実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



Japanese Market地価急騰も潤沢資金の流れ止まらず「リスクは金融動向と海外要因」

国土交通省が発表した公示地価によると、全国の住宅地の地価変動率は9年ぶりに上昇に転じた。三大都市圏は2016年に引き続き前年比で0.5%と小幅上昇にとどまったものの、地方都市が上昇幅を拡大したのが特徴だ。住宅地は札幌、仙台、広島、福岡の主要都市が2.8%上昇し、この4都市の商業地は6.9%の上昇率だった。都心部に限らず地方の主要都市にまで地価の上昇が波及し、商業地の上昇拡大と住宅地の底入れ感が鮮明となった。総体感としてのデフレ脱却を裏付けた足元のマーケットを検証する。


■収益物件向けの投資意欲は旺盛


地価の上昇は、昨年2月に日銀が導入したマイナス金利を受けて住宅ローン金利が低下したことなどが住宅地需要を底堅く支え、商業地は訪日客の増加などインバウンド効果によって店舗やホテル需要が高まった。再開発事業も進展してビル空室率低下に伴う収益性の向上も貢献した。最も地価が高かったのは11年連続で東京・銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」の5050万円/㎡で過去最高を記録。SMBC日興証券では、2017年も都市圏の商業地を中心に地価の回復が続くと見込んでおり、オフィスビルの賃料上昇の加速などで不動産セクターの業種格付けを「強気」にしている。


収益物件向けの用地取得では、好立地であれば積極的に買いに行く姿勢が強い。事業用用地を収益物件に転用する傾向も少なくない。


投資用マンション向けローンの貸倒率も低く、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは3月23日のリポートで「RMBS(住宅ローン担保証券)の貸倒れ率は良好に推移するだろう」と見通した。同社によると、投資用マンションローンの典型的な債務者については、年収が700万円を超える高収入の給与所得者で、大部分が公務員や上場企業に勤務している会社員だとしている。


世界金融危機後(2007~2008年)に撤退した資金の貸し手がターゲットにしていた債務者は年収600万円を下回り、中小企業に勤務する会社員や自営業者だった。返済比率(DTI)も40%を超えていた。これら債務者の属性を比較すると、足元では健全性を保っており、信用力の低い人に積極的に貸し出した米サブプライムローン問題に端を発した金融危機リスクを押さえ込んでいる。


財閥系不動産の傘下にある仲介会社からは、「一棟収益マンションは個人富裕層や不動産ファンドの投資意欲が旺盛で、今年も引き続き低利回りでの取引が続きそうだ」や、「一棟アパートは土地を取得して建物が建つ前に売れてしまい物件が追いつかない」といった声がいまだに聞かれる。


■不動産大手は業績好調で過去最高益も視野


不動産大手の業績も2017年3月期第3四半期までを見る限り好調に推移している。住友不動産は、今年3月末までの通期業績で4期連続の営業最高益更新となる見通し。マンション市況がいまひとつの中で、販売契約は四半期ごとに過去最高をたたき出している販売力の強さを見せ付けそうだ。


ビル事業が堅調な三菱地所も2017年3月期の営業利益が過去最高を更新する見込み。これまでに相次ぎ竣工した大型ビルがそろって業績にフルに寄与する。今年5月に次期中期経営計画を公表する予定だ。三井不動産の2017年3月期業績は前年度並みの見込みで、すでに焦点は今期(2018年3月期)に移っており、中期経営計画の営業利益(2450億円)目標を達成できるかだ。


大手各社は、少子高齢社会による新築需要の減少を見越した住宅事業のてこ入れ、社内再編の動きを活発にしてきた。住友不動産は今年3月、グループ仲介会社の住友不動産販売を完全子会社化にして非上場化すると発表した。すでに東急リバブルや東京建物不動産販売、三井不動産リアルティといった開発大手系列の仲介会社も同様にこの数年で非上場化となっている。住宅事業の再編劇とも言え、大手不動産は仲介子会社の不動産流通部門の稼ぎを取り込んで新築住宅マーケットの縮小を補完する動きである。

 

地価急騰も潤沢資金の流れ止まらず


■都市部と地方の二極化が鮮明に


今後のリスク要因としては、商業用不動産の空室率や賃料の変動、住宅の販売環境の変動、金融市場の変動などが挙げられる。地価の高騰に伴い物件価格は高く、分譲住宅マーケットでは消費者の購買能力を超える水準に達していることで新築マンションの売れ行きには一服感が漂っている。
実際、公示地価を見ると、東京圏の住宅地は都内23区で3.0%上昇した。土地取引はひっ迫傾向を強めている。不動産大手は、「マンションの仕入れ用地について、都市部ではホテルとの奪い合いとなっているし、郊外でも主要駅周辺でマンションの事業化が可能なエリアがあるものの基本的に新規供給は難しくなっている」と声をそろえる。


