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不動産レポート

新型コロナ感染拡大の影響─悲観論ばかりではない終息後を見据えよ

最大の分岐点はロックダウンの有無 

 

世界経済を取り巻く環境が一変した。日本においては、2020年オリンピックイヤーとして内需拡大の盛り上がりに期待していただけに衝撃は大きい。東京五輪・パラリンピックは来年7月に延期となった。新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)という想定外の出来事を受けて経済界も本格的な景気後退局面に身構える。米格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、ウイルスの感染を封じ込められたとしても2020年第2四半期(4~6月)も世界的に経済活動が鈍化することが確実だとしている。経済活動の停滞に伴う企業業績の悪化でリストラが進むとともに、資産価値の低下を招くリスクも高まっている。不動産マーケットに与える影響を探った。

 

2020年1月時点の経済見通しとは全く異なる風景が広がっている。ある経済番組のコメンテーターのもとを年初に訪れて話を聞いた際には、足もとで将来が計りづらい状況になっていると前置きしながら、「米中貿易摩擦や中東問題、英国のブレグジット問題などの国際情勢、世界規模で予想できない自然災害や地震発生の懸念もある。だが、今年11月3日には、米国大統領選挙が控えていることで、株式市場は10%程度の下落調整があったとしても、大統領選挙に向けて景気を維持するために株価を押し上げる政策で底堅い1年が基本シナリオだろう」と応じていた。ほかのマーケット関係もそうした見方が支配的であった。

 

ところが、である。中国・武漢を発信源とする肺炎を引き起こす新型コロナウイルスが瞬く間に世界中に広がり、米国のダウ株式市場は史上初の3万ドルを窺う水準から2万ドルを割り込むまでに急落した。日経平均株価は2万4000円台から1万7000円台である。日銀は、金融政策決定会合を前倒しし、ETF(上場投資信託)と不動産投資信託(Jリート)の年間買い入れ枠を12兆円、1800億円とそれぞれ倍増したものの、株価の下げ止まり感がなく未だ底値が見えない状態だ。

 

東証リート指数を見ると、2020年2月20日の2250.65ポイントから1カ月後の3月19日には1145.53ポイントまで落ち込んだ。最近はやや戻しており、4月直近の動向としては1400ポイント台~1500ポイント台で推移している。特にホテルや商業施設を投資対象とするJリート銘柄の下げがきつい。特にホテル系リートの低迷は長期化しそうだ。

 

一般の不動産株を見ても、新型ウイルス感染拡大の影響により、商業施設では集客の急落とともに収益の減少につながり、ホテルでは空室率の拡大と1室当たりの宿泊料金の減少が経営に大きな打撃を与えている。これに加えて、中長期的にオフィスビル需要の減退なども意識されて不動産関連銘柄は3月末時点での過去1カ月でTOPIXを大きく下回る株価となった。株価の低迷により家計の金融資産が毀損したことを受けたことでマンション販売にも下押し圧力がかかる可能性が出ている。

 

分譲マンション市況にも不透明感が漂う。ただし、その一方でこれから価格調整が始まったとしても、特に東京の分譲マンションにおいては、価格の高騰で購入に二の足を踏んでいた人や、手が出なかった人が買いやすくなる市況になる。富裕層や投資家だけでなく、一般実需層がじっくり市況を見ながら物件を選別する。

 

 

今後のマンション企画にも影響を与えそうだ。東京五輪・パラリンピックで予定していたテレワーク(在宅勤務)を前倒しする形で各社が動き出したが、これを契機に企業の働き方がドラスティックに変わり、1カ月間に出勤する日数が3分の1程度まで減ったりすると、在宅勤務対応型の分譲マンションの需要が増える可能性もある。長期的な視点で見れば、分譲マンション市場に変化をもたらす可能性がある。マーケットも都心中心の職住近接の一辺倒ではなく、在宅勤務ができるマンションならば若干の郊外であってもニーズがあるかもしれない。

 

