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不動産レポート



首都圏・近畿圏マンション市場 コロナ鎮静化を見据えて需要は年内都心回帰か

販売価格はバブル期以来の高水準に

 

収束の見通しが立たない新型コロナウイルス感染下でも住宅・不動産業界への影響は限定的だ。というよりも、それほど深刻な影響を受けていない。飲食・サービス業界やホテル・旅館といった宿泊業界は緊急事態宣言が直撃して収益が激減しているが、分譲住宅の領域は、大都市の密集を避けるように郊外エリアで戸建て住宅が人気を博していたり、昨年後半からは、都市部をはじめとする分譲マンションの売れ行きが急速に戻って新築・中古とも堅調に推移していると言っていい。販売価格、成約価格は高水準を維持している。2021年は、年明け早々に第2次緊急事態宣言が発令され、その後3月7日まで延長されて景気悪化の懸念が強まるなかで首都圏・近畿圏の分譲マンション市場の見通しを探った。

 

不動産経済研究所の発表によれば、2020年の首都圏マンションの新規供給は2万7228戸と前年比12.8%減少した。昨年春の緊急事態宣言による休業要請で4月、5月と営業活動が実質ストップしたことが影響した。下期に挽回したものの1992年以来の3万戸割れとなった。一方で、平均価格は6083万円(前年比1.7%上昇)と1990年バブル期以来の6000万円台を記録した。東京23区では平均7712万円である。億ションは1818戸(前年比2.6%減)が供給された。億ションの過去最多は1990年の3079戸である。2020年の最高額は、野村不動産が事業主の「プラウド代官山フロント」で6億9000万円である。

 

近畿圏を見ると、昨年1~12月の総供給戸数は1万5195戸(前年比15.8%減)とこちらも供給を減らしたものの、1戸あたりの平均価格は4181万円(同8.1%上昇)で強含みとなった。3年連続でアップしており、1㎡当たりの単価ベースでは8年連続で上昇している。

 

2021年の供給見通しについて、同研究所では、首都圏・近畿圏とも増加すると予測している。首都圏で3万2000戸、近畿圏で1万8000戸と見立てている。

 

不動産調査会社の東京カンテイでの調べでは、2020年の首都圏供給は、ワンルームマンションを含めているため、不動産経済研究所よりも多く3万6535戸だが、前年比では14.5%減少しており、総合的な落ち込み幅は両社ともほぼ同じ。リーマン・ショック直後の2009年以来の低水準になっている。

 

ただ、こちらも首都圏の新築価格がバブル経済期を上回って、2020年1~12月の平均価格が6000万円台を超えた。底堅い住宅ニーズが東京など一定の人口規模を持つ都市に供給が集中したためだとしている。1990年のバブル期当時は東京だけでなく、千葉や埼玉、神奈川など周辺エリアでも大量供給だった。

 

 

中古マンション強含み 過去8年で価格は44.5%上昇

 

価格の高止まりは新築にとどまらず中古マンションにも波及している。新築供給がここ数年抑制気味だったこともあり、新築の品不足を補完する形で中古成約数が伸びている。

 

東日本不動産流通機構(レインズ)によると、首都圏2020年1~12月の中古マンションの成約件数は、新築供給と同様に昨年春の休業要請が響き、2年ぶりに前年を下回って3万5825件(前年比6.0%減)だったが、5000万円を超える価格帯の成約件数と比率がともに拡大しているのが特徴。平均の成約価格は5年連続で上がっている。1㎡当たりの単価ベースでは、過去8年間で価格は44.5%という驚異的な上昇率となっている。

 

前出の東京カンテイの調査でも、近畿圏では年間平均は2454万円と前年比5.3%の上昇幅を診見せて大阪市で3406万円(同4.1%上昇)と東京23区の3.6%上昇率を上回った。23区の価格は5766万円だ。ただ、コロナ禍で海外との往来ができずにインバウンド需要が衰えて投資ニーズの減退感が下半期から出始めているとも指摘している。

 

