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不動産レポート



東京五輪いよいよ開幕

感染拡大の懸念も経済回復を意識

新型コロナウイルスの感染拡大によって1年延期された 2020 年東京五輪・パラリンピック。今もなお感染収束の見通しが立たず延期開催に懐疑的な見方が強かったが、いよいよ7月 23 日に東京オリンピックが8月8日までの日程で行われる。パラリンピックは8月 24~9月5日までの日程で開催する。海外からの観客を入れずに人数を絞って国内在住者の観戦を認めるが、緊急事態宣言が再び発令されれば無観客での五輪開催の可能性もあるという史上初めての五輪開催になる。異例ずくめの中で開催する東京オリンピックが日本経済、ひいては不動産市場にどのような影響を与えるのだろうか。

■路線価はコロナ・ショックで都市部、繁華街で下落

国税庁が7月1日に発表した路線価は国土交通省が3月に公表した公示地価と同じ動きを辿った。そもそも路線価は公示地価などを基に評価しているため、同様のトレンドを描くことは当然のことではあるが、改めてコロナ・ショックの影響を感じさせる結果だった。路線価は相続税や贈与税の算定基準となるもので公示地価の 80%水準で評価する。1月1日時点の評価だ。それによると、2021 年分の標準宅地の評価基準額は全国平均で前年を0.5%下回って6年ぶりの下落となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響により大都市や観光地を抱える地域を中心に弱含んだ。

全国の都道府県庁の所在地の最高路線価は 22 都市で下落した。都道県別では 39 都府県で落ち込んだ。下落率が最も大きかったのは大阪市の心斎橋筋で 26.4%のマイナス。インバウンド(訪日観光客)需要が消滅したことで東京・浅草でも 11.9%マイナスと 2 桁の大幅下落となった。全国で最も高い路線価額は 36 年連続で東京・銀座 5 丁目の「鳩居堂」前で1㎡あたり 4272 万円(前年比 7.0%下落)となり、9 年ぶりにマイナスに転じている。

コロナ禍前は、訪日客の増加と東京五輪によって宿泊施設が不足すると考えられ、ホテ ルの開発計画が相次ぎ、それが順次竣工しているが、現在の稼働率はどこも閑古鳥がなく ような状態に追い込まれている。飲食店や土産店は客が来ないで商売はあがったりである。それらが一気に地価に影響を与えている。商業用不動産への影響は小さくはない。テナントの飲食・サービス事業者が時短営業などで家賃を支払えずに店を閉じたりするためだ。テナントの要望に応じて家賃支払いの猶予や減額に対応する物件オーナーも多い。

都心一等地の賃貸市場でも賃料水準が弱含んでいる。ジョーンズラングラサール(JLL) の調査によると、2021 年1~3月の銀座・表参道の路面店の賃料は前期比では横ばいで推移しているが、1年前の同じ時期との比較では 1 割ほど下げている。銀座は月額 25 万円(前年比 10.7%下落)、表参道が月額 20 万円(同 9.1%下落)となっている。

 

地価下落は一過性の動き。ポストコロナ意識する投資家

ただ、国土交通省の地価LOOK などからは昨年の後半以降から地価に下げ止まり感が見て取れる。ワクチン接種の進展に伴い感染者数がコントロールしやすい環境が整えば地価が底入れし、再び上昇トレンドを描くとの予想をする専門家は多い。不動産サービスの東京カンテイでは、「下落基調が続くことは考えづらい」としている。

日本不動産研究所が直近4月に実施した不動産投資家調査では、「当面ネガティブな影響を受ける」との回答が6割ほど占めたものの、「この半年間で投資姿勢に特段の変化はない」(86.9%)と投資姿勢は強気を維持している。不動産市場に対する悲観論は出ていない。世界中の緩和マネーを背景にしたエクイティ投資家が存在感を強めている。

すべての業種・業態がコロナ・ショックの直撃を受けているわけでもない。株高による資産効果を背景に富裕層の消費意欲も高水準だ。美術品、宝飾品、貴金属品は好調で、ステイホームを背景に家電・家庭用品の売れ行きが好調だ。ポストコロナを意識した投資を始めている企業も少なくない。

