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不動産レポート



消費税率10%マンション購入の影響 ローン減税など手厚く市場安定的

不動産大手は値下げせず時間かけて販売 

 

10月1日に消費税率が10%に引き上げられた。5%から8%への引き上げ時(2014年4月1日)には駆け込み需要と、その後の反動減によって景気が大きく落ち込んだ。とりわけ住宅・不動産業界の影響は大きく、今回は、そうした教訓を受けて様々な手厚い対応を施している。住宅ローンと住まい給付金の拡充をはじめ、次世代住宅ポイント制度を創設するなどだ。住宅取得資金贈与税の非課税枠も拡大した。こうした対応が功を奏してか住宅・不動産各社からは、駆け込み需要はほとんど見受けなかったと口をそろえている。消費増税前に住宅を購入するよりも、増税後の方がお得とする施策が不動産市場の平準化につながったようだ。ただし、足もとの新築分譲マンションは、供給戸数が少なく売れ行きも芳しくない。こうした状況で消費増税の影響は本当にないのか気になるところでもある。

 

富裕層など十分に増税対策の恩恵

 

総体的に見ると、新築分譲マンション市場は、すでに価格は高値圏(天井感)で推移していることもあって急いで購入したいと思う人は少ない。不動産経済研究所によると、直近9月の首都圏のマンション発売戸数は2359戸となり、1年前の同じ月と比べて3割下回った。エリア別では、東京23区の発売戸数が1111戸(同23.8%減)、東京都下が276戸(同9.8%減)、神奈川県が459戸(同30.8%減)、埼玉県が384戸(同21.5%増)、千葉県が129戸(同79.5%減)となっている。契約率も首都圏平均で56.8%と同18.6ポイントも下げている。首都圏平均価格は5991万円(同16.6%上昇)となり、23区平均で6633万円(同10.7%上昇)と依然として強含みの状態が続いている。

 

もちろん、購入検討者が抱えている都合もそれぞれ違う。なるべく早めに新居を探したい人であったり、住宅ローンの審査条件が厳しくなる高齢者や所得水準の低い層では消費税率が8%のうちにという判断で購入した人もいるだろう。だが、手厚い増税対策を満額享受できる富裕層や高所得層、共働きのいわゆるパワーカップルと言われる層は増税後の方が実質的にお買い得になると考えて増税前に買い急ぐことはなかったのが実情のようだ。

 

今回の主な住宅・不動産業界に対する対策をあらためて簡単に確認して見ると次のようなものになる。

 

●「住宅ローン減税」は、1年間で最大40万円(優良認定住宅等は50万円)の税額控除を受けられるもので、控除期間を従来の10年から13年に拡大した。その拡大した11~13年目は建物価格の2%を3で割った額か、年末の住宅ローン残高の1%のどちらか低い額で税額控除を受けられる。支払っている税金が少ないと控除を満額受け取れないのが実情である。このため、住宅ローン減税は富裕層のメリットが大きいと前々から指摘を受けている。

●「すまい給付金」の最大給付額は30万円から50万円に引き上げられ、収入に応じて10万~40万円が増額されるものだ。

●「次世代住宅ポイント」は、一定の省エネルギー性能、耐震性能、バリアフリー性能などを満たす住宅や家事負担の軽減に資する住宅に加え、リフォームした場合にも様々な商品と交換できるポイントを発行する制度のことだ。新築最大35万円相当のほかに、リフォーム最大30万円相当のポイントを付与する。

●「住宅取得資金の贈与税非課税措置」については、これまでの最大1200万円から3000万円と大幅に拡大した。

 

こうした施策を受けて大手各社は、増税後の購入メリットが大きいとされる富裕層向けの分譲マンションや住宅商品の開発を推し進めているようだ。

 

ちなみに中古住宅に対する消費税については、個人が売り主の場合に原則として建物に消費税はかからない。とはいえ、仲介手数料や融資などに関する事務手数料などは課税対象であるため、取引をトータルで見ると増税前に比べてまったく上がらないわけではない。売り主が個人ではなく、事業者の場合は建物も消費税の課税対象となっている。

