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不動産レポート



コロナ禍で支援策が相次ぐ 住宅ローン減税拡充、遠隔地から物件探し

床面積50㎡未満も減税対象に

 

2021年も新型コロナウイルス対策でスタートを切った。菅義偉首相は1月4日、年頭の記者会見で東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県を対象に緊急事態宣言を再び発令する方針を表明した。7日から実施。期間は1カ月程度だ。2度目の緊急事態宣言により、景気回復時期が後ずさりすることは否めない。不動産市場の見通しも予断を許さない状況が続く。ただ、コロナ禍にあっても不動産ビジネスの好機はある。昨年12月に自民・公明両党は、新型コロナに対応する与党税制改正大綱を決定した。不動産需要を下支えすることが狙いだ。

 

 

不動産市場には今、政府・中央銀行が一体となった緩和マネーが国内外から流れ込んでいる。このためコロナ禍で景気の良さをまったく感じないにもかかわらず、低金利を背景に不動産の買い手は強気だ。市中に優良物件が出てくるのを手ぐすねを引いてまっている。その一方、売り手側はコロナ禍で買い叩かれると慎重姿勢で売り物件が少なく品不足感が強い。

 

税制改正大綱では、新型コロナの影響で住宅の販売が落ち込まないよう支援するラインアップを取りそろえた。主なものが住宅ローン減税のてこ入れだ。この住宅ローン減税は、10年間にわたり年末のローン残高1%を所得税や住民税などから控除する仕組みだが、消費税率が8%から10%に引き上げた際に13年間に拡大する特例措置を決めた。その13年間の特例措置が受けられる期間を2022年末まで2年延長して税を優遇する。マンションなど分譲住宅は、2021年11月までに契約して2022年12月末までに入居する人が対象となり、注文住宅では、2021年9月までに契約した場合に適用となる。

 

今後の要注意点としては、住宅ローン控除率1%について、2022年度の税制改正で見直される公算が高くなっていることが挙げられる。日銀が2016年2月にマイナス金利を導入して久しいが、金利が1%を下回る住宅ローン商品が増えている中で、控除率1%では過度な恩恵を受けているとして財務省が見直しを求めているためだ。

 

そうした中で、今回の税制大綱の目玉の一つが住宅ローンの対象になる物件が増えることが挙げられる。住宅ローン控除の対象面積を緩和した。住戸の最低床面積の要件は、従来50㎡以上としていたが、これを40㎡以上に引き下げける措置を講じた。少子高齢社会に伴う人口減少の中で、単身世帯や夫婦二人世帯、ディンクス世帯が増えていることで30~40㎡台のコンパクトマンションの需要が増えていることに対応するためだ。

 

50㎡未満の需要取り込み熾烈に 若年層、未婚者中心に掘り起こし

 

業界団体の不動産流通経営協会(FRK)は、かねてから一定の所得水準に満たない若年層や単身者、少人数の中堅世帯、高齢世帯の住宅取得を促すために最低床面積の要件を50㎡から40㎡に引き下げることを求めてきた。そのFRKが2018年にまとめた「『ひとり住まい』の持ち家ニーズ調査」によれば、50㎡未満の住宅の購入を検討しなかった理由として、「自分には狭すぎる」との回答が全体の52.8%と半数を占めているものの、「住宅ローン控除の適用外だから」(21.6%)が一定の割合を占めている。

 

「当初は50㎡未満の物件がよかったが、住宅ローン控除の対象外なので、50㎡以上の物件を購入した」(9.1%)と全体の1割程度を占めている。

 

面積要件が緩和された場合の「購入意向の変化」も聞いており、住宅購入を検討している人の全体反応としては「とても購入意欲が高まる」(7.3%)と「やや購入意欲が高まる」(41.4%)を合わせると48.6%と半数近い。「50㎡未満検討あり」に限って見れば、「とても購入意向が高まる」(8.5%)と「やや購入意向が高まる」(47.5%)を合わせると6割をうかがう。購入意欲が高まっているのが特徴的だ。

