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不動産レポート



新米大統領の手腕、日本にも影響か 低金利・緩和マネー、金融政策変更に警戒感

日英仏に米富裕層の逃避マネー? 

 

新型コロナウイルス感染拡大から1年が経過した。緊急事態が二度にわたり宣言され、なかなか終息の見通しが立たない中で、株式市場を見ると、日経平均が3万円台を回復して30年ぶりの高値水準となっている。コロナ禍を受けて世界的な財政出動と低金利で市場に溢れる緩和マネーが株式や不動産などのリスク資産に向っているためだ。この緩和マネーはいつまで続くのか。そのカギを握るのが米国である。昨年11月の米大統領選挙では、民主党のバイデン氏が共和党のトランプ氏の再選を阻んで新たな大統領に就いた。これにより米国の政策がドラスティックに変わることで目が離せなくなっている。経済との連動性の強い不動産市場は、日本経済のみならず米経済の影響が及ぶ。

 

 

■日本政府の台所事情は厳しいかじ取り 一般会計9年連続で過去最大、4割借金

 

まずは日本政府の台所事情を見ると、2021年度予算案はコロナ対応による予算が増えて一般会計が106兆6097億円に上り9年連続で過去最大を更新する。衆院予算委員会は3月2日に2021年度予算案について与党の賛成多数で可決し、衆院本会議でも自民、公明両党などの賛成多数で可決して年度内成立が確定した。

 

外出自粛や営業時間の短縮要請などで飲食・サービス、宿泊だけでなく交通機関などの売り上げが大きく落ち込み、個人所得も目減りしている。予算案では、感染拡大に対応するための予備費5兆円を計上。歳出が増加する一方で、税収が落ち込んでおり、国はその落ち込みを4割の借金で賄う台所事情である。

 

台所事情の悪化は日本国債の信用度にも影響を与えている。格付け大手は昨年、一様に格付け見通しを引き下げた。格下げではないもののポジティブから安定的、安定的から弱含み、といった変更をしたことは財政赤字の拡大に対する憂慮を反映してのことだ。

 

国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年に黒字化する目標を掲げているが達成はほぼ無理で仕切り直しを迫られている。財務省は今年1月に2022年度末の国債発行残高が1000兆円台を突破すると発表した。当初の想定より4年早く大台に達する。市場の安定化に向けて日銀はリスク資産を大量に購入してきた。しかし、時価評価で日銀を評価したときに長期金利が上昇すると債務超過に陥ってしまうとの危機感も頭をもたげている。

 

■米国は過剰な追加経済対策で 消費の過熱化に警戒感がじわり

 

コロナ禍感染拡大は日本だけでなく世界の主要都市でも将来見通しを大きく狂わせた。世界の感染者数と死者数が世界で最も多いのが米国。感染者数は3月2日時点で2900万人に迫り、死者数が50万人を超えている。米国の近代戦争史で見ると、約50万人の兵士を投入して泥沼化し、5万人の兵士が戦死したベトナム戦争の10倍の死者を出している。

 

このような感染拡大を招いた米国は、トランプ政権時から強力な経済対策を打ち出してきたが、その流れはバイデン政権でも変わらない。2月27日に米下院で新型コロナウイルス対策として1.9兆ドル、日本円で約200兆円という巨額の追加経済対策法を可決した。これまでに2回の現金給付で一人当たり1800ドルを支給済みだが、追加経済対策でも一人当たり最大1400ドルの現金給付と週400ドルの失業給付の上乗せが柱となっている。コロナが収まれば高級品などの支出に回り、消費が一気に過熱化する可能性もある。

 

中国の金融監督トップが海外市場のバブル崩壊に懸念を示していることも報じられている。海外市場であふれたマネーが中国にも流入しており、中国国内でも大都市部の不動産価格が上昇している。融資の引き締めを行っているものの、自国の不動産バブルの崩壊と不良債権処理に気をもんでいる。

 

米国では低金利と財政出動が当面続くとのシナリオが崩れる警戒感が広がっている。コロナ対応でワクチンの接種が進み、今年の年後半から経済が回復に向かう。実際、米国の感染者数を見ると、1月に1日当たりの感染者が約25万人と過去最悪だった時期に比べると、足もとでは3分の1ほどまで減少している。感染が収束に向かうシナリオを前提に200兆円という大規模な追加経済対策でばらまかれたお金を使い消費が過熱することでインフレを招き、それを冷やすために金利政策を変更する。このような市場参加者の見方が台頭する。

 

実際、米議会予算局(CBO)の試算として2024年度までの累計需給ギャップ約7000億ドルに対して1.9兆ドルの追加経済対策にやりすぎの声を紹介する報道が多く出ており、そうした見方に機敏に反応したのが米長期金利だ。米市場は2月25日に10年物国債利回りが一時1.61%と約1年ぶりの水準に急上昇した。

 

緩和的な金融政策の変更につながるとの思惑から米国の株式市場が急落して翌日26日の東京の株式市場にも反映され、日経平均は1000円超の下落となった。「超低金利が長く続く」との見方が揺らげば同様に金融政策のシナリオが修正に向かうとの連想が働く。金利が上昇すると不動産の需要が一気にしぼんでしまう。政府・日銀の金融支援、緩和マネーが終了したあとが怖いと身構えている不動産投資家も少なくない。

 

■バイデン政権は分断社会の是正 富裕層の税優遇策廃止などに照準

 

バブル崩壊後に日本の不動産市場は、不良債権化した不動産を目当てに外資が席巻したのを機に国境をまたぐ、つまりクロスボーダー取引が増えている。外資の存在感が高まった。

 

米不動産サービス大手のジョーンズ ラング ラサール(JLL)の調査では、東京に対する不動産投資額が2020年に世界3位だった。1~9月まで世界トップの投資額を呼び込んでいたことでもわかるように日本の不動産需要は大きいだけに日米の金利動向からは目が離せない。

 

バイデン新政権は、トランプ政権時代に広がった格差を埋める、分断社会を修正する、といったことを公約として掲げている。その政策の矛先は富裕層である。不動産関連分野では、投資目的に売買したキャピタルゲインに対する税優遇を廃止する方針とされているが、米国内で不動産投資をする妙味が薄らぐと、その資金がロンドンやパリ、東京といった投資適格不動産の多い先進諸国の不動産に資金が流入する可能性が出てきた。

 

折しもいまコロナ禍で企業業績がつるべ落としに見舞われている中で、収益悪化の日本企業が保有不動産を手放す動きが活発になっている。音楽業界大手のエイベックスは、東京都港区の本社ビルを売却することを決めて一般事業者に3月下旬に引き渡す。その売却益は簿価よりも290億円高い水準だ。

 

三井不動産は1000億円で東京ドームを連結子会社とし、不動産大手のヒューリックは電通の本社ビル取得で優先交渉権を得たほか、リクルートの登記上の本社である銀座のビルを取得したことなどが明となっている。資産・資本効率の改善に向けて企業が保有資産を売却する動きが加速し、大型の不動産取引が相次ぐ予想も少なくない。

 

ちなみに、国土交通省が四半期ごとに発表する地価LOOKレポートを見ると、最新2月24日発表の1月1日時点の地価は、上昇地区が増えて下落と横ばいが減っている。マンションの堅調な販売状況や事業者による土地取得の動きが回復したことで住宅地が強含んでいる一方で、商業地で地価下落が継続している地区や新たな下落に転じた地区もあってまだら模様である。