一方で賃貸住宅やオフィスビルを運用するJリートは、株価(投資口価格)は落ち込んでいるものの、運用物件の賃料収入、つまりキャッシュフローが悪化しているわけではないので現在の株価の落ち込みは投資のチャンス、買い入れ時だとの見方もある。

 

過去の経験則から判断すると、空室率5%超で需給の緩みが意識され始めて賃料に下落圧力が働くことになる。しかし、そこまで空室率が上昇するとの声は今のところ業界関係者や市場関係者の間で少ない。物流施設も長期的な視線により運用している。物流施設の賃貸借契約は5~10年間と他のプロパティに比べて期間が長いことと、足もとの新型コロナ感染で巣ごもりを強いられていることで、出かけずに通販をこれまで以上に使って生活するため物流施設はフル稼働となっている。

 

ただし、感染症の拡大が経済全般に与える悪影響が長期化すると、また違ってこれらの想定よりも市況が悪化する可能性に注視する必要がある。

 

そうした点を踏まえながら、今後の不動産市況を探ってみると、海外投資家の存在感に気付かされる。商業用不動産に対する海外投資家の動向としては、JLLの調査によると、2019年通年で4兆1448億円が投じられた。このうち東京都心5区のシェアが35%となっている。リーマン・ショック前のファンドバブルの際も外資勢は、日本の低い利回りと不動産のリスクプレミアムとの差(イールドギャップ)を投資機会として捉えて日本の不動産を購入していた。東京五輪開催が決まった後の動向でも、不動産価格が高騰して物件利回りが低下の一途を辿ってきたにもかかわらず、長期金利はゼロもしくはマイナスで推移してイールドギャップが十分に保たれてきたことで投資マネーの流入が続いてきた。

 

ただ、こうした低い利回りで不動産を取得しているプレイヤーは、リーマン・ショック前のファンドバブルの時とは異なる。世界金融危機の当時は、高いレバレッジをかける投資ファンドが主役であったが、今は10年20年と長期に保有・運用する年金基金といったプレイヤーの資金が主役となっている。つまり、投機的な動きを背景にした性質の投資マネーではないことから外国の投資家が一気に引き揚げる可能性は低いとの指摘もある。

 

一方で、直近の新型コロナの影響により、米国がゼロ金利まで下げてきたことで、これまで日本の市場で魅力的だと映っていたイールドギャップが米国でも拡大する可能性がある。その場合は投資資金が巻き返す可能性もある。もっとも、今回の新型コロナウイルス感染の影響の大きさと期間がわからないのが実態だ。欧米や中国、韓国など諸外国からの入国拒否の現状が続く限り、訪日して適格投資物件の下見ができないなど今後取引が滞る可能性も高まっている。

 

今後の最も大きな分岐点としては、首都封鎖(ロックダウン)があるのかどうかである。ロックダウンは、生活維持に必要な場合を除いて外出しないことと、学校や福祉施設、興行場といった政令で定める多数者が利用する施設の利用停止要請を行うことの2つを法で定めている。緊急事態宣言は、国民生活・国民経済に甚大な影響を及ぼしているときなどに出されるもので、同宣言後に各種の要請・指示は都道府県の知事が出す。

 

ロックダウンがある場合は、どの程度まで封鎖範囲が拡大するか。また、ロックダウンがなかったとしても人々の心理的な影響は大きい。テレビなど各種報道から感染症の専門家の声を拾い上げると、経済活動の自粛要請の状況は向こう数カ月続きそうだ。

 

住宅・不動産業界で特に厳しいのが建築・販売部門と見られている。アパート建築や投資用ワンルームマンションの開発・販売である。収益アパート・マンションを開発しようという施主の心理的冷え込みと、それら収益物件の購入者の心理的冷え込みが大きいためだ。投資家や富裕層の特徴は、株価の下落とともに急速に手元に流動性資金、キャッシュを置きたがることだ。株価の下落による手元資金減といった影響により、工事の受注はさらに落ち込むと見られている。

 

感染拡大の終息に向けては予断を許さない状況が続いている。だが、この危機の冷静に分析して収束、終息後の投資戦略を練り直す、見直すといった備えは欠かせない。