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不動産レポート



コロナ対策、政府233.9兆円の事業規模

入居者の家賃支援に最大600万円

家賃支援と資金繰りの支援に重点 

 

新型コロナウイルスの感染終息がいつになるか見通せない中で、日本政府は5月14日、39県を対象に緊急事態宣言を解除し、25日には東京や北海道など残りの都道県も解除した。その全面解除の判断は、「直近1週間の10万人当たりの新規感染者が0.5人以下」であることなどを挙げるが、解除後に北九州市で集団感染(クラスター)が発生するなど第2波、第3波の感染流行に戦々恐々だ。東京では人出が増えて感染者がゼロに向かう兆しも現状では見られない。外出自粛や休業要請で疲弊した中小事業者が倒産や廃業に追い込まれるニュースも後を絶たない中で、景気の底割れを防ごうと政府は2020年度補正予算を組んで対応する。4月30日の1次に続く2次も6月12日に成立した。

 

1次・2次の補正予算を合わせると、233兆9000億円の事業規模となっている。2次補正の一般会計歳出総額は1次を上回り補正予算として過去最大の31兆9114億円となった。これら補正予算の主な内容は、企業の運転資金を支援する「持続化給付金」であったり、政府系金融機関や民間金融機関の無利子・無担保融資の拡充、入居者の家賃を補助する「家賃支援給付金」、国民一人ひとりに一律10万円を支給する「特別定額給付金」などが主なメニューとなっている。

 

持続化給付金は、2020年12月まで1年間のいずれかの月の売り上げが半減したり、3カ月の平均で30%売り上げを減らした場合に中堅・中小企業に最大200万円を支給し、個人事業主にも100万円を支給する。売り上げの大幅ダウンを受けて店舗賃料などの支払いに窮する事業者には「家賃支援給付金」として半年間で最大600万円を支援する。

 

企業の資金繰り支援では、政府系金融機関や民間金融機関の無利子・無担保融資を大幅に拡充した。中小・零細企業向けでも、日本公庫や商工中金、民間金融機関による無利子・無担保融資の貸し付け上限額を引き上げるなど融資規模を拡充することで企業の財務基盤の強化につなげる。

 

新たに借り入れの一部を資本と見なす劣後ローンも供給することで、中小にとどまらず大企業の救済策も講じられた。企業の財務基盤強化により大企業の倒産を防ぐのが狙いだ。コロナ禍で打撃を受けた企業が借金で負債を膨らませてしまうと、取引先銀行などは財務状況が悪化したと判断して追加の融資に応じないケースを想定しての対応である。これまでの政投銀は、国の保証を受けて行う危機対応業務での資金供給について、通常の融資と社債の買い取りに限定されていたが、劣後ローンにより資金の調達ができれば、負債が目減りして金融機関から追加の融資を受けやすくなる利点がある。

 

 

景気の悪化、金融政策で対応

 

景気の回復には経済活動の正常化が欠かせない。外出自粛・休業要請の真っただ中の経済指標は景気の落ち込みを印象付けた。経済産業省が5月29日に発表した4月分の鉱工業生産指数速報値(2015年=100、季節調整済み)は前月比9.1%低下して87.1と3カ月連続での低下となった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う工場停止で部品調達が滞った影響が大きい。同省では、生産の基調判断を「低下している」から「急速に低下している」に変更した。指数が上昇した業種は生産用機械工業の1業種のみだった。

 

日銀も政府との二人三脚により企業が倒産しないよう追加の金融緩和政策で対応する。日銀は、社債の買い入れ拡大や国債購入を積極化させることで企業を支える姿勢を見せている。主に大企業が発行する社債・コマーシャルペーパー(CP)の買い入れの上限を約3倍拡大して20兆円としたほか、国債の買い入れ枠80兆円の上限を撤廃した。コロナ支援で増発する国債の需給バランスの悪化から長期金利が上昇することを抑えるのが狙い。

 

ただ、商工リサーチや帝国データバンクなどの信用調査会社によれば、コロナ倒産に歯止めがかからず右肩上がりで増えている。ホテル・旅館といった宿泊業界や飲食店といった中小零細企業にとどまらず、東証一部上場会社の法的整理も顕在化するなどで連鎖倒産が懸念されている。

 

商業施設のテナントや賃貸住宅の入居者からの賃料減額要請も相次いでいるようだ。これに対し、都内のある不動産管理会社では、「管理するビルに入る複数の居酒屋から家賃の値引き交渉があった」と明かす。不動産オーナーの対応としては、値引きには応じない、1カ月分だけ交渉に応じる、最大2021年7月まで滞納家賃の支払いを猶予する、といった具合にさまざまだ。不動産経営の環境がじわりじわりと悪化している。オフィスビルについても、今後、新規のテナント誘致活動の遅延などで稼働率の低下などが想定され、コロナ後の回復に向けての賃料増額が見込みづらく賃料収入が目減りする可能性がくすぶっている。

 

不動産の潜在需要は強い

 

そうした中、法務省は5月下旬に新型コロナウイルス感染拡大の影響で家賃が支払えなくなった事業者や物件オーナーの相談にQ&A形式で答えるページを同省サイト内で、新型コロナウイルスの影響で賃料の支払いが滞っても、「新型ウイルスの影響で賃料が払えなくなったという事情は、信頼関係が破壊されていない方向に作用すると考えられる」と説明している。つまり、一般的には滞納が3カ月続くと不動産オーナーは立ち退きを求め始めるケースが目立つが、今回の見解では、その立ち退き請求が認められないことが多いとの見解を示している。コロナ影響を受けての対応がいっそう厳しさを増しそうだ。

 

今後の不動産業界への影響はどうか。景気悪化も、その波が到達するまでに時間がかかる遅効性の強い業界であるだけに客観的なデータがそろうのはもう少し先だ。5月下旬までに出そろった不動産各社の2020年3月期決算を見ると、昨年の好調を映し出しており、多くの会社が増収増益となった。アベノミクス以降の不動産好景気を受けて、緩やかな賃料の上昇が貢献し収益の柱であるオフィスビルを中心とした賃貸事業が好調だった。

 

コロナ感染が本格化する前の1~3月までの対日不動産投資額を見ても底堅い。不動産サービスの JLLによれば、オフィスビル、物流施設、商業施設などの投資が活発だった東京には対日不動産投資マネーとして96億ドルが流れ込み、世界の都市別投資額でトップとなっている。ちなみに2 位はニューヨーク(92億㌦)、3 位がロンドン(60億㌦)、4 位がパリ(57 億㌦)、5 位がロサンゼルス(57億㌦)となっている。

 

不動産各社はコロナにIT対応

 

不動産各社のコロナ対応としてはIT化の導入が相次いでいる。主なところとしては、オンラインによる接客であったり、集客を行っているなどである。例えば、マンション投資向けオンラインセミナーの申し込みがコロナ前に一般的だった会場来場型に比べて約2倍になっていたり、実際に当日セミナーを受講する人も来場よりも2.5倍になっているケースもある。そうした消費者の不動産投資に対する目下の懸念は、新型コロナウイルスによる景気の不透明感や不動産価格の変動を懸念している声が少なくない。

 

その一方、一般サラリーマンが老後の年金補完であったり、富裕層の節税対策などの面からの投資意欲そのものは強く、投資のタイミングを計るためにセミナーに足を運んでいる。いずれにしろ今後は、経済社会活動の正常化により、景気を戻すことが欠かせない。