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不動産レポート



東京の再開発プロジェクトを追う-Ⅰ

 銀座地区・外国人観光客を意識した街づくり 

日本政府は2030年に訪日客数が3000万人を超え、宿泊客の6人に1人が外国人になる社会を目標に掲げている。モルガン・スタンレーMUFG証券では、その3000万人訪日のインパクトについて、直接と波及を合わせた経済効果は計22兆円に上ると推計する。観光需要を取り込む動きが加速しているが、人口減少局面に入った日本経済にとって内需縮小を補うインバウンド拡大は最重要課題のひとつである。特に東京は、5年後の東京オリンピック開催を内需拡大の好機と捉え、街の再開発事業に対する期待も高まっている。今回から都内で進行中の再開発プロジェクトにスポットを当ててリポートする。

 

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【数寄屋橋交差点】
●〝2000億円〟投じた大規模商業施設
約120店舗誘致し、2015年度中の開業へ

東京・銀座――。外国人でもよく知っている日本屈指の繁華街だ。ひと昔前の銀座とは街並みは様変わりし、いまでは宝飾品やレストラン、ホテルなどの高級ブランドショップだけでなく、ユニクロやGAP、ZARA、H&Mなど最新のトレンドを取り入れながら価格を抑えた衣料品を大量生産・販売するファストファッション(fast fashion)と呼ばれるアパレルメーカーも進出し、中高年に限らず若者が足を運ぶ地域となっている。

 

その銀座では5丁目と6丁目で注目の再開発が進行している。銀座5丁目は数寄屋橋交差点の旧銀座東芝ビルの建て替えプロジェクトである。向かいにソニービルがある一角に位置し、晴海通り・西銀通り・みゆき通り・数寄屋橋通りに囲まれた敷地面積3766㎡に高さ66mで地下5階地上11階建て延べ4万9700㎡の大型商業施設が2015年度中にオープンする予定だ。東京メトロ銀座駅と地下コンコースで直結するアクセス環境を備える。

 

地下2階~地上11階部分の13フロアを店舗とし、アパレルから雑貨や食物販、飲食まで約120店舗のテナントを誘致する。特に通行量の多い路面部分には、高級ブランドをはじめとした複数のグローバル旗艦店を配置する。施設内や屋上部には東急文化村と提携したパブリックスペースを設けるなど、国内外の情報・文化の発信拠点とする。加えて、訪日観光客の誘引を見込みんで、施設の上層部に都内最大級のロッテ免税店を誘致するほか、中・上層部には東急ハンズや、東急百貨店による新業態のセレクトストアをオープンする予定だ。

 

これは、東急不動産が2007年に約1600億円を投じて東芝から取得したビルを大型商業施設へと建て替えを進めているもので、1600億円を土地1坪当たりに換算すると1億4000万円強に達する。難航していた一部テナントとの立ち退き訴訟も2011年3月に和解が成立に至り、2012年9月に解体工事に着手するなど開発に着手するまでの産みの苦しみも味わった。和解金や建設費を含めれば2000億円近い投資と言われている。

 

こうした巨額を投じてまで開発に踏み切った背景を察するに当たっては、銀座のビジネスチャンスの大きさを物語っていると言っていい。数寄屋橋交差点周辺では、2007年にJR有楽町駅前に有楽町イトシアが開業したほか、有楽町マリオンにJR系の商業施設であるルミネ有楽町や、阪急メンズ・トーキョーがオープンしているなど、比較的に若い世代をターゲットにした店舗が相次いで登場している。これまでのメーンターゲットだった中高年や年配層などにとどまらず、幅広い年齢層を取り込める数少ない商業エリアとしての発展に期待する声は少なくない。

 

