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不動産レポート

「民泊」遊休・休眠資産の有効活用と異文化交流の鍵?

民 泊
遊休・休眠資産の有効活用と異文化交流の鍵?
「民泊予備軍460万戸も転用は未知数」


一般家庭のマンションや戸建て住宅の空き室などを旅行客の宿泊施設として貸し出す「民泊」が注目を浴びている。全国で800万戸を超える空き家を抱える日本。不動産業界は空き部屋・空き家の新たな活用方法として民泊に期待する。政府は国家戦略特区で旅館業法の適用を特例で外して民泊を認める制度を設けた。特例により東京都大田区は訪日外国人の急増による宿泊施設不足を解消するため今年2月に区内の2物件を民泊施設として初めて認定を受けた。マンションの空き部屋や個人宅を有償で貸すことができるビジネスが実質スタートを切った。大阪府でも4月1日、民泊を認める条例を施行した。大阪府では独自に保健所を持つ大阪市などを除いた33 市町村で実施する。


■ホテル不足、訪日客4000万人を見据える


「民泊の解禁は壮大な社会実験だ」。こう評するマーケット関係者は少なくない。観光立国を掲げる安倍政権は3月30日、東京オリンピック開催時に訪日外国人数を2015年の2倍を超える4000万人に増やす目標を掲げた。中国やインド、ロシア、フィリピン、ベトナムを重点5カ国として観光客のビザ(査証)発給要件の緩和を目玉にする予定だ。宿泊施設の不足解消に向けて民泊の全国解禁へ向けた法制度の整備を急ぐ。


民泊に転用可能な物件は多いと見られている。全国の住宅6063万戸のうち、人が住んでいない住居は約850万戸に上り、さらにその中で賃貸もしくは売却用のために空き家になっているのは460万戸ある。これを民泊予備軍と位置付けると、全国のホテルや旅館ストックの約3倍に相当する規模だ。「これは、民泊への転用は未知数だが仮に1割を転用するだけでホテル・旅館ストックの約30%とインパクトは小さくない」(米証券大手)。


東京都大田区で特区指定前に民泊を行ったことがある資産家のA氏は、運用中の100戸を超えるマンションのうち2戸を民泊として貸し出していたところ年間の稼働率は85%を超えたといい、「一度に7人が1 部屋に泊まったこともあったし、1 日で退出する人もいれば1カ月間滞在した人もいて利用者は千差万別だった。日本人の利用者も少なくなかった」と明かす。


建設業界向け人材サービスのエヌ・アンド・シーが1月に東京圏・大阪圏に在住する2000人を対象に民泊について意識調査したところ、民泊で自分が貸し手になることに関心を持つ人が約2割、借り手では3割弱が興味を示した。出張族に限っては33.8%と3人に1人が民泊利用を想定しており、外国人にとどまらず日本人のニーズが強いこともわかった。


6月の最終報告書を待たずに民泊ビジネスの準備を進める不動産会社が相次いでいる。売買仲介やフランチャイズを手掛けるハウスドゥは民泊事業を視野にイー・旅ネット・ドット・コムと業務提携に向けて検討していることを公表した。イー・旅ネットとの事業提携の模索では制度整備を待って民泊として賃貸物件を再利用する予定だ。シノケングループでもイー・旅ネット・ドット・コムとインバウンドを意識した民泊事業に向けに業務提携。同グループはすでに今年1月に大田区で民泊を視野に入れたマンションの企画・開発を進めている。仲介大手でも民泊に転用できる物件の仕入れを着々と進めていつでも民泊事業に参入できる体制を整えつつあるようだ。

 

■普及は周辺住民と旅館業との摩擦緩和が鍵

だがハードルは低くはない。特区活用に向けての条例制定は大田区や大阪府・大阪市のほか10前後の自治体が検討しているが、皮切りの大田区は特区制度を活用した民泊事業の登録が低調だ。今後の方向性を見極めようと様子見状態が多いだけに限らず、大田区が旅館に近い設備を義務づけながら旅館業界に配慮して短期滞在を認めない仕組みとなっているからだとの指摘がある。


