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不動産レポート

2020年オリンピックイヤーⅡ:中国発ウイルス急拡大、訪日客に急ブレーキ

商業用不動産市況に暗雲も影響は軽微か

 

国内外の経済環境に暗雲が漂っている。日銀の12月短観によると、大企業製造業の業況判断は0ポイントと前回9月調査との比較で5ポイント下落し、6年9カ月ぶりの低い水準となっているところに、中国・武漢を発信源に新型コロナウイルスが急速に世界に拡大して終息の見通しがつかないためだ。東京五輪・パラリンピック開催決定後の7年間にインバウンド需要が日本の不動産取引の活発化に寄与してきただけに今回の一件からは目が離せない。そうした中で今回は2020年の商業用不動産マーケットの動向を探ってみる。

 

オフィスビル当面は需給ひっ迫 解約通知も間を置かず次のテナント

 

日本の不動産市況は依然として強含みだ。地価動向についても、「現状を見ると、誰もが高いとの認識は持っているが、今後の見通しについて、年末年始に『上がるか』『横ばいか』『下落するか』をヒアリングしたところ、横ばいで推移するという回答が最も多く、地価が下落するとの見方が最も少なかった」(都内の不動産鑑定士)。

 

低金利の継続が追い風となる。米不動産サービス大手のJLLの調査によると、2019年の商業用不動産への直接投資総額は4兆1450億円と前年比3%増加した。2017年からの3年間はほほ横ばいの4兆円規模で推移しており、2020年は前年比5%増と4兆5000億円と予測する。東京23区のオフィスビル投資の総額は1兆4000億円(前年比4%減)、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)への投資総額は1兆2000億円(同9%減)だった。共に好調だった前年から減速してはいるものの底堅い。不動産のファンダメンタルズは海外の主要都市と比べて強い。

 

同社が定義する東京Aグレードオフィスの空室率を見ると、都心5区は12月末時点で0.6%と前期比0.06ポイント低下し、1年前の同じ期との比較では0.4ポイント低下した。3四半期連続で1%未満となっている。賃料水準も1坪当たり3万9857円と4万円の大台をうかがう。丸の内・大手町の空室率は1.2%で賃料4万7965円となっている。新宿・渋谷のサブマーケットの空室率も0.4%である。特に渋谷は、IT企業の需要が強く新規ビルに相次ぎ入居し、賃料相場を押し上げている。丸の内・大手町は5万円台をうかがう水準に達しているため、成約が決まりにくくなっているものの、都内のテナント需要はおう盛である。Bグレードのオフィスビル市場でも7四半期続けて1%未満の空室率を維持している。希望するAクラスオフィスに空室がないため、Bクラスオフィスへの引き合いが強い。Aクラスの後追いでBクラスの賃料は上昇中だ。

 

一般的にオフィスの解約を受けたビルオーナーは、同ビル内の他のテナントに声をかけてからマーケットに募集を出すが、現状はビル内のテナントへの声掛けが一巡しないうちに次のテナントが決まるという状態。好調に推移しているのは賃料が緩やかながらも上昇し続けきたことが大きい。不動産の価格が高騰して低い利回りであっても賃料上昇分のキャッシュフローで利回りの低さをカバーしてきた。

 

2020~2021年はビルの新規供給が少ないため、向こう2年はビルの需給はひっ迫する。東京以外の都市もビル賃料は上昇傾向が続く見通しだ。とりわけ大阪エリアは、新規のオフィスビル供給がなく賃料が急ピッチで上昇を続けており、地元の不動産事業者は、「感覚的にはリーマン・ショック前の水準でピーク感が募っているのが現状だ」と実感している。ただ、大阪の場合は、東京と違い本社機能を持つオフィスというよりも営業所需要が多い。このことから経済・景気の良し悪しに左右され、景気悪化では営業所廃止で急激に縮小するのが常だったが、この循環を断ち切れるかが今後の課題でもある。