「新規出店の需要は減退が続いたものの、中長期的な出店計画に合致する好立地の路面 店に対する案件は、賃貸市場に出回らずに後継テナントが決まっている状況が続いている。一方で空中店舗の空室は増加傾向が続いており、テナントの物件選別の厳しさが増してい る」(JLL)。今年1~3月期には表参道のポール・スチュアート跡にエルメスが開業し、銀座にルイヴィトン銀座並木通り店がオープンした。

2020 年度の国の税収は、意外にも過去最高を記録することが明らかとなった。新型コロナ禍で企業の売り上げが減少して税収が減ると考えられていたが、60.8 兆円程度に達する見込みだという。想定では 58.4 兆円だった。これまでの最高は 2018 年度の 60.4 兆円だったので2年ぶりの更新となる。消費税率が 10%に引き上げられた 2019 年 10 月以降で初めて1年間を通じて消費増税の影響を受けることもあるが、コロナ禍で収益にダメージを受けなかった企業の存在も裏付けている。

五輪開催で晴海フラッグ最悪シナリオ回避

東京五輪・パラリンピック開催で俄然注目を浴びるのが晴海フラッグだ。選手村として使われた後に分譲マンションとなるもので、約1万 2000 人が暮らす街が誕生する。「晴海フラッグ」(4145 戸)は、三井不動産レジデンシャルなど大手 10 社がかかわるプロジェクトで 11 月中旬に販売を再開することを発表した。

東京五輪・パラリンピック開催の延期を受けて販売をストップしていた。五輪延期決定前までの販売活動で   940   戸が供給済み。五輪が終わった後に分譲向けに改装を再開して2024 年3月下旬の入居に間に合わせる。公式サイトを 2018 年 10 月に開催して以降の物件エントリーは3万 6000 件を超えている。販売再開後の成約進捗が今後の東京圏のマンションマーケットを占う試金石だとして注目を集めている。

東京五輪・パラリンピックが開催されることで最悪のシナリオを回避されたと見られる。選手村としてのレガシーが付いた形で販売できるからだ。「このマンションは、かつて東京で開催されたオリンピックで▽〇□の選手などが使った……」などとなるが、オリンピッ クが中止になると単なる駅から遠いマンションとなってしまう。「五輪レガシーブラントを落とさずに済んだことに胸をなでおろしているのではないか」(マーケット関係者)。

とはいえ、販売戸数はまだ相当に残っている。「晴海フラッグを売り切るのは大変だ」、という声も漏れ伝わる。仮にそうした厳しい状況であるのならば、販売戸数を多くしてプロジェクトからの手離れを急ぐのではなく、販売戦略としては、値下げして売らずに小出しにじっくり時間をかけて販売する発想にシフトする。むしろその方が周辺の他の新築分譲マンション市場に影響を与えない。そもそも晴海フラッグと都内の他の分譲マンションの商品の差別化はできている。晴海フラッグは駅遠がレガシー物件、周辺の他物件は駅から近いというのが売りになっている。

晴海に限らず、マンション市場全体を俯瞰した場合でも都心人気は変わらない。コロナ禍の最大の特徴は、リモートワークで不動産市場にこれまでとは違う評価軸が出てくることが最大の関心事となっていたことだ。新型コロナウイルス感染が本格化した昨年2~4 月が特にそうした動きだった。

だが実際はそうした流れになっていない。東京カンテイ市場調査部の井出武氏は、「デー タからもそれははっきりしている」と指摘している。仮に新型コロナがマラリアのような 熱帯性の性質で、北海道では感染者が出ないのであれば、酷暑になりやすい東京以西から 脱出して札幌や仙台など北に需要が向かうといった新基軸の誕生も想定できたであろうが、コロナは夏冬関係なく世界中に広がった。住宅・不動産市場は、冷静に読み解く必要があ りそうだ。一過性の人気に振り回されない目利きが企業も消費者も求められていると言え よう。