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不動産レポート



不動産市場2016検証Ⅱ:価格高騰で投資利回り急降下 「バブル懸念も投資家の意欲は衰えず」

2016年は金利付き量的・質的金融緩和が導入され、これまで日本が経験したことのない未踏の領域に足を踏み入れスタートを切った。借入金額の多い不動産業界にとっては過去最低水準の低金利が続くことを歓迎。支払い利息の減少と低金利を活用し不動産市場への資金流入が投資を拡大させると期待を集めた。しかし、海外要因を受けて年初から円高が加速し、インバウンド需要に冷水を浴びせた。イギリスがEU(欧州連合)離脱を国民投票で決めたことや、中国経済の不透明感を嫌い円高・株安が進んだ。ただ、11月の米大統領選挙で本命のヒラリー・クリントン氏が落選し、不動産王のドナルド・トランプ氏が次期大統領に決まると大方の予想に反し、足元では円安が進むとともに株価上昇といううれしい誤算が発生した中で不動投資マーケットを振り返る。

 

利回り2%台へ、マイナス金利が助長か?

 

今年は、2月に日銀が導入したマイナス金利以降、円ベースでの金利が大幅に低下したことで不動産融資が増えた。日本銀行の「貸出先別貸出金」を見ると、不動産セクターに対する銀行の新規貸出額は、今年9月までの1年間で前年比約10%増えている。この金融緩和の効果は、国内の不動産価格の回復基調の継続につながったことが挙げられる。

 

国土交通省が発表する「土地価格ルックレポート」の2016年第2四半期調査によると、地価動向調査100地区のうち88地区で物件価格の上昇が続いている。ただ、米系格付け会社のムーディーズ・ジャパンは最近のレポートの中で、「これまでの約4年間、土地価格上昇傾向と不動産利回りの低下トレンドが続いており、さらなる価格の上昇は限定的と考える。横ばい圏で推移する可能性がある」といい、特に大都市で好立地の商業用不動産に関しては、投資妙味のある物件の購入が難しくなってきたと指摘する。

 

複数のシンクタンクの市場調査でも「すでにピークを過ぎた」や「ピークに達している」との回答が増えている。「賃料の伸びと著しく低い利回り取引が一巡した」や、「融資の貸し出し姿勢が保守的になってきた」といった印象を受ける投資家も少なくないからだ。

 

一方で、不動産投資家の意欲が衰えていないこともわかった。日本不動産研究所が11月に発表した10月時点の「不動産投資家調査」によると、向こう1年間の投資に対する考えは、約85%が「新規投資を積極的に行う」と回答している。マーケットのピーク感を認識しているものの強気の姿勢を崩していない現状も浮き彫りとした。同研究所の調査では、東京の丸の内・大手町は、Aクラスのオフィスビルの空室率が3.7%とほぼ空室のない状態にある。投資家の心理的な壁である期待利回り3%台に突入しており、不動産バブルに懸念を示す投資家も出始めた。

 

だが、2007年ごろの不動産ファンドバブル期の現状とは少し様相が違う。期待利回り3%台に達した現状でも利回りのスプレッドが大きいことが挙げられる。2007年当時の国債利回りは1.5%~1.7%で推移していたが、現在はマイナス金利の導入を受けて国債利回りがマイナス圏になるよう誘導されているため、ファンドバブル期よりも利回りのスプレッドが多く取れている。

 

つまり、そうした現象に着目した不動産投資家の中には、利回りが2%台まで低下するまで不動産を購入できると考える人が出ても不思議ではなく、それがさらに価格を押し上げる要因となる可能性がある。アクセルを踏み込んでハイレバレッジで低利回り物件を購入する局面をマイナス金利が助長する可能性に懸念を抱くマーケット関係者は少なくない。

 

不動産開発の積極姿勢が鮮明化

 

