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不動産レポート



コロナ禍のマンション 富裕層と投資家が存在感示す市場に

都心・大都市部で資産価値の優位性は変わらず 

 

新型コロナウイルスで不動産市場が構造的に変わったのか。密を回避するために都心から郊外に需要がシフトし、ドーナツの輪が広がるように価格も郊外に向かって上昇を始めるのか。緊急事態宣言を受けて不動産取引が4~6月に凍り付いてマーケットが急落すると、さまざまな不安が極まった。経済活動の停滞で不動産需要が急減、不動産価格が下落に向かうといった空気が一気に漂った。しかし、足元を見るとそうではない。価格は高水準で推移し、特に中古マンションの成約件数は堅調に推移している。新築マンションの発売戸数も徐々に回復傾向に向かい始めた。新型コロナの世界的大流行、いわゆるパンデミックはなお収束が見通せないものの、不動産に対する需要は地下のマグマのように胎動している。。

 

 

供給の分布エリアはコロナ前とほぼ同じ

 

新型コロナウイルスの影響は確かにあった。新築マンションの発売戸数は激減し、中古マンションでも成約数に弱含みの影響が出た。不動産経済研究所の調査によると、首都圏の新築マンションの発売戸数は9月までの上半期で1万戸を割り過去最低水準を記録した。

 

政府が4月7日に緊急事態宣言を発出し、同16日には全国に拡大。休業要請や外出自粛により、事実上、分譲住宅の営業活動が困難となった影響を受けた。マンションギャラリー、モデルルームは閉鎖状態に追い込まれ、緊急事態宣言が解除された5月25日まで新規供給ができなくなったことが上半期の数字に表れている。デベロッパー大手は、東京都心部で高額マンション向けの用地取得を見合わせて価格の動向を探ることに注力した。

 

ただ、不動産調査会社の東京カンテイでは、「その後、7~9月の供給戸数は前年の8割程度に回復。都心高額物件の国内需要が戻ってきた」と分析している。

 

中古マンションを見ると、4~6月の供給状況は約2割減少したが、7~9月に戻り基調となり、新築よりも復活ペースが速いのが特徴だ。同社の調査で行政区別供給戸数の分布を見ると、6月までの3カ月間で中古マンション300戸以上を供給したのは東京23区以外では埼玉県川口市と千葉県船橋市だけだったが、極端に供給立地が縮む状況には陥らなかった。7~9月にはコロナ前の水準に近づき、東京23区の中古供給の分布は元に戻っている。

 

一方、新築戸建て住宅は、マンションと違う様相を見せた。4~6月に供給戸数が増加し、7~9月に減少している。コロナ禍で密を避ける行動から戸建て住宅が好まれたと推察できる。例えば、東京では八王子市や町田市、神奈川県では相模原市南区や中央区、藤沢市、埼玉県では川越市や所沢市などの近郊外で供給が増加した。ただ、7~9月になると、従来から戸建て住宅が中心の郊外にあっても4~6月の勢いは低下しているのが特徴だ。これは4~6月に一気に供給しすぎた反動が出たとみられる。

 

東京23区の新築・中古、坪300万~200万円以上の市場

 

同社の調べによると、住宅の供給戸数の分布状態にとどまらず、物件価格についてもコロナ前との比較でほぼ同じ状態になっている。つまり、都心部や大都市部の価格帯が高く、郊外にいくほど安くなるという現象に変わりはない。コロナ禍で郊外に注目が集まるといっても、資産価値的に郊外の物件価格が上昇しているわけではなさそうだ。

 

不動産経済研究所によれば、新築マンションの1~9月の平均価格は6085万円(前年期比1.3%上昇)となり、中古マンションも東日本不動産流通機構(レインズ)の7~9月期を見ると、平均3656万円と前年同期比5.8%上昇している。コロナ禍でも価格が高い水準で安定推移しているのが特徴だ。

 

