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不動産レポート



2021年不動産市場を展望 コロナ禍で外資勢が取引けん引

東京・大阪・福岡、需要ひっ迫感が強まる

 

新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた2020年。2月に横浜に寄港したダイヤモ ンド・プリンセス号のコロナ感染がクローズアップされ、4月7日には政府による緊急事態宣言が7都府県で発令され、16日には全国に拡大した。緊急事態宣 言によって不動産店舗は営業休止や開店休業状態に追い込まれ、それが響いて不動産取引は急減した。ただ、緊急事態宣言の解除後に不動産取引が回復に向か い、不動産の価格水準も新型コロナ当初に暴落説が席巻したのとは裏腹に価格は高止まりが続いている。経済活動を見ても、コロナ禍で企業収益が急減した会社 が多いが、半面、コロナ禍の影響を受けずにむしろ収益が拡大する企業もあり、業種・業態で明暗がくっきりと分かれた。そうした中で2021年の不動産市場 を展望する。

 

 

日本の不動産市場は、コロナ当初の悲観論が少ないのが現状である。コロナ感染の影響が 欧米に比べて軽微であることからグローバル投資家が「有事の日本買い」として日本の不動産をセーフマーケットとして資金を振り向ける流れが強まりそうだ。 とりわけ海外投資家は、安定した厚いと利回りを評価する。海外投資家が日本で注目するエリアは、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)、東京23 区、大阪中心部、首都圏、福岡県の順番で挙げているようだ。特に外資の大阪に対する意欲が高まっている。

 

不動産サービス大手のJLLによれば、東京の2020年1~9月期の不動産投資取引額 が世界1位と最も多かった。外資勢がけん引しているといい、海外投資家比率は38%と約4割を占めている。リーマン・ショック前の2007年の不動産ファ ンドバブル期の34%を上回る外資マネーが流れ込んでいる。これを裏付けるかのように、米手投資ファンド大手のブラックストーン・グループが日本国内のオ フィスビルや商業施設などを1100億円ほど投じて一括購入したと12月3日の日本経済新聞も報じた。

 

オフィス賃貸市場を見ると、コロナ禍でリモートワーク(在宅勤務)が大手企業などで普 及してきたことで、オフィス不要論の声が上がるものの、オフィスがなくなるわけではない。オフィス不要論は極論。本社機能の重要性は変わらず、サテライト オフィスやワーケーションが普及してオフィス戦略が変容するだけで使われるオフィス床面積が大きく変動することはないとの見方もある。

 

実際、不動産テックのGAテクノロジーズ(東京都港区)は、出社とリモートワークを組 み合わせたハイブリッド型の働き方を採用するとともに、本社オフィスの増床を11月に発表した。社員数の増加とともに、企業文化としてコミュニケーション の重要性に対応したものだ。人の距離を置くソーシャルディスタンスが叫ばれる中で、1人当たりのオフィススペースの拡大が必要だと訴える声も上がる。1人 当たりの空間を拡大する場合、三菱地所リアルエステートサービスによれば、約200人規模の会社で検証したところ、オフィスの床面積を2.5倍に拡大する 必要があるとしている。

 

オフィス賃貸市場を見ると、足元では賃料下落局面にあり、東京都も下落局面に突入して いるが、総体的に大幅な賃料下落が見られない。JLLの9月末時点の調査によると、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のAグレードオフィスの 賃料は1坪当たり3万9510円(前年比0.1%下落)とほぼ横ばい。空室率は0.7%にとどまっている。

 

特徴的な点を挙げると、エリア別で賃料水準を見た場合に新宿/新宿(前四半期比 2.1%下落)は、丸の内/大手町(同0.9%下落)、六本木/赤坂(同1.8%下落)の各エリアに比べて賃料の下落幅が大きい。IT企業がオフィスを解 約する動きもあるが、渋谷駅前の再開発により急上昇していたものの、コロナ禍でその反動で下落に転じている。今後は、景気動向と需要減退で空室率が若干上 がるが、2021年の新規供給量が少ないため、空室率と賃料水準の悪化に歯止めがかかり、大きな調整局面は迎えないとしている。

 

外資勢は水面下で大阪・福岡の投資に虎視眈々

 

オフィスビルの新規供給量を5年スパンで見ると、東京では2010~2014年140 万㎡、2015~2019年で190万㎡、2020~2024年に160万㎡で推移する見通しだが、大阪と福岡はこれまで新規供給がなかったが、 2020~2024年にかけて新規供給が増えることで大阪・福岡の新規供給量はこれからが本格化する見通しだ。

 

中長期スパンで見て大阪の新規供給がなくなることはない。2022年3月に「大阪梅田 ツインタワーズ・サウス」(延べ床面積7万8300㎡)が竣工し、2024年には「(仮称)うめきた2期地区再開発事業南街区賃貸西棟」(同9万5970 ㎡)が完成するなど22年、24年に大量供給される。福岡も大阪に近いイメージで21年、22年、24年に博多駅周辺と天神周辺での新規供給が本格化す る。大阪と福岡の投資額は年々増えている。大阪中心部と福岡県に対する外資投資家の注目度は高い。

 

JLL関西支社リサーチディレクターの山口武氏は、「福岡の投資に関しては、正確に言 うと、潜在的に伸びる市場で投資をしたい人が列を成しているがモノが少ない。大阪も外資系が積極的に投資をしており、水面下で検討している物件は圧倒的に 外資系が多い。外資の方が日本の地方都市を冷静に中立的に見ているのではないか」と説明している。

 

外資にとどまらず不動産大手も投資機会を窺う

 

国内勢の機関投資家の投資姿勢にも変化がないことがわかった。日本不動産研究所が銀行 や生損保、アセットマネージャー、開発事業者などを対象に「新型コロナと不動産投資市場」をテーマにしたアンケート調査したところ、現状としてはネガティ ブな影響を受けており、現状が当面続くとの見方が最も多いものの、「不動産投資スタンスをどのように変化させたか」との質問には「特段の変化はない」が 77.8%を占めており、「投資を控える姿勢が強まった」は2割にとどまった。向こう1年間の投資姿勢でも、「新規投資を積極的に行う」92%が大多数を 占めている。

 

こうした状況を裏付けるような取引も最近は活発になっている。三井不動産は11月27 日の取締役会で東京ドームをTOBで完全子会社化することを決めた。子会社化後に読売新聞グループに東京ドーム株式の20%を売却するとともに東京ドーム と資本業務提携を結ぶことを決定した。東京ドームは、商業施設やホテル、アトラクションなどを運営するがコロナ禍が直撃。また、音楽業界大手のエイベック スも都心にある東京本社ビルの売却を検討していることも明らかとなった。NECも自社で保有する相模原事業場の土地を不動産大手のヒューリックに売却して リースバック契約で賃借して事業を行うと発表している。

 

企業各社はコロナで業績が赤字に転落するなど立て直しが急務となっている。それに伴い 経営資源の有効活用と財務体質の強化を図るために保有資産を手放す動きが顕在化している。これから2021年3月決算期に向けて、つまり年度末に向けて企 業不動産の放出も増えそうだ。国内外の機関投資家による資産取得競争による品不足感が強まり、不動産価格が高い水準で取引が続く場面が続きそうである。

 

低金利の状況も変わらない。日本だけでなく、世界各国が金利の引き下げと大規模な財政 出動を行っている。向こう数年間は、長期金利が上昇する可能性が少なことから不動産に投資資金に流入してくるとの見立てが強まっている。