 

50㎡未満の購入者の属性では、男性と比べて女性は6.2歳平均年齢が高くなっている。男性は「25~34歳」(46.1%)の若年層が最も多く、次いで「35~44歳」(29.9%)とほぼ3割を占めた。女性は「35~44歳」(37.6%)、「45~54歳」(27.1%)がトップ2だ。男女いずれも、50㎡未満の購入者は未婚者が圧倒的に多く男性が7割、女性が9割近い。

 

コンパクトタイプを検討する属性の購入意欲を税制改正が刺激しそうだ。広い面積を必要としないが、住宅ローン控除が受けられないためマンション購入をためらっていた人の取り込みに力を入れる分譲マンション開発事業者も増えそうだ。

 

これまで地価と資材価格の高騰で一般的な分譲マンションの販売価格も値上がり基調が続き消費者の買いづらさが高まっていただけに、専有面積を縮小して販売価格を下げる戦略が取りやすくなる。既に三井不動産レジデンシャルや三菱地所レジデンスなど大手は参入済み。コンパクトマンションで独自ブランドを持ち展開しているが、そうした動きに拍車がかかると見られる。

 

前述のFRKの調査では、住宅に対する考え方として「資産価値」に着目する項目も上位にある。ただし、小規模物件を転売する投資目的を防ぐために、住宅ローン控除が受けられる対象として1000万円の所得制限を設けている。

 

都市部から地方までDXで対応へ 国内外からどこでも物件契約の時代

 

収まらないコロナ禍を受けて、今年はデジタル対応が一層注目を浴びる。政府は9月1日に「デジタル庁」を創設する予定だ。2021年の国会でデジタル庁設置の法案が審議される。デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応を強化して世界での遅れを挽回する菅首相の肝煎り政策。住宅・不動産業界にもその余波が押し寄せる。対面が義務付けられている不動産取引の重要事項説明が業法改正で申し込みから契約までオンラインで済ませられるようにするため、押印・対面・書面原則の撤廃に関する一括法案も審議される。

 

不動産テックでGAテクノロジーズグループのRENOSY X(リノシークロス)では、すでに投資用マンションの販売部門でオンライン重説と電子契約を導入しているが、実需向けにでもシステムを作って不動産ニーズを広く取り込んでいくという。

 

不動産売買がオンラインで契約できるようになれば、コロナ禍により、人との距離を置いて密を避けることが求められることに対応でき、かつ郊外物件の人気化が進んでいることで遠隔地の取り引きもしやすくなる。国内だけでなく、国際間の移動が制限される中にあって海外から国内物件の物色もしやすい。

 

また足元では、東京都(主に23区)からの転出者が増加しており、「転出超過」が続いている。感染対策のために導入したリモートワークが広がったことが要因だ。地方移住がフォーカスされている。総務省の住民基本台帳人口移動報告によれば、2013年に集計を始めて以降、緊急事態宣言発令後の昨5月に東京都で初めて転出超過に転じた。6月にいったん転入超過に戻ったものの、7月以降は5カ月連続で転出超の状態となっている。

 

政府もこの流れを後押しし、頓挫しかけていた地方創生につなげたい考えだ。東京23区に在住する人が地方に移住した場合、最大100万円を支給する支援も講じる。国土交通省は、「グリーン住宅ポイント制度」を創設した。省エネ性の高い住宅を購入者した人にポイントを付与する。1ポイント1円換算とし、新築を購入すると40万円分、東京圏から地方に移住するなどで最大100万円分という仕組みだ。

 

ポイントは家電や家具などと交換できる制度であるが、リモートワークに対応したスペースを作るなどのリフォームにも充当できる。とりわけ若い世代はリモートワークを支持している。引き続き都区部から郊外に若年層が流れるかが焦点。今後の住宅・不動産市場を見通すうえでの羅針盤だが、2021年は、大都市部でのコンパクトマンションと東京近郊でリモートワークに対応した広い専有面積帯のマンション・戸建て住宅が需要を集めそうだ。