すれば住宅・不動産市場にも影響は及ぶが、現在のところその気配は見られない。分譲マンション市場は、新築にとどまらず中古の価格上昇が止まらない。都心部の平均価格は9500万円を超えている。不動産調査会社の東京カンテイの調査によると、東京都の平均価格は1月時点で6117万円(前月比1.0%上昇)となり、東京23区も平均6670万円(同1.0%上昇)とともに19カ月連続で上がっている。都心部については平均9531万円(同1.3%上昇)と4カ月続けて上昇した。

 

この現象から価格が天井を打つのはいつかが気になるが、同社によると、「価格が下がる材料は今のところ見当たらない」と見ている。もちろん、このまま価格が上がり続ければ所得環境との見合いから消費者の買い意欲を冷やすことにつながるが、足元の住宅ローンの低金利が引き続き下支えするとの分析である。

 

メガバンクの固定金利が上昇基調にある。住宅金融支援機構の全期間固定型のフラット35のローン金利も上昇トレンドを示している。だが、日銀が0.25%を上限に無制限の買いオペを実施するのは「長期金利が上昇するのを良しとしていない姿勢を表している」もので年内に一本調子で金利が上がることはなく、2023年4月の黒田総裁の任期までは現状で推移するとの見方がもっぱらである。

 

新築マンションの価格は、2013年から3割~4割ほど値上がりしている。中古マンションも立地によっては同様に上がっており、直近1年間だけでも10%程度値上がりしたとされる。1坪当たりの単価で見ると強含みの価格が分かりやすい。

 

前述の東京カンテイによれば、東京都の新築価格は坪401.3万円となっている。この単価ベースで見ると、1990年と1991年のバブル経済期にまだ届いていない。1990年の単価は464.1万円、1991年は444.7万円である。つまり、バブル期を天井とすると、90年代バブルの8割水準で価格は上昇余地を残していることになる。もっとも、バブル崩壊以降、個人の収入が減っているので単純比較はできないが、坪単価が500万円ほどまで上がる可能性がある。

 

戸建ての需要増は消極的な理由 都内マンション高嶺の花の象徴に

 

マンション価格が新築・中古とも高嶺の花となりつつある中で、戸建て住宅に需要が流れている側面もある。今の戸建て人気は、マンションに手が届かなくなったことによるもので、積極的な戸建て住宅選びではないのが現状である。確かにコロナ禍でテレワークが普及したことで在宅勤務が増加し、広い間取りを求める動きではあるが、会社に近い都市部にも80㎡超~90㎡台の広いマンションは多い。しかし、そのようなマンションは都心で億ション化しており手が出ないのが実態。手が出るのならばマンションを購入していた層が郊外の戸建て住宅に流れているとの見方は少なくない。

 

ウクライナ危機は波及するか

 

今後の展開で最大の懸念材料は、ロシア・ウクライナ戦争の行く末だ。戦闘状態が長引けば長引くほど世界経済への影響は深刻なものとなる。不動産会社や住宅メーカーは、荒れる国際情勢の中で影響を受けないか。日本国内の景気も悪化するため、企業業績が落ち込み従業員の給与所得にも悪影響を与える。それに伴い住宅の購入意欲が減退に追い込まれれば、高値の花の水準にある販売価格に調整局面が訪れるシナリオがないわけではない。

 

一方で、海外と日本との金利政策に乖離があることで円安が進んでいる。日本の不動産市場は、投資適格物件において世界でも指折りの品質と市場規模を誇っているが、住宅価格がバブル期水準とはいえ、ニューヨークやロンドン、シンガポールや香港といった世界都市との比較では安いと言われている。

 

ここに円安が加われば、海外投資家にとっては、なお割安感が増すことになる。一部では1ドル120円が視野だとするマーケット関係者もいる。東京都の新築マンションの坪単価が500万円まで上がったとしても、円安がそれを十分に吸収できる。円安進行でインバウンド需要が再び東京都心で存在感を示すマーケットになる可能性がある。

 

もっとも、米国とロシアが全面的に火力で対峙するような局面ともなれば、安全資産とされる円が買われて円高に転じることも想定しておくべきだが、米ロはお互いに全面対決を回避すると見られている。