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不動産レポート



2017不動産マーケット展望Ⅱ:商業用不動産 強気の賃料水準が続く「優良テナント誘致の限界を探る市場に」

主な民間シンクタンク20社が12月までの2カ月間に公表した景気予想を集計すると、実質成長率は2016年度と2017年度ともに1.1%が平均となって緩やかな成長が続く見通しだ。ただ、景気動向は流動的な要素が増えている。米大統領選挙の後に円安・株高が進んだことを受けて景気予想を相次いで上方修正しているので各社の見通しには期待先行のきらいがあるのも事実だ。米国の政治の混乱による同国の経済失速懸念や、英国のEU離脱宣言を発端にした欧州各国で高まる政治リスクなど日本経済に与える影響が悪い方向に向かう可能性を完全に拭い去ることはできない。そうした不透明な時代の中にあって、国内商業用不動産マーケットについての2017年を展望してみた。


都心部で募集賃料4万円超が相次ぐ


「不動産市場の需給関係が急激に変わることは考えにくい。景気懸念が出ても悪い影響は限定的だと思う。タイムラグでじわじわと効いてくる可能性はあるが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えているなどのプラス要因がけん引して基本的に不動産業界には堅調に推移する」。年明け前後の複数の不動産関係者へのヒアリングではそうした反応が多かったのが印象的だった。
特に3年後の東京オリンピックに向けて街のインフラ整備が急ピッチで進むことで不動産市場が足元で総崩れになるとの見方はない。土地総合研究所の最新の「不動産業業況等調査結果」(2016年10月)によると、ビル賃貸業の業況指数は、10期連続でプラス水準を維持している。
2017は東京23区で大型のオフィスビル新規供給は前年比3割減る。このため、市況悪化はないと見られる。2016年末までに供給されたビルの6~7割が満室稼働となっている。6月ごろまでには残りの新規ビルも満室稼働に向かう状況にある。賃料が高くてもテナントを確保している新規開業ビルが多い。
ソニー銀行はこのほど、東京都千代田区で開発中の「(仮称)内幸町二丁目プロジェクト」に2018年1月末をめどに移転すると発表した。現状のビル賃貸需
要は、業容拡大に伴う人員増に向けたポジティブなケースがほとんど。マーケット不動産大手をはじめとするビルオーナーは、上がり過ぎが否めないほどに強気の賃料設定が目立っている。三鬼商事の調査では、東京都心5区の新築ビルの募集賃料は2012年春から上昇に転じ、中古ビルの募集賃料も2015年1月から上昇トレンドとなっている。2015年2月竣工の「東京建物日本橋ビル」(地上13階地下2階建て延べ2万3235㎡)と同年4月に竣工した「東京日本橋タワー」(地上35階地下4階建て延べ13万8000㎡)は、1坪当たりの賃料水準が3万8000円から4万円で成約したと見られているようだが、ここら辺の一般的な相場が2万1000~2万3000円であることを考えると相当に高い設定になっている。
こうした高値での成約を受けて、「京橋エドグラン」(2016年10月竣工)は、「当初4万5000円を狙っていたが竣工を間近に控えた8月の段階でテナント内定が2~3割と低水準にとどまった。このため4万円前後に下げ対応して稼働率を上げている」と市場関係者の間には伝わっている。値下げと言っても京橋エリアの賃料相場が2万円台であることを考えれば強気の現状に変わりはない。


賃料の多様性、企業の移転ニーズ促進


賃料の多様性は進んでいる。日本橋エリアは、古いビルが多く中小ビルは1坪当たり1万円台前半が賃料相場だ。メーカーなどコスト意識の高い会社が日本橋に進出する例が増えていることに加え、ITやソフトウエア関連は、新卒・中途で優れた人材に来てもらえる採用目的もあって賃料が高くてもハイクオリティのオフィスビルを求めている傾向が強く著名な企業が集約移転する例が珍しくない。賃料の多様化によってテナント移転の促進につながっている。
需給バランスを見たときに、現状では移転ができなくなるほどのひっ迫感はないが、今年は新規供給が約70万㎡と少ない。このためビル不足感の声が出てきそうだが、2018年から2020年まで3年連続での大量供給を控えていることで需給は緩むに向かいそうだ。森ビルの「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査」では年間にならすと130万㎡ずつ増える。しかし、過去30年間の平均供給量が約103万平方㍍なので極端に多くなるわけではなく、ほとんどが都心部のビル建て替えで純増は約40%となる。
これからオリンピック需要が顕在化すると、建設・土木、交通インフラ整備で関連領域の企業の需要が増えるとともに、国内外からの東京来訪者が増えることでサービス関係の需要が増し、商業用不動産の市況が落ち込むとの見方は少ない。


東京五輪後も大規模開発が続々


東京23区では、オリンピック後の2021年以降も大規模開発が相次いで完成する予定だ。大手町や八重洲、新橋・虎ノ門のエリアに集中する。「業務需要が根強いエリアのため、再開発の波及効果も大きいと考えられる」(みずほ証券)。三菱地所は、東京駅日本橋口で現在高さ日本一のあべのハルカスを超える地上
61階(390m)の超高層タワーなど4棟の再開発ビルを整備する。「常盤橋街区再開発プロジェクト」として2021年度にA棟が竣工し、2027年度に全体竣工を迎える予定だ。
八重洲1丁目東地区では、東京建物の本社ビルを含む約1.19haを一体開発し、地上45階地下4階建てなど2棟を開発する。2020年10月に着工し、2024年の完成を目指している。八重洲2丁目中地区は、八重洲ブックセンターなどを含めた約1.95haを再整備し、地上46階地下4階建て延べ41万8000㎡が2023年度に完成する。虎ノ門2丁目は、虎ノ門病院・国立印刷局・共同通信会館の跡地を一体開発する。約2.9haの敷地に地上36階地下3階建て延べ25万5000㎡が2024年度に建つ。
このほか「虎ノ門ヒルズステーションタワー」(2022年度竣工予定)もある。JR新橋駅西口のSL広場やニュー新橋ビルを含めた再整備では昨年3月24日に再開発準備組合が発足した。首都東京は、人口減少に伴うマーケット縮小に備えてヒト・モノ・カネが集まる街づくりを本格化している。