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不動産レポート



オフィス取引活発で投資利回り低下

マンションは価格高騰で調整局面に突入へ

新型コロナウイルス感染拡大が始まってから社会経済の風景が大きく変わった。2020 年から本格化したコロナ感染は2年が経過しようとしているが、なお社会経済の正常化に向けて明るい未来が見通せていない。政府による緊急事態宣言は9月末に解除され、10 月以降から1日当たりの新規感染者数が下がり続けて低水準で推移しているものの、諸外国では感染爆発の状況が続いて予断を許さない。2022 年の不動産マーケットはどう動くのか。今年の状況を踏まえながら展望する。

 

● 都市型マンションの優位性は変わらず

不動産市場の特徴は、コロナ禍でも潤沢に資金が流入していることだ。実需向けと投資 家向けの双方に金融緩和マネーが流れ込んでいる。分譲マンション市場は新築・中古とも に価格高騰が続き、普通のサラリーマンが購入するには高嶺の花の価格水準に達している。

不動産調査会社の東京カンテイの調査によると、直近 10 月の中古マンション価格は、首都圏平均が 4360 万円と 6 カ月連続で上昇した。東京都は 5914 万円(前月比 0.6%上昇)となり、東京 23 区は 6465 万円(同 0.5%上昇)だった。いずれも 16 カ月連続で上昇した。都心 6 区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)はわずかに弱含んだとはいえ、9262 万円の高水準だ。中古物件で 9000 万円を超え、都心部では平均価格が1億円を超える行政区もある。

しかし、高嶺の花となった中古価格は、そろそろ調整局面に突入してもおかしくない気配だという指摘が出てきた。その背景について、同社では、東京 23 区での在庫数が5カ月連続で増加傾向にあり、価格改定シェアと値下げ率が拡大傾向にあるためだとしている。

中古マンション市場は、新築分譲の供給が少ないことから中古を物色する需要者が増えたものの、売りに出されるマンションが少ないことで 2020 年 6 月頃から品不足感が強まっていた。この傾向は東京圏に限らず、大阪圏や名古屋圏、福岡圏など他の主要都市でも同様の動きになっているという。同社では、今後の動向として、住宅購入検討者が様子見の状態に入ると見通している。新型コロナウイルス感染では、新たな変異株としてオミクロン型が世界に拡散し始めており、日本でも感染者が発見されて消費者心理の重石なりそうだ。

しかし、消費者と住宅販売会社の双方ともにコロナウイルスとの付き合いは長引くとの覚悟を持っている。このウィズコロナを踏まえての消費行動として、分譲マンションだけでなく賃貸住宅を含めて広い間取りの住宅が選ばれるようになるとの観測が大勢を占めている。住宅選びの新常識として「広さ」が加わる。つまり、「駅近」とともに広い間取りが住宅のスペックとして重視される。郊外の戸建て住宅が売れているのは「そうした観点によるものだ」というのが市場関係者のもっぱらの見方である。

では、広さが住宅選びのスペックに加わることで、広さを追求しづらい都心マンションの人気が落ちるのか。専門家の多くは、「そうはならない。都心の優位性が揺らぐわけではない」と強調している。「マンションは立地を買え!」というのが鉄則だ。駅に近く、職場にも近く、住宅周辺に生活利便施設がそろっている。

この点から察すれば、郊外が人気だと言っても、すべての郊外が選ばれるわけではなく、利便性が伴わない郊外のマンションが売れないことに変わりはない。少子高齢社会が進む中で、生活の利便性を求めて戸建て住宅から住み替えるリタイア層が都心マンションを求めている動きは増えている。

● テレワークでもオフィス盛り返す

オフィスビル市場については、空室率の上昇と募集賃料が下落する局面が 2022 年以降も続く。テレワークの導入が増えたことで、企業は借りているオフィスの床面積を減らす動きも続きそうだ。だが、その局面は立地性と個々のビル性能で異なってくる。空室率と募集賃料が底打ちして改善傾向に向かうところと、悪化が止まらないところ。東京 23 区はまだら模様だ。オフィスの勝ち組と負け組がこれまで以上に鮮明になる見通しだ。

東京のオフィスビル市場の一番の懸念材料は、2023 年と 2025 年に大規模なオフィスビルが竣工することが挙げられている。コロナ禍でテナントが床面積を減らす動きがあるだけに空室率がもう一段上昇するのではとの懸念が広がる。だが、最近になって港区など都心で 2023 年に竣工するビルに少しずつ引き合いが出始めている。こちらもコロナウイルス新型株の状況によるが、業界関係者は空室率の上昇は緩やかにとどまると予想している。

一方、空室率上昇と賃料低下というネガティブな局面とは裏腹に、オフィスビルの売買取引は好調に推移している。2021 年の特徴はコロナの直撃を受けた企業が資金繰り対策として、保有する本社ビルなどの不動産を売却する動きが増えたことが大きい。同様に一般事業会社が経営を立て直すために、保有資産を放出する動きが引き続き注目されている。これに伴い物件の取引価格は上がり、投資利回りは低下している。

● 海外投資家の意欲は衰えていない

ワクチン接種が進んだ都市に投資資金が振り向けられている。感染状況が欧米に比べて日本が軽微なことで国内外から資金が集まってきた経緯があるが、2021 年はワクチン接種が普及したことが弾みとなった。JLLの調査によると、2021 年 1~9 月の不動産投資額は、東京が 191 億ドルと世界都市ランキングで4位につけた。都心5区の投資額割合は 43% となり、記録的な低水準だって昨年通年の 29%から巻き返している。大阪は 38 億ドルで38 位だった。その大阪の投資市場は、大型オフィスの割合が圧倒的に高い東京圏とは対照的に賃貸住宅の割合が 43%と最も高いのが特徴という。

東京や大阪に並んで注目を浴びているのが福岡だ。天神ピッグバンなど福岡市が主導する再開発プロジェクトが進められている中で、竣工がこれから相次ぐことでテナント誘致とともにビジネスが拡大して賑わいを見せそうだ。

海外投資家によるインバウンド投資の状況について、JLLの調査で見ると、2021 年 1~9 月期は 5714 億円となり、前年通期の投資額1兆 5548 億円を大幅に下回っている。

「しかし、海外投資家が日本から撤退しているわけではない。おう盛な投資意欲を失っているわけではない」(JLL)。米国が金融緩和の縮小を始めているので注意して見ていく必要があるが、日本の投資適格不動産は米国に次ぐ規模を誇っているのが強みだという。

ポートフォリオを分散するときに欧米以外の都市を見ると、アジアでその受け皿となり 得るのは東京が圧倒的な規模を有している。アジア新興国と比べて政治が安定して地政学 的なリスクがないことも魅力の一つとなっている。その海外投資家のターゲットとなるの は、脱炭素社会と SDGs(持続可能な開発目標)の性能・機能を備えた不動産が選好される。