東京23区を見ると、新築マンションの1~3月の1坪あたりの坪単価は足立区、北区、板橋区、江戸川区を除いて300万円以上が占めており、その周辺エリアは坪200万円以上が取り巻いている。4~6月、7~9月もほぼ同様の傾向となっている。都区部以外では、東急田園都市線沿線の横浜市青葉区や、京浜東北線沿線の神奈川県川崎市川崎区、武蔵小杉駅のある中原区でも300万円以上である。

 

中古マンションを見ると、1~3月の東京23区は、練馬区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区を除いて坪200万円以上となった。都下でも武蔵野市、三鷹市、国分寺市で200万円以上だった。「緊急事態宣言中の4~6月でも価格を変えずに市場に滞留し続けたことで大きな変動が起きなかった」(東京カンテイ)。坪単価の分布状態についても現状は1~3月の状態にほぼ戻し、今後の価格動向については下落の気配が感じられないとしている。

 

こうしたマーケット感から、マンション市場は新築・中古とも今後の下落局面を待ち受けていても思うように価格は落ちてこないとの見立てがじわりと増え始めている。

 

一方、新築戸建て住宅の価格は、中古マンションの坪単価と似た水準で推移し、7~9月に都市部でやや価格が弱含んだものの、戸建て住宅の供給スタンスは積極的な傾向が続いており、郊外都市の坪単価は上昇も下落も見られない。

 

政府・与党が需要下支え政策を強化へ

 

このようにコロナ禍であっても住宅市場が崩れていないのが現状である。その堅調さを失わせないために政府・与党も需要を下支えする体制を強化する。住宅ローン減税の控除をテコ入れする。住宅ローン控除とは、毎年、年末時点のローン残高の一部が所得税や住民税から控除される仕組み。昨年10月に消費税率を8%から10%に引き上げた際に通常の控除期間を3年延ばして13年間控除が受けられる特例措置を設けたもので、今年12月末までに入居した人を対象とするが、コロナの影響にかかわらず一律に2021年12月末まで延期する案が取りざたされている。住宅の業界団体は2022年12月末まで2年間の延長を求めている。12月決定予定の2021年度与党税制改正大綱に具体策を盛り込む予定だ。

 

不動産大手も強気の構えを見せている。住宅・不動産専門紙の週刊住宅では、野村不動産取締役専務執行役員住宅事業本部長の松尾大作氏が「コロナ禍でも販売は好調で、需要は底堅く、今後も住宅事業にとってプラスの状況が続く」との見方を報じている。その理由については、共働き世帯の増加や低金利の継続のほか、コロナ禍を受けてより良い住宅環境を求める賃貸居住者が分譲マンションにシフトしてくるというものだ。契約とモデルルーム来場者数は増加傾向にあるとしている。

 

日銀は11月4日、9月実施の金融政策決定会合の議事要旨を発表したが、その中で政策委員は、国内景気がコロナ禍で厳しい状態にあるものの、経済活動が徐々に再開していく中で持ち直しつつあるとしている。4~6月に景気が底打ちしたとの認識を数人が示していた。消費の持ち直しペースが緩慢といった懸念の声もあるが、1人10万円の特別定額給付金や、企業の資金繰り支援などが下支えしたとの見方もあった。

 

今後のマーケットは、景気の底入れ感が本格化するかが鍵を握るが、物件の買いにくさの解消も重要になる。前述の東京カンテイによれば、マンションの価格が年収の何倍に当たるかを算出したところ、直近2019年の新築は全国平均で8.19倍となり、最も倍率の高い東京都では13.26倍だ。築10年の中古では全国平均5.52倍、東京都は10倍を突破して10.96倍となっている。2020年は、コロナ禍で個人所得が目減りした人が少なくない中で物件価格が高水準にあるとなれば年収倍率がさらに拡大していることが推察できる。不動産市場は、これまで以上に富裕層と投資家などが存在感を高めるマーケットとなりそうだ。