今年2月、1937年6月竣工のビアレストランの老舗店として有名だったニュートーキョー本店ビル(地下1階地上5階)が閉店するニュースを日本のメディアが大きく報道で取り上げていた。本店ビルは戦前から銀座のランドマークとして存在していただけに閉店を惜しむ日本人が押し寄せる映像を流した。この閉店は、数寄屋橋本店ビルが再開発によって取り壊されることを受けて移転するためだ。伝統を失う一抹の寂しさを感じながらも街に新たな息吹を注ぎ込む動きの活発さを映し出していると言っていい。

 

【銀座中央通り沿い】
●来年11月エリア最大規模の百貨店
商業・業務・観光拠点を目指す

銀座6丁目では百貨店大手の松屋銀座店の建て替え事業が進行している。J・フロントリテイリングや森ビル、住友商事など13社が参画しているプロジェクトで「銀座六丁目地区市街地再開発計画」として進められており、松坂屋銀座店などを取り壊してオフィスや多目的ホールが入る地下6階地上13階建て延べ14万7900㎡と銀座エリア最大規模の複合ビルが2016年11月に竣工する予定だ。約3900㎡の屋上庭園「(仮称)銀座ガーデン」を整備するほか、海外からの観光客を見込み「(仮称)銀座観光ステーション」として銀座初となる観光バスなどの乗降スペースや、観光案内所なども整備する。

 

この再開プロジェクトは、「松坂屋銀座店」跡地を含む街区(銀座六丁目10番)に加えて、隣接する街区(銀座六丁目11番)の2つで構成された約1.4ha を一体的に整備するものだ。国際的な商業・業務・観光拠点を目指す。

 

売場面積4万6000㎡の商業施設や、1フロア当たりの基準階貸室面積が6100㎡に及ぶ大規模オフィスのほか、地下には 能楽最大流派、観世会の能楽堂「観世能楽堂」を配置する。日曜・祝日に歩行者天国となる銀座中央通りに面した幅約115mにもおよぶファサードのメリットを生かした商業施設には高級ブランドをはじめ、ファッション、ライフスタイルはもとより、レストラン、カフェに至るまで、ハイクオリティ・ハイクラスを中心とした250〜300店のテナント誘致を計画している。テナント募集は今年3月末に締切った。多数の応募があったようだ。

 

こうした再開発事業を受けて、銀座エリアの商業店舗のキャップレートに低下圧力が強まっている。日本不動産研究所の不動産投資家調査によると、銀座のブランドショップといった高級専門店の期待利回りは、2010年4月から4期連続で4.7%の横ばい状態から、2012年4月時点で4.6%と低下に転じた。その後も4期連続で低下し、足元で4.1%まで低下している。ちなみに東京近郊のショッピングセンターの期待利回りも低下に転じており、現在6%程度の水準となっている。

 

●都心部に高級ホテル参入相次ぐ

銀座周辺のホテル事情も動きが活発になっている。国内御三家の一角であるホテルオークラ東京は、1962年から営業を続けてきた本館を建て替えるため、今年閉館する。東京五輪開催前の2019年に客室数550室とオフィスフロア、美術館などで構成した2棟のビルに生まれ変わる予定だ。

 

東京五輪を契機に外資系高級ホテルの開業も相次いでいる。2014年4月には、森トラストが開発した京橋トラストタワーにマリオット系のホテルがオーブンした。東京建物などが所有する大手町タワーでは日本初進出となるアマン・リゾーツが開業した。いずれも銀座に近いだけでなく東京駅からも至近にあって交通利便性の高さを背景に海外からの観光・ビジネス需要に応えるホスピタリティの高さが特徴だ。

 

森ビルの虎ノ門ヒルズにはハイアット系のホテルがオープン。ホテル部分は47階から最上階の52階までの6フロアを占め、最上階には日本の高層ホテルとしては初めてのルーフトップバーを設けるなど、新たなランドマークとしての革新性をアピールする。

 

(写真キャプション)

銀座五丁目プロジェクトの完成予想パース。

伝統工芸の江戸切子をモチーフにしたデザインした。