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不動産レポート



免震・制震装置の検査データ改ざん

タワーマンションは大丈夫か!?

首都圏のストック数は441棟・約14万戸

いま住宅・不動産業界では、タワーマンションに注目が集まっている。超高層型マンションに導入されている免震・制震装置の信頼が揺らぎかねない問題が発生したからだ。油圧機器メーカーのKBYが免震・制震装置の検査データを改ざんしていたことが明るみに出た。それらの装置を設置した建物は、原子力発電所やNHKの地方放送局、東京都庁第二本庁舎、埼玉県立がんセンターなど。物件名が明らかになったのは11月2日時点で累計108件と報道されている。公表されたのは約1割に過ぎず、全体の3割を占めるとされるマンションの公表はない。マンション名が明らかになると、その物件の資産価値が下がりかねないとの声や、むしろ早めに個別物件を公表して対応するほうがマンション市場全体を混乱に陥れないで済むという見方が交錯する。KBYにとどまらず、川金ホールディングスでも同様の検査データ改ざんが見つかった。免震・制震の市場シェアはこの2社で9割を占めている。

 

 

■階層が高いほど免震・制震マンションに

ストック戸数トップ江東区、棟数1位は港区

 

免震・制震装置は、地震大国の日本にあって、なくてはならない装置である。地震の揺れを和らげるなど、たとえ巨大地震に見舞われたとしても倒壊を防ぐといった効果が期待されているためだ。そうした装置の検査データを改ざんすることがどういった結果を招くかは誰でも察しが付く。

 

こうした問題が発覚した中で、東京カンテイは10月31日に全国の超高層マンションの供給動向・ストック数を発表している。2018年から2020年まで、これから竣工する予定のマンションを含めて集計した。タワーマンションの定義は地上20階上とする。

 

全国ベースの同調査で免震・制震装置を取り入れているかどうかを調べたところ、最高階数別に見ると、20階建てクラスは「免震・制震ともになし」が61.5%を占めて、「免震あり」は26.7%、「制震あり」は11.8%にとどまっていることがわかった。しかし、最高階数が高くなるほど免震・制震の導入は拡大している。

 

50階以上のクラスになると、全国の過半数のタワーマンションが制震構造を備え、「免震・制震ともになし」のシェアは14.3%まで縮小している。

 

圏域ごとに免震・制震の装置導入状況を見ると、首都圏は以下の通りとなっている。

▶20~29階建て=免震20.7%、制震17.4%、装置なし61.9%

▶30~39階建て=免震19.9%、制震31.9%、装置なし48.2%

▶40~49階建て=免震23.9%、制震43.7%、装置なし32.4%

▶50階建て以上=免震19.0%、制震62.0%、装置なし19.0%

 

近畿圏の状況は次の通り。

 ▶20~29階建て=免震22.9%、制震3.7%、装置なし73.4%

 ▶30~39階建て=免震41.5%、制震16.0%、装置なし73.4%

 ▶40~49階建て=免震40.6%、制震29.7%、装置なし29.7%

 ▶50階建て以上=免震41.7%、制震50.0%、装置なし8.3%

 

タワーマンションの竣工年代によって免震・制震の導入結果が異なっているのも特徴である。2010年以降に竣工したタワーマンションでは、免震・制震構造の割合が高まっているが、東京カンテイでは、それぞれの時代に起きた出来事が深く関わっていると分析している。例えば、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大地震を受けて2000年代になってから竣工したタワーマンションで導入が急速に進んできている。ちなみに「同社の1955年からのデータストックによると、免震が最初に導入されたのは首都圏で1978年、制震の初導入も首都圏で1992年になっている」(週刊住宅タイムズ・中野淳副編集長)。

 

東日本大震災や熊本地震では、免震・制震構造を有するタワーマンションの大地震に対する安全性が世間に広まったとする。木造戸建て住宅に比べて高い耐震性を持つ分譲マンションであっても、外壁や共用部分において被害を受けたり、室内の家具や家電などが転倒してケガを負うケースがあったものの、免震・制震構造のタワーマンションにそうした事象は限定的で大地震に対する耐震性が発揮されたからだ。