 

 

価格高騰+消費増税、青田売りにこだわらず

 

富裕層や高所得層に照準を合わせていることに加え、最近の不動産会社の特徴として、『購入者が買い急がないならばこちらも売り急がない』としてじっくりと構えて販売する会社の存在感が増している。

 

一般的に新築分譲マンションの販売では、プロジェクトが決まりモデルルームを開設し、建設中にそこで集客してマンション完成までに完売する方法を採用してきたが、青田売りとは違うマンション完成後に営業を本格化するという〝竣工売り〟が増加している。

 

モデルルームとは異なり、実物の部屋を見てもらうことで実際の眺望であったり、共用施設、日照条件などが確認できるため購入者にとって安心感のある販売方法とも言える。売り主としては、販売価格を下げて竣工までに急ぎ売り切るのではなく、値下げせずに購入してもらえる顧客とのマッチングを追求して利益の最大化を図るのが狙いである。

 

実際、ここ数年の契約スピードの鈍化により竣工時に完売するマンションが減少している。東京カンテイはこのほど、新築マンションの売り主別に分譲状況をまとめた。それによると、首都圏の2018年竣工時完売シェアは49.0%と過半割れとなり、不動産大手だけを抽出して見ると、竣工後に分譲を続けている割合が52.4%になっていることがわかった。

 

売り急がない販売スタイルが主流になりつつある。この大手とは不動産業界でメジャー7(三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、大京)と称される7社を指している。

 

東京カンテイでは、1980~2018年に竣工した新築マンションを対象に

【タイプA】竣工より後に分譲開始

【タイプB】竣工以前に分譲開始(竣工以前に最終分譲)

【タイプC】竣工以前に分譲開始(竣工より後も分譲継続)

に分類して調べている。

 

それによると、竣工時完売に相当するタイプBがほとんどのシェアを占めていたが、1980年代後半になると、大手開発以外が手掛けるマンションで1990年代バブル期のピークにかけてタイプAのシェアが拡大する傾向が見られ始めたものの、これは、ハプル景気で新築購入の意欲がおう盛だったため、分譲時期を後ろにずらしたほうが高値で販売できることの期待がもたらした結果だと分析している。

 

そして、そのままバブル崩壊を迎えて短期完売が見込めずに分譲開始を先延ばししたり、一時凍結する消極的な販売姿勢にシフトするケースが珍しくなくなったとする。

 

2000年代に入ると、リーマン・ショック前のミニバブル期にかけて新築価格が上昇トレンドであったため、高値での販売を狙う売り渋りと称された分譲時期を後ろ倒しにするタイプAとタイプCのシェアが拡大した。

 

2009年には大手中小など売り主に関係なく、竣工より後に分譲を開始するタイプAが過去最大を記録したといい、大手ではタイプCのシェアが51.3%と過半数を占めた。その後、一時的にAとCの両タイプのシェアが縮まったものの、2013年以降に再び竣工後の販売スタイルが拡大した。特に大手は、2016年から直近にかけて販売スタイルの主流が竣工前に分譲を開始し、竣工後も分譲が継続しているタイプCへと完全に入れ替わったとする。

 

首都圏を見ると、2014~2018年でタイプCの販売スタイルが抜きんでているのが住友不動産で、東急不動産と大京が続いた。タイプBの販売スタイルでは、東京建物の比率が最も高く、それに5ポイントほど落として野村不動産となり、三菱地所レジデンス、三井不動産レジデンシャルと続いている。ちなみに住友不動産の近畿圏での販売スタイルは2009年~2018年まで完全にタイプCにより完売にこぎつけている。

 

このような傾向は、現状のマンション価格の高騰と増税に伴い様子見の購入検討者が増えていることで、それらを見据えた販売戦略として定着しそうである。つまり、じっくり販売タイプが増えると、価格が下がりにくい市況が続くかもしれない。