実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



都道府県地価調査

不動産産インフレを印象付ける

当面は強気も市況循環の節目を意識

 東京など大都市を中心に日本では地価上昇トレンドが地方にまで広がりを見せている。国土交通省が公表した7月1日時点の都道府県地価調査(基準地価)からそれが明らかとなった。ただ、基準地価や3月の公示地価は遅行指標である。このため、足もとではさらに地価が上昇しているかもしれないし、ピークアウトして調整局面に入っているかもしれない。しかし、印象としては、少なくとも対日不動産投資の好機は東京都心など大都市から地方都市に波及している。基準地価を追いながら不動産マーケットへの資金の流れを探ってみた。

 

 

■投資マネーは都心部から外に波及

訪日客の足跡から見える地価動向

 

基準地価を見ると、全国全用途の平均で1991年以来27年ぶりに上昇し、日本のマスコミ各紙はバブル経済以来の高値圏を一斉に報じた。商業地は、全国平均変動率が3年続けて上昇し、最高価格は東京・銀座の明治屋銀座ビルで1㎡当たり4190万円と前の年から7.7%上昇した。前年の基準地価の上昇率と比べて上昇率は鈍っているものの、都心部は相変わらず地価の上向き基調を維持している。

東京の住宅地は、千代田区・港区・中央区といった都心部から江東区や墨田区、江戸川区などの城東エリアや荒川区・足立区・北区といった城北エリアの上昇率がトップ10に顔を並べた。世田谷区や杉並区、太田区といった城南・城西エリアとの価格差が徐々に縮まってきた。

分譲マンションの新築坪単価は、従来の人気地で300万~350万円が当たり前となり、それを追い上げる城東地区で250万~280万円といったところだ。

三大都市圏は、住宅地・商業地ともに上昇基調を強めて、大阪圏の住宅地では4年ぶりに横ばいから上昇に転じた。大阪圏の最高価格は1680万円(前年比18.3%上昇)で全国10位となった。こちらも訪日客により心斎橋エリアの店舗需要や宿泊需要が押し上げている。大阪の地価は、求心力が梅田から心斎橋にシフトしているのが特徴だ。とは言え、梅田やその周辺を含めてニーズに陰りが生じているわけではない。商業用不動産は、大阪市中心の品薄感を受けて「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」(2022年完成)の引き合いは強いとの観測を散見する。

公示地価に続いて地価を押し上げた要因は、訪日客によるインバウンド需要である。札幌・仙台・広島・福岡の地方4市では、三大都市圏(東京・大阪・名古屋)よりも上昇率が大きく、住宅地で3.9%、商業地で9.2%とそれぞれ上昇した。

 住宅地・商業地ともに上昇率のトップは訪日外国人で賑わう北海道倶知安町だった。住宅地は33.3%、商業地が45.2%の上昇率を見せた。

住宅地の上昇率トップ3まで倶知安町で占めて4~10位で沖縄が独占した。商業地では、2~4位を含めてトップ10のうち5地点に京都市がランクインしている。こうした動向を見ると、人気のリゾート地や観光地を抱える地域の強さが浮き彫りである。

 

 

■マンション価格の年収倍率拡大

新築と中古の価格差も拡大傾向

 

不動産取引の規模については、日本不動産研究所によると、2018 年上期は約 2.1 兆円となっている。サブプライムローン問題が生じた2007年上期には約3兆円に達してピークを打ち、翌年リーマン・ショックの2008年下期には約1兆円まで市場が縮んだ。ただ、この10年で世界金融危機から回復に向かい、外資プレーヤーによる2017年下期の取得金額は過去2番目に多い7200 億円に達した。

これに加えて、日銀による大規模金融緩和によって市場にだぶついた資金が大都市部や観光地に向かったことで現在資産インフレを引き起こしている。

東京カンテイが公表している分譲マンションの「年収倍率」でも鮮明となった。年収倍率とは、マンション価格が年収の何倍かを示しているもので、東京都の2017年時点で平均年収556万円に対して新築の倍率が13.26倍となり、価格は7371万円となっている。神奈川県や埼玉県、千葉県も9~11倍台と高い。近畿圏平均も8.26倍で、大阪府や京都府などが9倍の高水準に達する。

中古マンションであっても、東京都が10.46倍、神奈川県が7.32倍の高水準であり、一般消費者が買いづらい状況に変わりはない。ちなみに埼玉県は5.90倍、千葉県が5.43倍である。中古マンションの成約価格は上昇している。

みずほフィナンシャルグループ系の都市未来総合研究所によると、2009年から2018年上期の間にかけて最も価格が低かった時期から直近までのマンション価格を比べると、東京区部が1300万円、埼玉県と神奈川県が500万円、都下と千葉県が400万円ほど上がっている。

新築価格の高騰に伴い今後は新築マンションの購入を検討する消費者が中古マンションを選択するケースが増加しそうだ。同研究所によると、新築マンションの平均価格の上昇ペースが中古マンションの価格上昇ペースを上回っているといい、価格差が最も小さかった時期と直近の価格差は、東京区部で700万円、都下が800万円、神奈川県が1000万円、千葉県が600万円、埼玉県が200万円になっているという。

年収倍率で特筆すべきエリアは沖縄県である。新築と中古のどちらのマンションも年収倍率が8倍台であり、それぞれ8.60倍、8.09倍となっている。沖縄県の平均年収389万円に対し、マンション価格は新築で3344万円(前年2829万円)、中古で3146万円(2761万円)である。この倍率は三大都市圏に匹敵する数字であり、新築が品薄のため中古が買われる側面があるとはいえ、平均年収から実需としては考えにくい。セカンドハウスや投資用として国内外の投資マネー流入が大きく影響しているのは間違いない。

 

 

■懸念材料は消費税率の引き上げ

米中貿易戦争など海外情勢も…

 

地価傾向を見ると、投資マネーが都心部から外に向かっており、雇用・所得の改善と低金利に加えて、消費者の交通利便性・住職近接といったニーズがマッチしたエリアを中心に住宅需要が堅調である。当面、不動産マーケットのアップトレンドは継続しそうで、複数のアナリストによると、2020年までの向こう2年ほどは底堅く推移するとの見通しだ。

外資や国内の機関投資家の強気の見方も散見する。ただ、行き過ぎた低利回りでの取引が続くようだと危険だ。山が高ければそれだけ谷も深くなり、市況が崩れたときに価格がつるべ落としになる可能性が高まるからだ。

その市況を崩す懸念材料がないわけではない。まずは2019年10月に予定されている消費税率の引き上げである。高級住宅ほど売れ行きが落ちてしまい在庫が増えて物件価格が下落に向かう。もう一つが海外リスク。米中の貿易戦争の行方に加えて、日本でも貿易摩擦が強くなって実体経済に影響を及ぼすことになると、サラリーマンの給与所得や、企業の賃貸負担能力が落ちてビル賃料や空室率にも悪影響を与えてしまうといった見方が不動産大手の中には少なくない。

日本の不動産マーケットは、経済動向と併せてつぶさに見ていく時期に来ているようだ。