 

全国でタワーマンションが最も多い自治体は東京都で、都内のストック数は441棟・13万9991戸ある。その9割以上が東京23区内に存在する。なかでも港区(76棟・2万4621戸)と江東区(60棟・2万6709戸)の2つの行政区が突出しており、品川区(41棟・1万2804戸)、中央区(34棟・1万8338戸)、新宿区(29棟・9073戸)と続いている。

 

品川区や開発余地を残す江東区は引き続き、タワーマンションの供給数が伸びる見込みだ。品川エリアは、リニア新幹線の駅やJR山手線の新駅登場などにより街の刷新も進みそうだ。一方、中央区は、住宅開発の容積率緩和措置の撤廃に伴い、今後、タワーマンション供給数が伸びることはなく、供給シェアは縮む方向となる。

 

同社によると、トップシェアの港区は、2000年代から供給が始まり歴史的には浅いという。都心一等地である青山・赤坂・麻布の3A地区で当初供給されてきたが、2002年の「東京ツインパークス」の2棟が臨海エリアで竣工したのを皮切りに40階建てクラスの大規模マンションが湾岸地区に登場。2000年代のストック棟数は、港区全体の61.8%を占める。

 

次いで多い江東区は、1990年代まで住吉界隈など内陸部での供給だったが、2000年代に入りメインの供給先が豊洲や辰巳など湾岸エリアへとシフトした。江東区内は2010年以降もタワーマンション開発が続いており、メガタワーマンションも新たに登場する。

 

■江東区晴海五丁目再開発事業「ハルミフラッグ」

五輪選手村後の分譲4145戸、タワマンは五輪後に建設

 

2020年東京オリンピック・パラリンピックで選手村として使われたあとに分譲マンション、賃貸マンションとして供給される「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業」。今回のレポートのテーマにある免震・制震から外れるが、直近で最大の目玉プロジェクトであることからその概要を簡単に触れておく。

 

その事業のタウンネームが10月31日に「HARUMI  FLAG」(ハルミフラッグ)と決定した。三井不動産レジデンシャルや三菱地所レジデンスなど11社が参画するプロジェクトで、約13haの敷地に5632戸の住宅、店舗、保育所など計24棟を開発する。

 

2019年春にマンションのモデルルームを公開し、5月下旬から発売する予定だ。全5632戸のうち、分譲が4145戸、賃貸が1487戸となる。地上14~18階地下1階建てが中心。地上50階地下1階建てのタワーは五輪終了後に建設する。

 

選手村の役目を終えた後に改修する中層棟が2022年秋、五輪後に建設するタワー棟が2024年の春に竣工する予定だ。購入者の入居は、2023年春ごろから順次始まる。4000戸という大量供給のため、数期に分けて販売する。不動産マーケットの攪乱要因にならないよう相場並みとの見方があるが、価格設定が難しいところ。

 

同プロジェクトで一番のネックが交通利便性である。最も近い都営大江戸線の勝どき駅まで徒歩20分以上を要する。分譲・賃貸を合わせて1.2万人が居を構えるには、計画中の高速輸送システム(BRT)の輸送量では賄いきれない。

 

もちろん、こうした今後の大規模・タワーマンションにも、今回のデータ改ざんが相まって免震・制震技術にいっそうの注目が集まるのは必至だ。週刊住宅の報道によると、1955年から2018年9月末までの免震・制震マンションの物件数は、首都圏で免震411棟、制震187棟、なし6万4713棟と計6万5311棟となり、近畿圏は免震142棟、制震35棟、なし2万1098棟、計2万1275棟となっている。中部圏は免震138棟、制震12棟、なし1万1103棟、計1万1253棟である。

 

三大都市圏を除く地方エリアを含めた全国ベースで見ると、免震886棟、制震251棟、なし12万3229棟の計12万4366棟となっている。

 

 現状では、検査データ改ざんによる数値であっても、一定程度の大きさの地震で建物にダメージを与えるほどではないとのアナウンスも聞かれるが、現在の入居者やタワーマンションの中古購入を検討していた層に安心感を与える調査結果が待たれるところであるのは間違いない。