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不動産レポート



コロナ禍、東京五輪開催に黄信号、住まい選びの基準が変わる可能性も

分譲マンション発売数が激減

 

緊急事態宣言解除後に新型コロナウイルスの感染が再び増加しており、東京都は7月に入ってから感染者数が100人を超える状況が続いている。6月26日以降は、連日50人を超えて新規感染者を出している。都内の感染者数は、4月17日の206人をピークに減少してきたが、再び増加傾向に転じている。新型コロナウイルス感染終息は相当に長引きそうだ。2013年9月に開催が決まった東京五輪・パラリンピックは、これまで東京を中心に地価を押し上げて不動産好景気を演出してきたが、その東京五輪開催は1年延期され、今では開催自体が危ぶまれている。分譲マンション市場も、新型コロナウイルスの影響で4月~6月まで営業できない状況となった。コロナ対策に追われる中、早くも2020年上半期を終えて今年の折り返し。コロナ禍の分譲マンション市況を探ってみた。

 

新築マンションの発売戸数が急減している。不動産経済研究所によれば、首都圏の4月発売戸数は前年同月との比較で51.7%減少して686戸となり、過去最少の供給戸数を記録した。5月の発売戸数では393戸と前年同月比82.2%と大幅な減少となった。この記録的な売れなさの要因は、もちろんコロナ対策による休業要請や外出自粛要請である。

 

 

東京五輪・パラリンピックで選手村として使われた後に、分譲マンションとして売り出しを始めている「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」(分譲街区4145戸)にも影響を及ぼしている。コロナの影響で3月の発売を延期したが、東京五輪・パラリンピック1年延期が決まったことで当面の営業中止を迫られる事態に陥っている。

 

晴海フラッグの公式ホームページによれば、緊急事態宣言の解除に伴い6月6日から電話での問い合わせ対応などパビリオンでの業務を一部再開しているものの、入居予定時期などに変更が出るため、パビリオン見学会が一時休止となっている。予定していた販売時期も延期しており、再開の時期は決まり次第ホームページ等で知らせるという。

 

晴海フラッグは、第1期で940戸を売り出して893戸に申し込みが入った。このように既に購入している人もいる中で、購入者は営業担当から入居の延期に同意するか、契約を撤回するかが選択できるとの連絡を受けたといった声がSNS(交流サイト)でも見られる。

 

この停滞は新築にとどまらない。中古マンション市場でも成約件数の落ち込みが著しい。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)のデータによれば、首都圏の4月成約件数は1629件となり前年比52.6%、5月が1692件で同38.4%とそれぞれ大幅な落ち込みとなった。4月の52.6%減少は東日本レインズ発足(1990年5月)以来最大の下げ幅である。

 

地価上昇から下落・調整局面は必至

 

相続税や贈与税の算定基準となる2020年分の路線価が国税庁から7月1日に発表されたが、全国平均は前年比1.6%上回って5年連続で上昇した。これは、国土交交通省が3月に発表した公示地価と同様に、今年1月1日時点を基準に算出したもので、つまり、コロナ影響を受けていない指標となっている。このため、訪日客需要などの影響を映し出しており、都市部で上昇が続いたほか、地方への波及が顕著に出ている。

 

全国最高額の路線価は、35年連続で東京・銀座の鳩居堂前となり、1㎡当たり4592万円だった。都道府県庁所在都市で上昇したのは、前年から5都市増えて38都市となり、上昇率トップは沖縄・那覇市の40.8%、次いで大阪市(35.0%)、横浜市(34.5%)と続いた。横ばいは5都市減って8都市だった。沖縄は都道府県別でも上昇率1位となり、前年比10.5%アップして3年連続で首位をキープした。東京都は5.0%の上昇だった。

 

ただ、2021年の路線価はコロナ影響を映し出す格好となりそうで、コロナの影響により、地価動向が大幅に落ち込んだ場合は、路線価を減額修正できる措置を国税庁が検討しているようだ。

 

今年9月に発表予定の7月1日時点の都道府県地価調査でコロナ影響を確認できそうだが、国土交通省の地価LOOKを見ると、全国主要都市100地区を対象とした2020年第1四半期(1月1日~4月1日)で23四半期ぶりに下落率が発生したことが確認でき、上昇を示したのは73地区となり、前回1月1日時点の97地区から大幅に減らしている。今後さらに下落地点を増やしていきそうだ。