高級マンションの販売が順調に進む一方で、一般サラリーマンからは「(実需層の)新築マンションまで手が出ない価格帯だ」との声が大半を占めている。特筆すべき魅力のないマンションと、売れるマンションの格差は開くばかり。値ごろ感を求めて中古マンションにシフトする傾向は今後も強めそうだ。戸建て住宅でも、東京23区でおおむね安定感を示してきたものの、埼玉県や千葉県の住宅地で都心へのアクセスが良いエリアは価格帯に調整局面が出てきた。


住宅マーケットは、購入と賃貸の重要の強いエリアや、インバウンド効果とそれが見込めないエリアとで価格の二極化がさらに進む様相を呈する。


東京圏だけでなく、大阪圏の地価の上昇が鮮明だ。商業地の上昇率上位は、大阪の地点が1~5位までを独占し、全国で最も高い41.3%の上昇率を示した道頓堀のづぼらやは、訪日外国人旅行者の増加もあってホテルや店舗需要が強い。旺盛な宿泊需要を背景にホテルは高稼働で、客室単価も高水準にある。賃貸マンション開発業者と競うようにホテル開発事業者が用地を物色し、資金調達環境が良好なことも背景に積極的な土地投資が続く。


分譲マンション市場は、都心部のタワーマンションが住宅地価の上昇をけん引してきた。大阪圏を中心にしたマンションは地元需要がほとんどだが、ミナミ周辺ではアジア圏の富裕層が購入する物件も少なくない。外需も地価上昇の一因になっている。都心部に限らず阪急線梅田駅から20分ほどの御影駅周辺は、今年になって地元仲介会社が築20年の一棟アパートを5000万円で仕入れ、6300万円で転売した例があるなど大阪圏域の投資需要は強含んでいる。


■懸念は金利動向から地政学にまで波及


先ほど挙げたリスク要因で、これから最も注視が必要なのが金融市場の動向である。足元では、金融機関の不動産向けの貸し出し意欲は強く、すべての取引で引き続き強含んでおり、銀行の不動産向け融資は過去最高でバブル期を超えた。日銀の金融緩和政策によって市場に潤沢な資金が溢れだし、史上最低水準の低金利が借金リスク懸念を和らげて借り手の背中を押す。


ただ、複数の不動産会社は、「金融機関の融資姿勢には注視していきたい」と金融市場の変動に気を揉み始めた。実際、これまで消費者の購入意欲を下支えしてきた住宅ローン金利がそろり上昇基調を見せ始めている。


メガバンクは4月に一斉に住宅ローン金利を引き上げることを決めた。三菱東京UFJ銀行は、10年固定型住宅ローン金利を最優遇の場合で年0.55%から1.05%に、三井住友銀行も年0.8%から1.05%に引き上げる。みずほ銀行も年0.85%から0.9%に引き上げる。住宅ローン金利の指標となる長期金利の上昇を反映したものだが、昨年2月に開始したマイナス金利政策を導入して以来、1年2カ月ぶりの高い水準だ。


日本経済を取り巻く環境を見ると、3年後の東京オリンピック・パラリンピック開催を控えているほか、政府は、2025年には日本国際博覧会(万博)の大阪誘致に向けて動き出した。2027年にはリニア新幹線の東京-名古屋間が開業する予定だ。こうした五輪後のイベントは少なくなく、引き続き訪日外国人の増加が見込めるなどで日本経済の底が割れる事態を予想する声は少ない。


むしろ日本経済は、国内要因よりも外的要因、つまり米国や欧州、中国といった海外要因により左右されそうだ。例えば為替市場。アベノミクスで一時120円を超える円安水準から円が切り上がっている。4月4日の東京外国為替市場では、ロシアの第二都市であるサンクトペテルブルグでの地下鉄爆破事件を嫌い、米国の長期金利が約1カ月ぶりの水準まで低下するとともに、欧米の株式市場にリスクをとりづらいムードが高まったことでドル円は111円を割り込んだ。当面、120円といった円安水準は見込めそうにない。米国が独自に北朝鮮を制裁の対象とする動きも伝わり、日本株の先高観も後退している。


こうしたリスクを端緒に実態経済に悪影響が波及すれば、経済との連動性が蜜である不動産マーケットの潮目が変わる可能性も高くなる。内需の代表格としての不動産業界ではあるが世界の政治・経済の動向から目が離せない。