実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



地価上昇、地方まで波及

ツーリズムと連動する不動産市場

東京都心、都区部に漂う天井感 

 

大都市部を中心に日本は引き続き投資マネーを引き付けているようだ。国土交通省が3月下旬に公表した地価公示からはそんな状況が見て取れた。今年1月1日時点の地価ではあるものの、全国の全用途平均と商業地は4年連続で上昇し、住宅地も2年続けて上がった。調査地点は全国2万6000地点。東京や大阪などの大都市部に限らず、札幌・仙台・広島・福岡の地方4市では全用途平均で5.9%、商業地で9.4%とともに大幅に上昇した。三大都市圏以外の地方圏にあっても住宅地が27年ぶりに上昇に転じ、商業地は上昇幅を拡大して2年連続で上がった。いずれもけん引役は訪日客によるインバウンド需要である。

 

 

適格物件探す外資勢の意欲は健在 上昇幅縮小も東京圏なお地価強含み

 

訪日客の増加に伴い店舗やホテル需要の高まりが地価を押し上げた。全国で一番高い地価は東京・銀座の「山野楽器銀座本店」で13年連続となった。1㎡当たり5720万円(3.1%上昇)と地価公示の最高値を更新した。訪日客によるホテル・旅館などの宿泊と店舗に対する需要の高まりが後押し。全国的にこのツーリズムが不動産需要を押し上げる構図がくっきり浮かび上がった。

 

↑全国最高の銀座・山野楽器本店

 

ただ、東京都区部では、人気地を中心に取引価格に天井感が漂っており、東京オリンピック・パラリンピック後に不動産価格が落ち込むのではないかとの懸念も高まっている。都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の新築マンションの1坪当たりの平均単価は500万円に達する。

 

「足もとの不動産仲介市況も厳しさが出ており、とりわけ銀行の不正融資問題などを背景に投資用マンションや実需向けでの成約が思うようにいかなくなった」(銀行系仲介)との声も少なくない。また、都心3区(千代田・中央・港)では、ホテルでの用地取引が増加しており、マンション向けでは手が出ない地価水準にまで上った。収益不動産向けの用地取引も依然として積極的に動いている。

 

このためマンション需要は、新築・中古ともに都心部からその周辺へと移っており、東京圏の住宅地上昇率トップ10を見ると、北区や荒川区、足立区などのエリアがランクインして割安な地域を探す行動を裏付けた格好だ。城北・城東などの住商混在エリアでは、都心への交通利便性が良い割に相対的に低い価格水準からの需要が上昇幅を拡大させている。

 

例えば、江東区住吉周辺ではマンション開発ラッシュである。地下鉄直通で大手町まで約10分、新宿まで約20分などのアクセスの良さに加えて、東京メトロ有楽町線の延伸事業「豊洲~住吉間」(8号線)の期待が集まっているためだ。豊洲~住吉間は、住吉駅(半蔵門線・都営地下鉄線)と東陽町駅(東西線)の間に新駅を作り、東陽町と豊洲駅(有楽町線)の間に新駅をつくる構想。路線延長は約5.2㎞。住吉駅から徒歩10圏で分譲・賃貸マンションの開発が相次いでいる。

 

商業地も同様のトレンドを示し、東京23区の地価は渋谷区を除いて上昇幅が拡大。高い上昇率は、台東区や江東区、荒川区、北区など周辺の区に移り、東京圏商業地上昇率トップ3は浅草エリアで占めた。

 

リテール間(個人間)の取引に慎重な姿勢が出ているものの、法人間の不動産取引は活発なようだ。外資勢の不動産投資額が昨年後半に失速したが、「これは品不足感、つまりお眼鏡にかなう物件がなくて物件を買えなかっただけで投資意欲は強い」(海外シンクタンク)。海外勢は、東京から地方都市に食指を伸ばしており、大阪や福岡、京都、北海道、福岡、沖縄では特に投資マネー流入が顕著である。

 

福岡、沖縄に興味示すアジア富裕層 再開発やインフラ整備で利便性アップ

 

大阪の心斎橋エリアは1㎡当たり1980万円(25.3%上昇)と、昨年梅田に取って代わった大阪圏トップを死守。外国人観光客によりドラックストアなど店舗出店意欲が地価上昇をけん引する。心斎橋やなんば地区の店舗・ホテル需要が後押しし、中央区などで高い上昇率を示した。大阪圏上昇率1位は、大阪市中央区日本橋1丁目のアーケード商店街「千成屋」(44.4%上昇)で全国上昇率でも2位に付けた。これを含めて大阪市内が計4地点入っている。

 

東京と異なり、大阪圏では分譲マンションの供給戸数も増加し、契約率も好不調の目安である70%を超えている。特に大阪市内のタワーマンションの販売がマーケットをけん引する。ただ、今後の販売価格もじわじわと高くなり、東京と同様な現象が到来することを想定する関係者が徐々に増えてきた。

 

世界屈指の観光地となった京都市の商業地では13.4%と上昇幅を拡大した。観光需要で特に東山区や下京区、南区、中京区などで高い。五条楽園では、旧遊郭の珍しい建築物に興味を持つ外国人や国内の若者が訪れて賑わいを見せており、これを契機に街の再生・ボトムアップを図る試みも始まっている。

 

地価公示では、北海道倶知安町が住宅地と商業地の両方で上昇率が2年連続全国1位だった。ここでは豪州や香港からのスキー客でにぎわいを見せている。沖縄でも日本国内からの移住ブームと訪日客需要が活発である。

 

沖縄では国際通りを中心に店舗・ホテルなど商業用不動産に対する投資需要が強まっており、商業地(17.5%上昇)は6年連続で過去最高値を更新した。住宅地も10.6%上昇しており、土地区画整理事業が行われ公共施設や商業施設が集積して住環境が改善した市中心部でマンションと戸建て住宅ともに強い需要が見られる。

 

不動産大手によると、分譲マンション価格は坪単価が足もとで220万円ほどといい5年前の約2倍に達する。「香港の富裕層は、北海道よりも沖縄でマンション購入を検討したいとの声が増えてきた。最近は沖縄の海でのダイビングに興味を示す」(不動産大手)。また、今年の夏頃に沖縄都市モノレール(ゆいレール)の延伸により利便性が増す。

 

福岡県でも博多駅周辺で地価が強含んでいる。国家戦略特区での規制緩和でビル30棟の建て替えを誘導する天神ビックバンプロジェクトによって天神エリアで高い地価上昇率を示している。福岡市の住宅地は5.3%(前年4.3%)、商業地が12.3%(前年10.6%)とともに上がった。

 

人口増を背景に福岡では住宅需要もおう盛であり、都心部と都心への近接性に優れた地域でのマンション素地に対する需要がひっ迫して中央区や東区、南区で高い地価上昇率となった。天神や赤坂エリアは分譲マンション開発が相次いでいる。天神駅から4つ目の西新駅では、不動産大手が地上40階建てのタワーマンション(総戸数306戸)を開発中で、九州で初めての億ションが登場する見込みだ。

 

世界的に金融引き締めが後退し、低金利政策が続く中で運用先を探す国内外の資金が日本の地方圏にまで波及している。