 

別の不動産サービス大手のCBREはこのほど、特別レポート「人・テクノロジー・環境が変える不動産の未来」として「リアルエステート2030東京」を発表した。それによると、これからのオフィスは、オフィスワーカーの世代の多様化に合わせて発展していき、遠隔地間の交流をよりスムーズにするテクノロジーが普及して進化を遂げていくという。オフィス動向は、働き方の多様性からビルオーナーサイドのビジネスモデルも大きく変わり、新たにステージに突入するとしている。

 

ホテルも開発が相次いだ。このため需要が追い付いていないが、中長期の目線から供給過剰は当たらないとの見方が多い。ただ、関西エリアは1~2年前と比べて見ると、ホテルを積極的に購入しようという動きは少なくなった。半面、東京はそれほど変わらず、地方都市はホテルの購入が増えている。また、高級な商業店舗は、インバウンドを取り込みながらの出店意欲は持続するとの見立てが多い。特に東京の一等地は別格で、銀座の1階部分の店舗賃料水準は月額30万円弱、同様に表参道は20万円強となっている。

 

Kokuritsu Kasumigaoka Rikujo Kyogijo 191024h

 

インバウンド頼りの資産は弱含み 伝統的な収益物件の賃料に影響なし

 

世の中にお金が余り過ぎている状況は依然として変わらない。世界的に投資先が狭まり始めていることを受けて余剰資金が不動産に流入する構図が続いている。三井不動産は昨年10月にスルガ銀行の創業家から日本橋室町のスルガビルを購入した。米国のブラックストーンは、今年1月に約3000億円を投じて賃貸住宅220物件を中国の安邦保険集団から一括で購入した。欧米の投資家の間では、賃貸住宅への投資が活発化しており、ブラックストーンはドイツの保険会社に約1300億円の賃貸住宅の売却もしている。売り主は明らかになっていないが、第一生命も昨年9月に賃貸住宅「河田町ガーデン(新宿区曙橋)」を取得した。

 

こうした不動産投資を積極化する機関投資家は、アメリカやイギリス、オーストラリア、中国、日本といった国単位ではなく、ニューヨークやロンドン、シドニー、上海、東京、大阪といった都市単位で判断し、かつ投資対象はプロパティ単位で判断して資金を振り向けている。その投資対象も多様化している。オフィスビルやレジデンス、商業施設といった伝統的な不動産のほか、高齢者向け住宅や介護施設、学生向けマンション、データセンター・通信などインフラ施設を投資対象として熱い視線を向けている。

 

しかし、不動産市場に対する見立てに狂いが生じる可能性も出てきた。前述したように新型コロナウイルスの早期終息が鍵を握るのは言うまでもない。JLLの調査に限らず、関係各所が直近までに発表した不動産マーケットの指標などは新型コロナウイルスのことは織り込まれてない。訪日客を取り込みながら堅調に推移する、とは言い切りづらい環境となった。これまでの地価上昇に伴う不動産市場の活発化は、訪日客の需要の増加によって土地の収益が改善するインバウンド需要によるものだったためだ。

 

新型コロナウイルス感染拡大が長引くことで、訪日客の低迷も長引き収益力の低下を招く。すでにホテルや旅館といった宿泊業界は、予約のキャンセルが相次ぎ稼働率や客室単価に影響を及ぼし始めている。商業店舗も売り上げが落ち込んでいる。

 

その半面、不動産市場への影響は軽微だとする見方もある。訪日客の減少で収益が落ち込むアセットがあるのも事実だが、基本的に不動産の取引価格は賃料収入との見合いで決まるもので、賃料に影響がなければ問題ないとの分析である。特にオフィスビルや賃貸住宅といった伝統的な不動産の賃貸者契約は2~5年と数年単位で結ばれているので賃料収入は変わらない。ただ、政府目標の訪日客2020年4000万人が遠のいたのは間違いなさそうだ。