実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



不動産バブルなお続くか

年内に価格調整の局面迎えるも購買力底堅く

米国など主要国の中央銀行は、インフレ対応で金融の引き締めに動き出しているが、日銀の黒田東彦総裁は現状で金融緩和政策に変更はない、とする。2016 年2月に導入したマイナス金利が解かれる気配もない。市場に溢れた緩和マネーは不動産市場に向かったままだ。長引く金融緩和を受けて資産バブルを生み出しており、地価の高騰と合わせて東京都心では不動産バブルと化している。新築分譲マンションはバブル経済期の価格を超えた。ただ、モノの値段が上がっているのは不動産だけではない。個人の所得環境が改善されていない中で、原油高を受けてガソリンや日用品の値段も上がっている。そうした中で、なお不動産バブルが続くのか。

東京 23 区新築マンション価格90 年代バブル景気を超えた

不動産経済研究所によれば、2021 年 12 月の新築分譲マンションの価格について、東京23 区は平均 8043 万円となっている。首都圏を年間で見ると、1戸当たりの平均価格は 6260万円とバブル期を超えて最高値を更新した。バブル期の 1990 年は 6123 万円だった。

中古マンション価格でも高値水準だ。マンション調査の東京カンテイの調べでは、足元の東京 23 区平均は 6000 万円台に乗せている。新築供給が少ないことで立地の良い中古マンションが消費者の受け皿となっている。

ただ、このような中でも新築を売り出せば早々に売れてしまうのが今の市場だ。東京オリンピックで選手村として使われた東京湾岸の大規模マンションの反響も上々のようだ。三井不動産レジデンシャルなど不動産開発大手 10 社が開発・販売する「HARUMI FRAGF(晴海フラッグ)」(分譲 4145 戸・賃貸 1487 戸)は、コロナ禍で一時販売を見合わせるなどの対応に追われたが、昨年 11 月の販売再開の際は販売 631 戸に 5546 組が申し込んだ。購入倍率は最高 111 倍、平均 8.7 倍として注目を集めた。

専有面積が平均 85 ㎡超は、コロナ禍で広さを求める消費者のニーズをつかんでいる。今年3月に4度目が発売される予定。全5街区のうち2街区の「SUN VILLAGE」と「PARK VILLAGE」を売り出す。最初の引き渡しは 2024 年春から始まる予定だ。

晴海フラッグのように今後も都内の分譲マンションが消費者を引き付けることができるのか。コロナ禍で需要が外に向かっているとの指摘は少なくない。実際、総務省の調査によると、2021 年の東京都は転入者数が転出者数を 5433 人上回る「転入超過」となったものの、前の年に比べて8割超の大幅減と過去最少を2年連続で更新している。東京 23 区に限って見ると、初めて転出が転入を上回った。

新型コロナウイルス感染拡大が長引いていることでリモートワークが普及していることを反映している見方がもっぱらだ。しかし、その転出者の行先を見ると、神奈川県や埼玉県、千葉県と周辺県に流れ込んでおり、東京圏でのパイが減っているわけではない。会社から遠くない東京圏に移動していることを見れば、ワーカーも会社が完全リモートワークにするとは考えておらず、週に何度か出社しなければならないことを踏まえていることが透けて見える。東京圏での分譲マンション市場に悲観的な観測は見られない。

ローン減税控除率 0.7%下げも需要は底堅く推移する見通し

分譲マンションの購入環境も変わっている。2022 年から住宅ローン減税の内容が変わっており、従来の住宅ローン減税の適用期限は 2021 年 12 月 31 日で終了した。住宅ローンの年末残高から所得税・住民税から税額控除できる仕組みだが、これまでの控除率 1.0%から0.7%に引き下げられた。対象となる人の所得要件についても、従来の 3000 万円以下から2000 万円以下に引き下げられた。ただ、住宅取得意欲が低下して需要が落ち込むのではとの声はほぼ聞かれない。適用期限が4年間延長されたほか、控除期間を「原則 10 年」から「原則 13 年」に拡充するなどの施策を盛り込んだためだ。中古住宅の場合は、控除期間が原則 10 年となっている。

カーボンニュートラルの観点から、住宅についても環境対応の減税に力を入れるのも特徴だ。借り入れ限度額を環境性能によって変えた。長期優良住宅・低炭素住宅は 5000 万円、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の省エネ住宅は 4500 万円、省エネ基準適合住宅は 4000万円、一般住宅は 3000 万円となった。

住宅ローン減税対象の床面積基準も変わった。40 ㎡以上 50 ㎡未満の新築住宅は 2023 年12 月31 日までに建築確認を受ければ適用対象となる。従来は50 ㎡以上が適用要件だった。ただし、1000 万円を超える所得がある年は、住宅ローン減税による控除が適用できない制限を設けている。実需ではなく投資家を優遇することにつながりかねないとの判断からだ。

円安と資源高の進行による経済回復の腰折れ懸念が増す

金利動向が今年の最大の焦点となっている。住宅ローン金利の指標となる 10 年国債金利は、2016 年にマイナス 0.3%の大底を付けて以降、さらなる低下基調がみられないことでマイナス金利が進む公算は小さいとの見方が多く、むしろ 2022 年の後半に向けて一段の金利上昇を予測する声として 0.6%まで上昇するという声も上がる。その予兆なのか、2月4日の国内債券市場で 10 年国債利回りが一時 0.2%を付けた。米国だけでなく英国の中央銀行(イングランド銀行)や欧州中央銀行(ECB)が金融緩和を縮小する動きに引きずられている。金利が上昇すれば借入金の多い不動産業界を直撃する。特に米国では早期の利上げが織り込まれ始めており、年内に3回の利上げが見込まれている。インフレが高い水準で定着しているため、米国は金融引き締めに動く。

日本は政策的に利上げの動きはないものの、長期金利が若干上がる場面が見られる程度 で依然としてゼロ水準に抑え込んでいる。ただ、利上げする米国とゼロ金利を維持する日 本の動きにともない円安が加速しないかとの懸念が及んでいる。輸出主導型の経済で成長 してきた日本だが、かつてのようにはいかない。円安が企業を潤してきたのは昔の話。1 ドル 70 円台という過度円高を経験したことで企業が海外拠点を増やしてきた。そのため、今では円安が進んでも恩恵をさほど受けない体質となっている。

一方で輸入に頼らざるを得ない石油や鉱物資源、天然ガスなどの資源高が重くのしかかり企業業績を圧迫する。特にロシアがウクライナに再侵攻しかねない国際情勢を受けて原油高は当面続きそうだ。景気の悪化とインフレが同時進行する懸念が挙げられている。

企業はこうしたコスト高を価格に転嫁し始めている。足元の食材や日用品は値上がりが相次いでおり、これが進めば消費者の財布のひもを引き締めて景気悪化につながる可能性がある。不景気になれば、高水準にある不動産価格も調整に追い込まれる。

今年は様々なことに目配せする必要はありそうだ。「不動産バブルがなお続くのか」。その可能性としては低い。金利と為替、国際情勢に左右されるが、世界を震撼させるほどの変動がないかぎりは、国内外の企業業績は底堅く動きとの見方少なくない。分譲マンション市場は、新築・中古とも年内に価格が天井を打ち調整局面を迎える可能性が高いが、購買力のある消費者が買い手として存在感を出し続ける見通しだ。