実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート

2020年オリンピックイヤー ポスト五輪を見据える機敏な展開に

緩和マネーが支える分譲市場、臨界点を探る1年か 

 

2020年オリンピックイヤーが幕を開けた。東京オリンピック開催決定から7年間、住宅・不動産業界は、黄金の時代だとして関係各所から注目を浴びてきた。五輪メイン会場の東京湾岸エリアや都内の地価上昇は、地方都市の地価にまで波及するとともに不動産価格も上がり、分譲マンションの新築の値段は今や天井に達している。しかし、新築の供給戸数は低位に推移し、2020年も首都圏では3万戸台の前半にとどまる見通しだ。不動産経済研究所の市場予測では3万2000戸となっている。昨年の2019年については、3万1300戸(前年比15.7%減)と見込んでおり、高値販売の常態化を受けて成約までの期間が長期化している。今年第1回目は分譲マンション市場を展望する。

 

都区部タワーなど大規模物件けん引役

 

東京都心の高級マンション人気は依然として変わらない。高値安定で推移しており、郊外であっても駅近の物件で価格下落の兆候が見られない。消費者の購買意欲を削ぐほどの価格帯となり新築が売れない。所得の二極化とともに売れるものと売れないものという物件の二極化も加速する。昨年1~11月までの平均価格は6000万円を超えており、売れ行きの好不調の目安とされる初月契約率は7割に届かないことがめずらしくなくなった。販売現場からも売り値は当面、横ばいで推移するとの声で一致する。

 

そうした中、不動産経済研究所では、東京23区のタワーマンションが年明けからマーケットのけん引役になると見立てている。駅近の大規模複合開発が春から始動するとともに、郊外でも大型案件が順次登場するためだ。このことから東京23区の供給戸数は2019年に比べて1.4%と微増ながら1万4000戸を見込んでいる。湾岸エリアと山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」周辺に対する関心も高まるという。都下では、前年比15.4%と大幅に増加し、3000戸の新規供給を想定。神奈川県も7500戸、千葉県も3500戸が見込んでいる。新築マンションの商品企画のテーマは、省エネ・創エネ設備に加えて、共働き世帯の増加を受けて子育て支援、家事の負担軽減に関する設備などを挙げている。昨年の台風に伴う洪水被害を受けて防災強化も新たにテーマとして急浮上しているのも特徴だろう。

 

ちなみに2020年の目玉物件は、選手村として使用したあとに分譲マンションとしてコミュニティを形成する「晴海フラッグ」(中央区、総戸数4145戸)をはじめ、港区の「白金ザ・スカイ」(同1247戸)、同じく港区の「ブランズタワー芝浦」(同482戸)、江東区の「ブランズタワー豊洲」(同1152戸)、同じく江東区の「プラウドタワー亀戸クロス」(同934戸)などがある。東京湾岸で開発中のマンションは、アジアなどからの引き合いも依然強い。

 

近畿圏においても新築の供給数は総体的に振るわない。2019年は1万6000戸(前年比19.8%減)と2割落ち込む見通しである。当初予測から下振れする。2020年でも1万7000戸(前年比1.2%増)と微増にとどまると予測。ただ、こちらもタワーマンションがけん引役を担いそうだ。2019年の発売予定が後ろにずれ込んでいるタワマン販売を受けて、大阪市部は2020年の供給が大幅に増える見込みだという。大阪市部は7700戸、神戸市部1900戸、兵庫県下1700戸、京都市部1300戸と想定している。

 

近畿圏は、2025年大阪・関西万博やカジノ施設を含むIR構想によって先高感は強いものの、IR誘致を巡る問題で昨年末に自民党の代議士が逮捕されたことでIRの誘致に向けて積極的に動きづらい状況に陥った。誘致に向けて手を上げている、上げようとしている各自治体のハードルは上がったと容易に観測できる。また、マンション用地の土地代はホテルとの競合が影響して上昇傾向が継続する。建築コストも高水準であり、大阪・関西万博の決定が人手不足に拍車をかける。新規供給が大幅に増えそうにはない。

 

 

行き過ぎた低金利の継続に異論の声も

 

一方、消費者の中古マンションへのシフトは当面続きそうである。中古マンションの販売環境は底堅く2019年の成約件数も新築発売数を4年連続で上回りそうな中で、過去4~5年の堅調さを2020年も死守できるかに今年は焦点が当たる。東日本レインズの成約件数を見ると、2018年は3万7217戸と新築契約数を2531戸上回っている。

 

ただ、新築よりも割安であるものの一般的なサラリーマン世帯の年収から考えると中古とはいえ都区部では手が出せない水準に達している。築10年経過のマンションでは、新築時の販売価格が2~3割アップしている事例は都区部でめずらしくない。人気の高いエリアほど不動産マーケットの好調局面において中古マンションの資産価値も一段と高まりやすい。割安感は薄れており、〝中古価格の常識〟を超えた高水準が常態化すると中古マーケットを冷やしかねない。それにもかかわらず購入に踏み切っている現状は、世界中で金利が低下しており、日本でも緩和マネーがあふれてお金を借りやすくなっているためだ。

 

半面、いったん金利が上昇を始めると住宅ローンの金利も急速に上昇に向かう。行き過ぎた低金利の継続に異論の声が増えると金利上昇のリスクも意識せざるを得ない。日銀のマイナス金利政策が奏功し、現状では金利リスクを意識する人は少ないが、金利の引き下げが一定水準を超えると緩和の効果が逆回転を引き起こし、経済にマイナスの影響をもたらす副作用が生じる臨界点「リバーサル・レート」に達すると状況は大きく変わる。現在、そうした状況になくとりあえず持ちこたえているとした専門家の見方が多いが、仮にリバーサル・レートに達して日本経済に悪影響を与えると住宅・不動産業界に与える影響は小さくない。東京オリンピック・パラリンピック後もロンドンや北京のように引き続き不動産の価値を維持することも難しくなる。

 

もっとも、低金利という金融政策頼みのマーケットからの脱却は言うまでもなく、不動産のチカラを維持・向上するには都市の魅力を引き上げることが欠かせない。森記念財団都市戦略研究所が昨年11月に発表した「世界の都市総合力ランキング2019」では、総合力1位の都市が2012年以降8年連続でロンドンとなった。2位にはニューヨークが付けて、東京は4年連続で3位に甘んじたが、ランキングに携わった市川宏雄・明治大学名誉教授は、「東京オリンピック後については、ロンドン五輪後のように不動産価格は堅調に推移するのではないか」と話している。

 

1964年の東京オリンピックのように新幹線や高速道路の開通といった大規模なインフラ整備があるわけではないが、それに代わる政策として、法人税の減税や規制緩和の問題に取り組むことで可能だと強調する。加えて、世界で出来ていて日本が出来ていないことをなくすこと。それが都市力のアップにつながるといい、例えば、ナイトエコノミーを活性化するために電車やバスといった公共交通機関の深夜運行を実現することで終電を気にせずに夜を楽しく過ごせる環境もまた都市力(=不動産力)を引き上げるという。実際、米国は大幅減税の効果でリーマン・ショックからのV字回復を実現し、英国ではEUからの離脱に向けてのブレグット問題を抱えながらもロンドンが1位を維持している。

 

こうした国内外の状況を踏まえながら、2020年のリテール部門は、オリンピック以降のマーケットを見極める、臨界点を探る1年となりそうである。