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不動産レポート



中古マンション戦線に異常アリ

過熱感が 和らぎ品不足感 も 解消 へ 

『売れるうちに…』ウィズコロナで 売り主心理に影響

新型コロナ禍の3年目が始動する。この感染症の流行との関係でマンション市況を見ると、大きく3つのフェーズに分類できそうだ。感染拡大が本格化した 2020 年2月~5月当たりが第1フェーズだ。初めて緊急事態宣言が発動され、不動産業界に限らずあらゆる市場がフリーズした。景気が急速に落ち込んでマンションの新築発売は大きく減少し、中古の取引量も大幅に減少した。その緊急事態が解除され、ポストコロナを見据えて急速に不動産取引が回復したのが第2フェーズでコロナ前の水準を回復している。コロナで1年延期となった東京五輪・パラリンピックが始まる直前の 2021 年6月当たりからが第3フェーズとなり、アフターコロナではなく「ウィズコロナ」を意識して市場が動き始めている。

●中古市場の好調の『山』は既に終了 売り主心理の変化で新規登録数は増加へ

このウィズコロナを前提に中古マンション市場はどう動くのか。価格は上昇アクセルを踏み続けている。東日本不動産流通機構(レインズ)が 12 月 10日発表した直近 11 月の首都圏の成約データを見ると、成約件数は3416 件と5カ月連続で前年同月比割れしているが、成約価格は 3897 万円となり 18 カ月連続で上昇している。1㎡当たりの単価にすると 60.92万円で 19 カ月連続の上昇となった。一方、在庫件数は 3 万 5389 件と 24 カ月連続で減少している。タイトな需給環境を受けての品不足感が続いていることを印象付けている。

 

しかし、新規の登録件数が1万 3931 件と 27 カ月ぶりに増加に転じた。その背景として、上昇基調が続いて売り時を見極めたいと売り渋っていた売り主が動き出した可能性がある。「これ以上引っ張って買い主の購買力を超えると売れるものも売れなくなる」と判断し始めたためだ。新築マンションや注文住宅に比べて相対的に割安な中古マンションというイメージは今や遠い昔のような感じとなり、現状は物件価格が高くなりすぎて実需層が買えなくなったり、投資目的の需要でも高額すぎて買い換えできない、との声が広がっていた。

 

この投資家心理については、不動産投資と収益物件サイトの健美家が昨年 12 月に発表したアンケートから読み取れる。「今年の不動産投資を表す漢字 2021」を募集したところ、1 位は「高」となり、2位に「騰」となった。アンケートでの象的なコメントの中には、「思わず『高!』と口に出してしまう1年だった」などの不動産投資の世相を表すコメントが並んでいる。

 

話を在庫の推移に戻して見ると、不動産調査会社の東京カンテイでは、中古マンションの在庫住戸数の変化について 30 ㎡以上を集計しているが、東京 23 区では昨年6月頃から増加に転じている。これは大阪市や名古屋市など三大都市圏の主要都市においても同じ動きとなっている。昨年の年央が在庫住戸数の変化のターニングポイントとなり、すでに中古マンション市場は、高額でも優良物件が市場に出回ると蒸発的に売れてしまうような『好調の山』は終了していると見られる。

 

コロナ禍を振り返って見ると、2020 年6月頃にスタートした品不足感であるが、これから在庫件数が増加に転じれば解消に向かいそうだ。だが、需給にひっ迫感がなくなれば今度は買い手が市場の行方を様子見する状況になることも考えられる。

 

●感染症との共存意識が強まり広さ重視 郊外人気でも大都市の優位性は揺るがず

 

今後については、『コロナと共に』を意識したウィズコロナ時代を探りながら新たな動きが出ると見るべきだろう。足元のコロナ感染状況は再び増加に向かっている。新たな変異株オミクロン株が世間を賑わすが、人々の意識としては、その後も新たな変異株が登場するとの意識が強まっているはすだ。

 

そのウィズコロナの新たな動きとして、「買い手がいるうちに、売れるうちに売ってしまえ」という将来不安を背景にした人の心理が働き、売りが先行して在庫件数が増加に向かうとともに、中古マンション価格が下落フェーズに突入したり、テレワークスペースを確保しやすい面積の広い物件が求められるほか、戸建て住宅にニーズが高まることが考えられる。

 

間取りの多さや居住空間の広さ。この2つが「駅近」と同じ価値観になる可能性もある。その前兆は既にある。賃貸住宅市場を見ると、単身者向けのワンルームマンションは入居者の誘致に苦戦しており、単身者でも広い間取りを選好するようになっている。

 

その半面、ワクチンの性能が高まったり、飲み薬の開発が進んでコロナが通常の風邪と同じようになればウィズコロナからポストコロナ、アフターコロナの時代になると需要は再び品不足と価格の高止まりが続く。年中リモートワークをしているわけではなく、週単位や月単位でそれぞれ出社日のあるハイブリッド型の定着を考えれば、需要が郊外に向かっていると言えども、在宅勤務を前提にしすぎて安易に奥に引っ込みすぎると失敗する。郊外と言っても全てが選ばれるわけではなく一部の県庁所在地や地方の再開発エリアなどに限定されるだろう。

 

実際、この2年間のコロナ禍を振り返ってみても生活の利便性を求める人は多い。定年 退職したリタイア組が都心に住宅を買い求めるように大都市の優位性が揺らぐことはない。東京都は昨年、人口動態で転出超過が続いて注目を集めていたが、その比率は約 1400 万人の東京の人口から見れば誤差程度の範囲にすぎず、特に資産性と投資効率の高い都心部の物件は引き続き価格が上昇することが共通認識としてある。治安情勢と同様に日本のマンションの資産性に対する安全神話が世界的に広がっているので海外投資家が資金を投下する。それに伴いさらなる価格上昇を見込むこともできる。

 

テレビや新聞などマスコミが取り上げる地方移住の成功例は一部に過ぎない。ほとんどの人が仕事を変えられず、辞められない。テレワークだけで成立する仕事もない。そのように考えると、都市部の中古マンションは、コロナ前と同じように働き方改革と生活の利便性見据えながら資産性を重視して選ばれると言えよう。