 

所得環境の悪化は、分譲市場にも波及

 

新築・中古とも休業要請・外出自粛などが大きく影響しているが、今後の焦点は、緊急事態解除後に消費者の足が戻ってくるかである。企業業績が落ち込んでいる中で、サラリーマンの所得環境は今後厳しくなると見られている。既にサービス・飲食業では、倒産に追い込まれたり、リストラや雇止めといった状況が見られている。

 

日銀が7月1日に発表した6月の短観(全国企業短期経済観測調査)では、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス34と、前回調査の3月のマイナス8から26ポイントも悪化し、6四半期連続で悪くなっている。これはリーマン・ショックで落ち込んだ2009年6月(マイナス48)以来11年ぶりの低水準となり、下落幅は過去2番目の大きさとなった。DIは業況が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いて算出している。

 

日本経済新聞社が各企業の夏のボーナスを集計して報道しているが、全産業の平均支給額は前年比5.37%減の80万7835円だった。特に製造業での落ち込み幅が大きかったとし、鉄鋼業では23.99%減少した。このほか、移動制限の直撃を受けて航空会社の全日本空輸(ANA)は50%減の43万4711円となり、元気寿司では59.07%(29万934円)と減少率で全体の首位となっている。

 

こうした個人所得の悪化が続けば、住宅・不動産の買い意欲の減退につながり、需給バランスから考えてこれから不動産価格も下落局面に向かうと考えられている。厚生労働省が7月1日に発表した生活保護申請件数を見ると、直近4月の速報ベースで2万1486件となり、2カ月続けて2万件を超えている。前年同月との比較では24.8%増加している。今後さらに増加することが予想されている。

 

テレワーク浸透で郊外も適地に!?

 

景況感を観測する上で悪材料が引きも切らない。しかし、緊急事態宣言解除後の不動産大手の反応としては、休業要請中も含めて購買欲のある消費者が一定数存在することも確認できているといい、コロナ以前の状況に戻っているわけではないが市場が総崩れになると感じている不動産会社は限られている。財閥系の不動産会社からは、「緊急事態宣言中も資料請求やエントリーの状況は従来通りだった。需要に大きな変化はないと見ている」との声も聞かれる。

 

また、中小不動産会社では、巣ごもり中であっても販売が上々だったと声を上げるところもある。埼玉県や千葉県を中心に分譲マンション事業を展開するアンビシャス(東京都新宿区)では、「これまで郊外に吹いていた向かい風が、これからフォローになることに期待している」と話している。コロナ禍で急速に普及したテレワークが定着すれば、職住近接という一辺倒な住まい選びではなく、職場から少々距離があったとしても、毎日会社に通うことがなくなれば都市部よりも価格が安くて広い郊外に住戸を買い求めて自宅にテレワークスペースを確保するといった流れに期待している中小デベロッパーも少なくない。

 

緊急事態解除後は、どの販売現場でも内覧を予約制にして消毒やマスクを備え、接客ではアクリル板を介しての対応にしている。リモートを活用した営業活動も導入。新築・中古の販売現場では、マンションの物件見学から引き渡しまで非対面で完結できるシステムの導入が相次いでいる。なるべく相対での接客を減らしながら成約に結び付ける。

 

三井不動産レジデンシャルでは一部の販売センターで試験的にオンライン接客を指導した。東急リバブルでも、自社開発した分譲マンションと販売受託した新築マンション、新築戸建て住宅の販売活動にオンライン接客を導入。消費者は自宅にいながら販売スタッフとの対話で物件説明を聞いたり、モデルルームを見学できる。資金計画や住宅ローンの相談にも乗る仕組みとなっている。

 

いずれにしろ、国内に限らず欧米諸国などの感染状況も今後の動向に影響するだけにコロナ禍で向こう半年、1年を見通すことは難しいのが現状である。だが、不動産価格が下落に向かったとしても、それは、これまで高くなりすぎた調整局面として捉えることもできる。そもそも不動産市況は上がれば下がるという循環型のビジネスである。不動産は、株とは違い値崩れすることがあっても紙くず(価値がゼロ)になることはない。場所や物件にもよるが、一定の資産性を維持できることを考えれば慌てて市況判断することもないであろう。これから絶好の買い場が必ず訪れるはずである。