実際、不動産開発を積極化する動きが活発化している。日本経済新聞社などの報道によると、住友商事は2020年3月期まで国内外で敬2000億円規模の不動産事業に投資し、東京都内では中規模のビル開発に力を入れる。関西電力も首都圏で大型複合ビルを開発し、所有ビルを現在の6棟から10棟に増やすようだ。分譲マンション開発なども含めた向こう3年間の総投資額は1500億円に上る。人口減少が進む中でも東京は安定的な収益が確保できるとの判断が働いている。

 

三菱地所は今年、日本一高い複合ビルを2027年に完成させると発表した。1兆円プロジェクトとして東京駅日本橋口前にオフィスと商業店舗が入る「常盤橋街区再開発プロジェクト」として開発する。東京駅周辺で最大となる敷地面積3.1haに現在の日本一である大阪の「あべのハルカス」(300m)をしのぐ高さ約390mのタワービルを中心に4棟のビルで構成する。

 

東急不動産は、銀座5丁目の数寄屋橋交差点の旧銀座東芝ビルの建て替えプロジェクトを商業施設「東急プラザ銀座」として今年3月31日に開業。地下鉄直結の地上11階地下5階建て延べ約5万㎡。江戸の硝子技術と海外のカット技術が融合したとされる伝統工芸の江戸切子をモチーフにした外観デザインが特徴的だ。建物内にも江戸切子のデザインウオールなどを随所に配し、早くも伝統と革新が共存する銀座のシンボル的存在となっている。

 

西武プロパティーズは、グランドプリンス赤坂跡地開発「東京ガーデンテラス紀尾井町」を7月27日にグランドオープン。オフィス、ホテル、賃貸住宅、商業施設、カンファレンスなどからなる都心型の複合開発だ。プリンストンホテル最上級シリーズの「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」は総客室数250室を用意している。

 

東京は特に新規プロジェクトが相次いでいる。2017年から東京オリンピック関係の事業が本格着手する。建設現場の人手不足と建設費の上昇により供給計画が後ろ倒しになっているケースもあるが、計画では2018年と2019年にかけて比較的まとまった量で新規ビルが竣工を迎える予定だ。

 

今年は民泊が注目の的、来年の通常国会に新法

 

政府が東京オリンピック開催時に訪日外国人数を2015年の2倍を超える4000万人に増やす目標を掲げている。日本不動産研究所の調査によると、宿泊特化型ホテルは、2020年東京オリンピック誘致決定以来、活発な取引が続いており、東京は4.8%(同0.2ポイント低下)と最も低い期待利回りになっている。

 

そうした観光客を取り込もうと今年は民泊が不動産業界では大きなトピックスとなった。一般家庭のマンションや戸建て住宅の空き室などを旅行客の宿泊施設として貸し出すもので、全国800万戸を超える空き家の有効利用としても期待が集まっている。

 

政府は国家戦略特区で旅館業法の適用を特例で外して民泊を認める制度を設け、東京都大田区に続き、大阪府でも独自に保健所を持つ大阪市などを除いた33市町村で4月に民泊を認める条例を施行した。国家戦略特区では今年4月に2泊3日からの民泊を認めたほか、旅館業の一種である簡易宿所の規制も緩和。

 

全国解禁に向けて来年の通常国会に新法可決を目指し調整を進めている。国土交通省と厚生労働省は、住宅に旅行者を有料で宿泊させる場合の年間営業日数について、上限を年180日とすることを来年の新法に盛り込むことを決めた。住宅を提供する人には、自治体への届け出を義務づけ、仲介サイトも観光庁への登録が必要になる。違反すると業務停止命令や行政処分の対象となる。新法では、住宅地でも民泊営業が可能になる予定で自宅や賃貸マンションの空室を転用した動きが本格化しそう。「ただ事業性として成り立つのか」(不動産大手)といった声は少なくなく民泊事業の可能性は未知数である。

 

全国の住宅6063万戸のうち、人が住んでいない住居は約850万戸に上り、さらにその中で賃貸もしくは売却用のために空き家になっているのは460万戸ある。仮に民泊に1割転用するだけでホテル・旅館ストックの約30%に相当する。