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不動産レポート



緩和政策継続で資産バブル続く

東京都心は富裕層が購買力を競う市場に

岸田文雄首相の政権基盤が固まった。10 月 31 日の衆院選は、自民党が 261 議席を獲得して過半数の 233 を大幅に上回り、安定的な国会運営に期待する声が広がった。翌1日の日経平均株価は絶対安定多数を好感して大幅に上昇した。11 月 10 日に召集された特別国会で第2次岸田内閣が発足し、2022 年夏の参院選まで当面は現在の緩和マネーが市場に滞留する状況が続きそうだ。岸田内閣の続投が決まった中で、今後の不動産市場を展望する。

 

日本の不動産株などを分析する市場関係者は、今回の衆院選の結果を受けて大規模な金融緩和とマイナス金利が続くと見通す。不動産会社は銀行などから資金を調達して事業をすることから金利上昇は痛手だが、それはなさそうだと指摘する。安定政権の下で今後の経済対策の実行性も担保され、不動産市場が悪化する要素は見当たらないとしている。

岸田首相は、新型コロナウイルス対策と経済再生を政策の軸に舵取りをする。コロナで拡大した所得格差を縮めて「令和版所得倍増」を掲げている。一億総中流社会と言われたのは今や昔の話で、足元の格差を是正して中間層の厚みを増すことに力を入れ、今年中に数十兆円規模の経済対策の裏付けとなる補正予算を成立させる方針だ。積極的な財政出動と大規模な金融緩和で溢れるマネーがリスク資産に向かう構図は変わりそうにない。

●国の財政状況悪化も個人金融資産が膨張

岸田首相は、富の分配を掲げて誕生したが、そこに向けての構造改革を推し進めることで成長戦略を大きく前進させることが求められている。バブル経済崩壊以降、約 30 年間も個人所得が伸び悩んでいる。成長戦略として重点的に資金を投下する先を間違えれば、世界の投資家から見放されかねず経済の潜在的な低下に直結する。消耗戦はいつまでも続かない。

経済の成長がないと悪化の一途をたどる国の財政状況は危機的に状況に陥りかねない。コロナ対策による財政出動も影響し、国と地方の長期債務残高は 2021 年度末に 1200 兆円を超えるまでに膨張する見通し。GDP(国内総生産)の2倍強の水準だ。貯蓄性向の強い日

本の国民の金融資産を当て込んだ国の借金体質から抜け出せてない。日銀の統計によれば、個人が保有する金融資産は、昨年 12 月末時点で 2000 兆円に迫る過去最高となった。

●マンション価格に所得が追い付かない

所得格差の是正は進むのか。コロナ禍では、職種・業態によって所得が大幅に減額した人と変わらない人に分かれた。なかには増えた人もいる。家計が傷み住宅ローンが払えなくなって住まいを手放さざるを得ない人がいる半面、高額な宝飾品や絵画が飛ぶように売れる現状は分断社会の象徴的な出来事だ。資産バブルを生み出しており、不動産もその象徴的な存在だ。不動産調査会社の東京カンテイ(東京都品川区)は分譲マンションの価格が年収の何倍になっているかを調べた。直近 2020 年の東京都は新築で 13.40 倍、中古でも 11.50 倍となっている。価格の上昇率が平均年収の増加を上回っているためだ。新築は大阪府(10.37 倍)と京都府(11.34 倍)も高い倍率となり、沖縄県も 10.84 倍と地元住民が手の出ない水準だ。

国税庁の調査を見ると、2020 年の民間の年間所得は平均 433 万 1000 円(前年比 0.8%減)と2年連続で減少している。コロナ禍で経済活動が低迷し、飲食・サービス業、宿泊など観光業を中心に幅広い業種で収入が減ったことが影響している。ボーナス額は平均 64 万6000 円で前年比 8.1%と大きく下げた。コロナ禍の影響で年収倍率は拡大が続くと見られる。

●コンパクトマンションは投資人気に陰りか

不動産マーケットを見ると、既に投資用のマンション価格にはバブル感が漂っている。ある個人の不動産投資家は、「東京都心の投資用マンションは未だに上がり続けている」といい、その背景については「価格が上がり続けているので今購入しないと買えなくなるのでは、と思っている人がいる」とバブル経済を彷彿とさせる取引が行われていると説明する。人気エリアでは、投資用として引き合いの強いコンパクトマンション(1LDK タイプ) で億ションが珍しくない。東京都港区高輪では 50 ㎡に満たない物件で1億 1400 万円だという。

昨年の税制改正により、住宅ローン減税の適用範囲が専有面積 50 ㎡以上から 40 ㎡以上に緩和された。住宅ローン減税では、年末のローン残高の1%に当たる金額が所得税などから差し引くことができる。このことで新築コンパクトマンションが増加するとの見立てがあったものの、価格の高止まりなどを受けて新規の供給が増えていない。若者世帯の単身者増加と、高齢者の単身・2人世帯の増加でニーズはあるものの、「ワンルームマンションと比べると、家賃が高く賃借人が付きにくく扱いにくいのではないか」(東京カンテイ) という判断が働いて事業化に至らないと見られている。

2020 年までの 10 年間の新築コンパクトマンションは交通利便性の高いエリアで供給が進んだ。東京 23 区を見ると、中央区の 770 戸を筆頭に江東区や港区といった湾岸エリアで400 戸台~500 戸台が供給され、新規開発適地も少なくなっている。ただ、東京 23 区は 2010年までにワンルームマンション規制条例が相次ぎ定められたため、ワンルーム開発の際はコンパクトやファミリーを一定数設ける義務が生じて都区部にコンパクトが増加した。

不動産価格は当初の観測外し、東京五輪後も値上がり続く

コンパクトに限らず、新型コロナウイルス禍であってもマンション価格は下がらなかった。新築供給が絞られている中で、購入を検討する層が中古マンションに流れ込んだ。特に専有面積が 70 ㎡以上の価格上昇率が高くなっている。新築よりも安く 23 区内で少しでも広い間取りを探す動きが顕在化したと言える。前出の東京カンテイは、その住戸の広さに対するニーズの変化を坪単価ベースの変動指数として分析している。

コロナ前の 2019 年第 1 四半期を 100 とする指数で、2020 年以降の上昇度合いが 70 ㎡以上で際立ったとする。2021 年の第 2 四半期に 120 ポイントを超え、第 3 四半期に 127.4 ポイントまで達した。その一方で、30 ㎡未満の居住ニーズがコロナ前に比べて減退しており、変動指数は 103.6 ポイントにとどまった。ちなみに 30 ㎡台~40 ㎡台は 119.6 ポイント、50㎡台~60 ㎡台は 118.1 ポイントとなっている。

不動産マーケットは、東京五輪・パラリンピックまでは上がり続けると言われ、その通りとなったが、その勢いに陰りは見えない。もちろん、エリアによって状況は異なるものの、東京五輪後は不動産価格が下落に転じるとの当初の観測を翻してなお上がり続ける可能性が出てきた。