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不動産レポート



定期借地権付き分譲マンション投資

定期借地権付きの分譲マンションが増えている。国土交通省のデータによれば、2009年末までに累計7万9808戸の定期借地権付き住宅が供給され、このうち分譲マンションが2万711戸を占めている。残りは戸建て住宅(累計3万6297戸)と賃貸マンション・アパート(累計1万6800戸)になる。定期借地権とは期間満了時に必ず土地が地主に返還され、立ち退き料が不要の期限付きの契約のこと。借地の期間は平均58年だが、最近の定借マンションは60~70年と延びる傾向にある。土地を一定期間借り受けて建物部分だけを所有するこうした形態のマンションが大都市部を中心にひそかに人気を呼んでいる。

 

■地主が土地の有効活用で利用

定借マンションを購入する最も大きなメリットは、一般的な分譲マンションに比べて3割ほど安く購入できることだ。土地の所有権は地主にあるので、マンションを購入しても土地取得税は発生せず登記費用もなく物件購入の諸費用が低く抑えられる。利便性の良い場所に供給されるケースが多く、専有面積(住空間)も広いといった点が人気の理由として挙げられる。好立地なのに割安。投資として考えた場合、一般的な区分所有マンションよりも運用利回りは高い。

事業方式としては「土地所有権型」・「地代前払い型」・「権利金型」がある。地主や事業主の目的によって異なるものの、2005年ごろから前払い地代方式が増えている。将来支払うべき地代の一部分を前払いしていることで、購入者は毎月支払うランニングコストが圧縮できるため需要が多いようだ。

 定期借地権マンションに詳しいAMSコンサルティングの竹之内裕社長に事業方式別に定借60年間のコスト比較を金利2.6%固定で計算してもらったところ、地代前払い方式は、年間の地代が土地税金(0.2%)の2倍程度の0.39%となって権利金方式の地代1.2%よりも低額だ。割引率は65%に仮定した。その結果、前払い地代を全額ローンにした場合の60年分のコストは87.1%。土地代の20%を占める権利金方式では、年間地代を1.2%として計算して権利金を全額ローンにした60年分のコストが101%となった。土地所有権方式は、土地代を全額ローンとした場合の60年間分のコストが156%だった。

定期借地は、将来的に土地が地主に返還されるため、地主にとっての土地有効活用の側面が強いのが特徴だ。権利金を受け取ると不動産所得として課税対象となるため、個人地主に権利金方式はなじまない。事業主としては、メリット感をどう出すかが決め手となる。個々のケースで違う。どの事業方式が定借マンションに適しているかは一概に言えない。竹之内社長は、「2007年以降、高額の権利金方式が登場。定期借地による資金調達機能が強化され、特に法人地主が活用している。近年ではタワー型マンションの定借も少なくない」という。

 

■都心部を中心に定借マンション注目高まる

定期借地は郊外型も登場しているが徐々に減っている。リーマン・ショック後の地価の落ち込みが続いた中で、土地の有効活用といった観点から定期借地のメリットが出にくくなっているからだ。購入検討者の人気は都心部に集まっている。資産価値の高い物件を割安で購入でき、その後、売却した際に購入価格を上回るケースを期待している。貸し出す場合でも都心部の利便性がいい場所だと賃料下落や空室率上昇をヘッジできる。マンションは、価格と利便性に尽きることを如実にあらわしたケースがある。

2008年竣工の「シィータワー品川」(定借期間70年・総戸数829戸)だ。特に人気を博した典型例。これは品川駅から徒歩圏の品川区港南4丁目にあった都営団地建て替えプロジェクトだったが、専有面積80㎡の販売価格が都心部でありながら約3200万円と格安だったことで注目を浴びた。購入後5年間は売却できない縛りがあったものの何百倍の競争率。こぞって購入に走った裏に投資目的が透けた。アベノミクスで景気回復にあるタイミングを受けて売却に動くケースが最近になって見られるようになった。

セコムが手掛けた京王線の芦花公園駅徒歩5分の大規模マンションでは、1階部分6200万円で購入した住戸が中古7600万円で売却できた例があるなど分譲マンションの投資目的としての魅力は高まっている。

山手線内最大級の定期借地権分譲マンションとして2008年11月に竣工した「広尾GARDEN FOREST(ガーデンフォレスト)」(定借期間50年・総戸数474戸)もその一つだ。広尾日本赤十字病院の土地を活用した同プロジェクトは、高級住宅地として名高いだけに高値で将来売り抜けられるとの思惑も働き、足元では昨年7月に竣工した同プロジェクトの一部「広尾ガーデンフォレスト・椿レジテンス」G・H棟(200戸)の注目度が上昇している。

フォレストガーデンは、権利金方式を採用した。借地権を直接担保に入れて抵当権設定でき、第三者に売却するときに地主の承諾は不要となっている。期間満了時に建物を解体して地主に返還するが、解体時に準備金が不足する場合には追加預託が必要だ。逆に余った際には区分所有者に分配される。広尾日本赤十字病院は、権利金を病院の建て替え費用に充当したと推測されている。地主が資金調達の一環として定借マンションを活用した事例と言える。

このほか、地代前払い方式で2011年に実施した東京都荒川区の「リビオ日暮里グランスイート」(定借期間62年・総戸数217戸)は、最寄り駅徒歩6分で価格3900万円の割安感が受けて販売が好調に推移した。

2020年東京五輪の開催も決まり、こうしたケースのほかに、資産デフレ脱却を見据えて好立地のいい遊休地を持つ地主が土地活用として定期借地権付き分譲マンションの開発を推し進めることが増えそうとの見方は少なくない。購入時点の地代が上昇することで売却益狙いの可能性が広がっている。また、高騰している建築費に対する投資利回りが下がっているので、将来的に投資回収期間が延びたり、回収しきれないリスクを考えて賃貸マンション開発をためらう富裕層(地主)もいる中で、定期借地のスキームを活用する例が注目されている。

ただ、定借マンションを投資目的に購入する際の注意点について、前出の竹之内社長は、特にローン(融資)を使う場合に警鐘をならす。定期借地権付きは、銀行など金融機関が土地を担保にできないため、融資審査が厳しくローンが付きにくい。融資対象者の収入に重点を置く。もっともキャッシュで購入できる富裕層に問題はない。