価格の上昇とともに分譲マンションを貸し出す際の賃料水準も切り上がっている。同社の調査では、2020年1~12月の首都圏平均賃料が1㎡当たり初めて3000円台の大台に乗せている。2019年比で6.8%の上昇である。東京都の平均は3661円(同5.2%上昇)で3年連続で5%前後の上昇率を維持。東京23区は同3831万円(同4.9%上昇)である。

 

消費者の購買力に格差 住宅業界にも分断の溝深く

 

ただ、コロナで個人所得が激減した人とそうではない人との格差が急速に広がりつつある。内閣府が2月15日に公表の2020年10~12月期の実質GDPは2四半期連続でプラス成長になった。しかし、緊急事態の再宣言、そして延期となり2021年1~3月期は再びマイナス成長となりそうだ。

 

新規の住宅着工件数は、新型コロナ影響を反映して2020年度は減少する見通しである。2021年度も引き続き在宅時間が増える社会情勢を受けて住まいの快適性を求める志向が強まり分譲住宅の建設需要が底堅く動くものの、コロナ前の水準にはまだ届かず回復は鈍い。

 

総務省が1月29日に発表した労働力調査では、2020年12月の完全失業率は前月比横ばいの2.9%となった。雇用者数は9カ月連続で減っている。ニッセイ基礎研究所は、経済活動の水準が戻っていないのに無理に雇用調整助成金で雇用を維持することで新規採用の抑制につながっている。景気は既に底を打っているが、失業率が再び上がる可能性を指摘する。厚生労働省が1月29日に発表した有効求人倍率は前月からほぼ横ばいで推移している。

 

不動産を買える者と買えない者。その分断の溝はコロナ禍でさらに深まっている。分譲マンションではないが東急住宅リースなどが東京・中目黒に開発した低層の高級賃貸住宅を見ると、その分断社会を垣間見ることができる。この高級賃貸は、スモールオフィスとショップを併設して共用施設にはテレワーク対応のスペースも用意している。月額賃料は最も高い住戸で60万円弱となるが、そんなプレミアム住戸など高額帯から着々と契約が決まっていく。総戸数70戸のうち8割が1月の竣工までに申し込みが入った。その入居者の平均年収は申し込みベースの4割ほどが2000万円を超えているという。

 

テレワークの浸透はいま一つ コロナが収束すれば大都市に賑わい戻る

 

住宅・不動産会社は、購買意欲のある属性にスポットを当てた事業戦略が今後の肝になると見られる。ただ、その中で現状最も見通しづらいのがリモートワークの定着が本格化するかどうかだ。足もとは、在宅勤務によって都心に住まいを持たずに郊外に都市部よりも安くて仕事がしやすい広い戸建て住宅やマンションを選ぶといった論調が広がりつつある。

 

とはいえ、大東建託が1月27日に発表した「新型コロナウイルスによる意識変化調査(第3回)」を見ると、「4月以降のテレワーク実施率」は21.2%となり、9月の第2回調査に比べて5.1ポイント低下している。「テレワーク希望率」(36.2%)も減っており、テレワークを実施している人は一部限られた属性である様相を浮き彫りとする。「地方への引っ越し検討」(10.0%)と「都会への引っ越し検討」(6.9%)では地方派に軍配が上がったものの、居住拠点を郊外に移す動きは都心派と郊外派の差が縮まっていることもわかった。

 

新型コロナウイルス感染の影響を受けて、今後、事業者の住宅供給立地がこれまでの志向から離れていくのかにも注目すると、足もとでは職住近接で駅に近いというポイントは変わっていない。マンションは徒歩8分以内、戸建て住宅は徒歩15分が中心になっている。マンションは駅に近いほどよいという価値観は不変である。仮にコロナで郊外志向が強まったとしても、その郊外主要駅の周辺に新規供給が集中するのは間違いない。

 

前述したように都心など大都市の住宅需要は依然としておう盛。ワクチンの接種など今後コロナが鎮静化に向かえば、オフィスへの出社や街中で消費行動が活発になることで都心居住があらためて見直され、低い金利も手伝い富裕層による投資需要が盛り上がり、首都圏は東京に、近畿圏は大阪へと都心回帰の動きが今年中に再び活発化する可能性がある。