実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



日銀の超金融緩和で日本に不動産バブルが到来する

 3月に国土交通省から発表された公示地価では地価の底入れ感が確認できた。都市部を中心に地価上昇地点も増えたが、地価の調査は昨年秋に実施した結果である。政府・自民党は、大量に資金を市場に供給する「金融緩和促進」や公共事業投資などの拡大による「財政戦略」、規制緩和を中心とした「成長戦略」の3つの柱(3本の矢)、いわゆるアベノミクスでデフレ脱却を目指している。公示地価は、そのアベノミクスが反映されていない。つまり、現在の地価は発表よりもさらに上昇機運が高まっていると考えられる。4月3日から4日にかけて日銀は、黒田東彦新総裁が就任して初の金融政策決定会合を開いた。今回、日銀の新体制とアベノミクスが不動産価格を押し上げ、不動産市場が本格的な回復に向かうのかを探ってみた。

 

■不動産市場の本格回復に3つの課題

 不動産市況の回復に楽観ムードが漂っているなか、今後、本格的に回復軌道に乗せるにはいくつかの課題もある。一つはオフィスビルの賃料が上昇反転するかどうかだ。新築ビルを中心に最近の募集賃料には上昇の兆しが見られるが、これからは契約更新時の契約賃料が上昇に向かうかが焦点となる。市場では既存ビルの契約賃料の上昇はもう少し先で2014年からとの見方がある。だが、不動産大手によると賃料引き上げの話を持ち出しても話を聞いてもらえるようになったといい、想定よりも前倒しでの賃料上昇が期待できそうだ。ただ、2007年のミニバブルのように都心部で1坪当たり7万円という高騰はなさそうだ。空室率も依然として高い水準にあるものの徐々に低下している。あるM&A助言会社がオフィス移転を考えて昨年12月に東京・六本木でAクラスビルの空き状況を打診したところ空きがない状態だったと話していたことが印象的だった。

 二つ目は建設コストの上昇だ。地価の上昇に伴いマンションやビル開発向けの土地代が上昇するほか、円安が進むことで輸入に頼っているエネルギーや建設資材が高くなる。これらに加え、東日本大震災の復興需要により職人不足が発生しており労務費の上昇が顕著になっている。準大手クラスのゼネコン(建設会社)は受注工事を黒字にするのに苦労しているという。人件費がこれ以上上昇した場合、上昇分を工事費に転嫁することも考えられる。2007年から2008年に高値で仕入れた不良在庫の処分が進んだデベロッパーも、工事費アップによるマンション開発で販売の利益率の低下が懸念される。価格が上昇したマンションの登場では売れ行きに注目したい。

 三つ目が海外から日本への不動産投資が加速するかどうかである。東日本大震災以後も外資マネーの対日投資は継続的に実施されてきたが、2007年のミニバブルに比べるとその勢いは弱い。アジア系の富裕層の投資は活発化しているが、欧米の不動産ファンドやヘッジファンドが今後のどのくらい資金投下してくるのかが焦点。2007年時のような1千億円単位の投資額が現状では見られず、数百億円単位にとどまっている。背景には日本の優良不動産が市場になかなか出てこないことが挙げられる。アベノミクスによる期待感で資金循環が改善して不良債権化した優良物件が少なくなったほか、今後の不動産価格の上昇を見込んだオーナーが不動産を手はなさないことなどが挙げられる。IRRベースで15~20%のハイリターンを目指す欧米のファンドにとっては魅力が薄く、こうしたファンドの資金は、スペインやイタリアといった債務問題であえいでいる欧州に向かっている。日本のバブル崩壊後のように不良債権化した不動産を安く買い叩いて高い利回りか追求できるからだ。

 ただ、これら3つの課題もアベノミクス効果が実体経済にまで波及してくれば、沈み続けている一般サラリーマンの所得水準が改善して少々高いマンションであっても売れ行きが落ちないだろうし、日本をはじめとする主要国の金融緩和によって世界中の市場におカネがあふれ出し、行き場を探す流動性資金と円安が進んでいけば大規模な対日不動産投資が加速することも考えられる。また、オリンピックの東京招致が決まれば間違いなく息の長い不動産好景気が続くとの観測が強く、日本は政府が国民と一体となって招致活動を展開している。

 

■未踏の地に踏み込んだ金融政策

 耳元では資産バブルの足音がひたひたと聞こえ始めた。4月3日から4日にかけて日銀が開いた金融政策決定会合で、前例のない超金融緩和の実施を決めてデフレ脱却を目指す姿勢を実行に移したからだ。長期国債や株価指数連動型の上場投資信託(ETF)と上場不動産投資信託(Jリート)の買い入れ枠の拡大を決め、ETFは年1兆円、Jリートは年300億円の拡大となる。長期国債の買い入れは年50兆円ペースで進め、毎月の長期国債の買い入れ額は7兆円強に達する見込み。世の中に出回るお金の総額であるマネタリーベースは、年60兆から70兆円に相当するペースで増加するなど市場にマネーが大量供給される。マネタリーベースは、2012年末の実績が138兆円だったが、これを2013年末に200兆円、2014年末に270兆円になる予定だ。

 不動産会社やJリートの株価は急上昇中である。このままいけば東京や大阪、名古屋、福岡といった大都市部の実物不動産の価格もほぼ間違いなく上昇に転じるだろう。日本に再びバブルが到来する可能性が高まっている。