実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



売買仲介インスペクション導入始まる﹑中古住宅マーケット活性化に期待﹑買い主に安心感も、マンションには不向き?

住まい探しをする上で新築志向の強い日本では、新築の分譲マンションや戸建て住宅を購入する人が多い。ただ、人口の本格減少を受けて住まいを求める人よりも、住宅のほうが増えてしまい、家余りの状況になって空き家が社会問題化している。そこで政府は、これまでの新築重視の住宅政策からストック重視の住宅政策への転換を促進するため、建物検査・保証、住宅履歴情報の普及促進など規制改革を進めることで老朽化マンションの再生などを掲げている。つまり中古住宅の取引を活性化することに力を入れている。


中古住宅の売買成約件数は徐々に増えている。特に新築分譲マンションは、価格が高騰したことで中古マンションを買い求める人が増えた。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)のデータによると、首都圏の中古マンションの成約件数は2016年に3万7189件となって初めて新築マンションの成約件数を上回った。2017年は成約件数が3年ぶりに前の年を下回り3万7172件となったものの、2年連続で3万7000件台をキープしており、新築に手がとどかない一般消費者が中古マンションに関心を寄せる構図は続いている。


新築マンション供給は、首都圏ですでに飽和状態の感が否めず、好立地に開発するのが難しくなっているのが実態である。一方、中古マンションの強みは、すでに好立地を抑えている点にある。東日本レインズによると、2017年まで5年連続で価格が上昇して中古マンションの割安感は徐々に薄らいでいるとはいえ、新築では得難い好立地にありながら築年数が経過していることで新築に比べて割安感がある。
不動産調査サービスの東京カンテイは5月7日に首都圏の新築マンションの割高感と割安感を駅ごとに調べた。分譲マンションの新築価格が、同じ駅圏の分譲マンション賃料の何年分に相当するかを求めた値を「マンションPER」として指数化し、数字が低いほど割安で購入しやすい、指数が高いと割高で購入しにくいと判断する。


それを見ると、都心一等地の東京メトロ銀座線の青山一丁目はPER45.26、70㎡換算の販売価格は2億円を超えて最も割高となっている。2位は同麹町の37.12(1億5411万円)、3位が横浜高速鉄道みなとみらい線の元町・中華街で36.37(9937万円)だった。青山一丁目と最も割安なJR常磐線の柏(14.97=3701万円)ではPERに3倍の開きがある。

■中古住宅の情報格差をなくし売買活性


こうしたデータからも都市部を中心に中古を選択せざるを得ない環境は当分続きそうだ。ただ、建物は築年数とともに劣化するのが当たり前で、消費者はその部分で購入をためらうというのも事実である。そうした心配を解消する狙いとして、今年4月1日付で施行された「改正宅地建物取引業法」では、中古物件の取引にあたって宅地建物取引士(宅建士)に重要事項説明のほかにインスペクション(建物状況調査)の説明義務が加わった。


媒介契約を締結する際に、宅建事業者は、建物状況調査を手掛ける事業者の斡旋の有無を示して媒介契約者の意向に応じて斡旋する。インスペクションを実施した場合は、重要事項説明のときにその内容・結果を買い主に説明しなければならず、売買契約を締結する際には建物の状況を売り主と買い主の両方に書面で示すことになっている。安心して中古住宅が購入できるということを消費者のマインドに訴えるのを狙いとする。


建物状況調査では、構造耐力上主要な部分と雨水浸入を防止する部分など国が定めた項目に絞って調べる。新築と比べると、中古物件の情報は不足しているのが現状であり、その情報の部分で消費者と不動産会社とのギャップを縮められることで買い手に安心感を与えて中古住宅マーケットの活性にもつなげる。


しかし、建物状況調査は、瑕疵(不具合)の有無を判定するものではなく、瑕疵がないことを保証するものでもない。単に『調査済みである』ということを証明しているに過ぎないので、適正に調査を実施していれば、調査時に判明しなかった隠れた瑕疵に対する責任は調査会社にも不動産仲介会社にもない。例えば、移動させるのが難しいピアノや家具などで調査が困難な部分は調査対象から除かれることもあるが、ここの責任を負うこともない。


このため保険の併用をせざるを得ない。国土交通省としても「既存住宅売買瑕疵保険」の活用を想定している。国土交通大臣指定の保険法人が取り扱う既存住宅売買瑕疵保険を見ると、建物状況調査後の引き渡しから最大5年間を保証している。住宅保証機構の保険では最大1000万円を保証する。

■調査の有無が将来の評価額に影響も……


ただ一つ、今回の建物状況調査に対する懸念として、マンションなど集合住宅でのニーズにマッチしていない点が挙げられている。集合住宅は、専有部に限らず共用部の検査が必要であることから、管理組合の了承を得なければならない。買い主の要望に応じてインスペクションの事業者を斡旋したところで実現しないとの見方が大勢を占めている。


仮に買い主の要望に応じて売り主がインスペクションをできたとしても、その結果が適正なのかという問題も今後出てくる可能性が少なくない。複数の専門家は、欧米などインスペクション先進国にあっても当初は、売り主と検査・仲介会社の癒着によって売り主と不動産仲介会社が売却しやすいように調査書が改ざんされたケースが少なくなかったと指摘している。日本も、そうした利益相反が発生しないような仕組みづくりが必要だとしている。


最も適正だと判断できるのは買い主による建物状況調査だと言われている。「もっとも、買い主としては自腹を切ってまでインスペクションをしない。実際に買い主に聞いたところ、自分が調査にお金を払うのならばインスペクションをしないでいいとの回答がほとんど」(仲介大手)なので買い手側がリスク管理に関する土壌が育っていないも現状である。
また、インスペクションの調査結果、診断結果にばらつきがあって調査員の能力に格差があるといった声も多い。いずれにしろ、足元では、これからの運用を見ながら問題点を洗い出して精査・制度向上につなげなければならない。


ただ、インスペクションについて制度上の不安などおぼつかない部分があるものの、これからは、中古住宅の価値を単に経年だけで判断するのではなく、インスペクションの結果をもとにしたリフォーム・リノベーションを行い、建物の評価額に反映させていく時代に突入することはほぼ間違いない。このため、インスペンションによって品質に裏付けがある住宅(マンション・戸建て住宅)と、裏付けのない住宅で評価額に差が生まれ、それが売り値や資産価値に大きく反映される。インスペクションが中古の資産価値を判断する一つのベンチマーク的な役割を果たすことになりそうだ。