解決しなければいけない課題は山積している。日本はホームステイ型ではなく、収益を目的にマンションなどの部屋を用意して客を泊めるホテル型宿泊が多数派を占めているのが実態。周辺住民との摩擦や既存の宿泊施設との競合といった多くの問題を解消しなければならないし、宿泊施設は旅館業法など様々な法規制が存在する。これらの許可を受けずに宿泊場所として自宅を提供するため、特に旅館業界の反対が強固である。施設面で厳しい条件を課す意見もみられる。特区規定で民泊は7日以上の利用に限られ、訪日客の東京での宿泊日数は6日以内が6割を占める状況から考えると使い勝手がいいとは言えず改善すべき項目として大きい。


昨年1月、中国に対してビザ発給要件を有効期間中に何度でも訪日できるよう緩めたことで中国人の訪日が爆発的に増えた。今後の発給要件の緩和でも外国人を呼び込みたい考えだが、こうした外国人観光客に依存した民泊が相次ぐと逆にリスクになりかねないとの指摘もある。リーマン・ショックのような世界経済を揺るがす事象が発生すると、訪日客が激減して稼働率が急低下するに伴い民泊の収益が圧迫されて事業として成り立たないことが考えられる。


住民感情としても既存の賃貸マンションの民泊への転用は他の入居者が嫌がるし、分譲マンションならばなおそうした意識が強くなる。実際、マンション管理規約を改正し、民泊禁止とした東京湾岸の「ブリリアマーレ有明タワー&ガーデン」のケースもある。住友不動産は民泊禁止をうたった分譲マンションの開発も今後開発する。


昨年11 月と今年3月にフランスとベルギーで無差別テロがあっただけに警察はテロリストの温床になりかねず国家的なリスクになるとの懸念が根強い。

 

 


■民泊の全国解禁へ6月に最終報告書


こうした中で3月15日に「民泊のあり方を検討する有識者会議」が中間整理を取りまとめた。この中で簡易宿泊所の面積基準の緩和のほか、旅館業法や旅行業法など現行の法制度にとらわれない新たな法整備を含めて早急に検討しなければならないとした。


民泊を申請する際には施設内の清掃といった方法を具体的に明記することや、旅行客が滞在中に1回以上は現場に赴き状況を確認する体制整備などを求めて
いるほか1カ国語以上の外国語で対応できることも盛り込んでいる。民泊を開始するにあたっては周辺住民に対する説明会の開催や訪問・文書による事前説明なども必要となる。


当初の予定を前倒しして今年6月に最終報告書をまとめる予定だが、政府として当面は民泊を旅館業法上の「簡易宿所」と位置づけて営業許可の取得を促す考え。旅行者向けの民泊仲介事業は旅行業にあたると判断しており、インターネットなどを利用した民泊仲介事業者に対して旅行業の登録を義務付ける方向だ。旅行者と近隣住民の間でトラブルになるケースも少なくないとして必要に応じて法整備を進める。違法な民泊やその仲介業務が事実上の野放し状態にあることを踏まえ、中間報告では仲介業者の規制の必要性も明記している。


個人が民泊を営む際の安全性の確保や本人確認は一定要件を備えた管理業者が管理・監督することを求める規定も検討する。海外の仲介事業者への規制に実効性を持たせる方策も必要だとの認識も示した。民泊物件に対して建築基準法や消防法とも現行通りに簡易宿泊所の規定をそのまま適用する。


いずれにしろ2020年東京オリンピックまでに4000万人の訪日客を見込む中で、様々な課題を抱えつつも遊休・休眠資産の有効活用と外国人との交流を促進するステージづくりとしての民泊の役割は小さくはなさそうだ。


=有識者会議の中間報告書の主な骨子=
【主な現行制度の枠組みでの対応】
●客室面積の基準を現行の延べ33㎡以上を見直し、宿泊客10 人未満の場合は
1人当たりの面積を3.3㎡に設定する。
●少人数の宿泊客のケースはフロントの設置は必要ない。
●許可に当たっては賃貸借契約や分譲マンションの管理規約に違反していない
ことを確認する。
●民泊事業は旅館業法の許可取得が必要なことを一般に周知する。
【主な現行制度を超えた検討課題】
●ホームステイ型民泊=届け出制に規制を緩和する。
●ホームステイ型=営業日数や宿泊人数、面積を一定以下に限定する。
●空き家型=簡易宿所の許可を取得する。管理業者を介在させる。宿泊者名簿
と衛生管理の措置を求める。
●用途地域の規制を検討する。