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不動産レポート



日本の不動産投資、これからのポイント

事業性を重視して物件を選ぶ

個人向け市場、潮目の変化に対応を 

 

「日本の不動産投資市場に潮目が訪れた」。そのように指摘する声が増えている。とりわけ個人が主戦場とするマーケットを指しており、富裕層であったり、高所得者やサラリーマン大家といった領域である。女性専用シェアハウスを舞台に昨年発覚したスルガ銀行の問題に端を発している。不動産事業者が顧客(個人投資家)の預金残高のデータを改ざんして実際の預金額よりも多い金額を銀行に提出するなどの不正融資が明らかになったからだ。これに伴い金融機関は一斉に融資を絞り込み始めた。融資が受けられずに投資をあきらめる人が増えたりすることで、対象となる物件の価格が下落していく可能性もある。ただ、価格が今以上に上昇せず下落に転じるのならば新たな買いの好機だと判断する投資家も少なくない。日本市場でのこれからの不動産投資のポイントを探った。

 

金融資産を持つ人と持たぬ人 金融機関の融資姿勢がくっきり

 

足もとの銀行業界は、厳しい状態にある。大規模な金融緩和とマイナス金利の導入によって利ざやが取りにくい環境になっている。高い金利を適用したいが、金利を下げないとローン商品が売れない。そして、利ざやが取れずに赤字になっている。まじめにやっている銀行が倒れそうになり、不正融資のようなことをして、まじめにやらずに金利を高くして他の銀行が融資をしないリスクの高い不動産にどんどん融資する銀行が勢力を伸ばしてきたことがマーケットに変調をもたらし始めた。

 

不正融資を受けて金融機関の審査姿勢が厳しさを増したのは間違いない。個人向けは特に厳しい。ある銀行の融資担当者は、金融資産を持たない人は無理だと言い切り、担保が取れないというよりも、自己資金を持たない人は門前払い。つまり、年収が高くても億円単位の融資を実行する金融機関が激減した状況になっている。

 

東京都内の不動産価格は高止まり、ピークアウト感がある中で、融資を活用してのリターンでは収支が合わない状況に陥っている。都内の銀行や信用金庫、信用組合など複数の金融機関では、「優良物件が高すぎて今の市場価格と金融機関の評価との乖離が軒並み数億円単位で開いており、乖離率が3~4割のケースが最も多いのではないか」と明かす。銀行の保守的な観点における担保評価の額が追いつかないのが実態のようだ。例えば10億円の売却であれば評価は5億~6億円となる。残りを自己資金で拠出できる個人は少ない。

 

最近は、建物の老朽化が進んでいる中古物件を購入してリノベーションする。古民家再生も人気でもある。こうした物件は減価償却で価値が減少しているので、利回りが基本的に高くなってその利回りに引かれる人が多いものの、銀行や信金、信用組合には、建物の残存耐用年数が融資の返済期間となる原則があるため、残存耐用年数が少ないと融資を受けるのが難しくなる。

 

一方で、金融機関として、お金を貸せない状況は、ある意味ビジネスモデルが壊れることとイコールである。そのため、しっかり頭金を支払えて、一定の金融資産を持っている個人の不動産融資には応じる。融資姿勢が絶えたわけではない。「不動産購入するならば頭金を入れる」という昔ながらの融資スタイルに戻ったとする専門家の見立てが大勢を占めている。100%ローン、諸費用まで賄う120%ローンという時代ではなくなった。

 

東京都心部に居住する個人投資家Aさんは、「仮にフルローンを考えた場合、ワンルームマンションの場合で2%台まで、一棟マンションで3%台までが融資金利の限界だと考えて、それ以上の金利になると見送っている」といい、低金利で融資を引っ張れるのは十分な金融資産を持っていたり、十分な頭金を持っていると金利交渉が有利になるとアドバイスする。

 

マクロ指標を鵜呑みにしない BS/PLを毀損させない運用を

 

不動産仲介事業者も一棟マンションのような大きなロットを勧めることが少なくなり、1000万円以上の頭金を拠出できる投資家に対して区分マンションや小規模一棟アパートなどを紹介する例が増えている。

 

マーケットの二極化拡大が続いており、価格高騰に伴い利回りの低下が進んでいる。金融緩和が限界に近づいたという指摘が多くなったものの、外国人投資家の見方として、総体的に日本での不動産投資は資金調達の面で有利な状況が続くと見ている。東京の現状の利回り水準が4~5%であっても魅力的に映っているのは香港やシンガポールなどに比べると割安感が強いからだ。

 

日本不動産研究所の調査によると、ハイエンドクラスの高級マンションの2017年10月時点の価格水準を、東京都港区元麻布地区を100とした場合、香港が187.1、ロンドンが220.6、シンガポールが110.2、上海が132.6などと軒並み高い水準を示している。

 

そうした中、2020年東京オリンピック・パラリンピックが終了したあとの市況悪化の不安を払拭するためには、運用資産のバランスシートを健全に保つことが欠かせない。バランスシートが毀損する、いわゆる運用状況が債務超過に陥ってしまっては運用の意味をなさないので、財務体質をきっちり改善することの重要度が増している。

 

銀行など金融機関と同様に、事業性を無視しての不動産投資は成り立たない。築古物件や違法物件、反社会勢力の人が住んでいる、建物に瑕疵があったり、旧耐震物件などには手を出さないというのが不動産投資の基本的なところであることは言うまでもなく、その上で収益性を追求するために、立地や需要など事業としての成長性に焦点を絞ってリスクに見合った利回りが取れるようにすることだ。それによってバランスシート(BS)と損益計算書(PL)の健全化につながる。

 

それに加え、不動産投資に参加する時期は目的や運用期間など個々によって違うことも押さえておきたい。「この価格で売ってもいい」という人と、「この価格で買ってもいいよ」という人のマッチングの問題であるのが不動産取引の特徴である。

 

そうした観点から、不動産投資に成功している個人の中には、不動産市場のマクロ的部分は直接的にはあまり参考にならないという人も少なくなく、そうしたマクロ指標に依存して判断するといつまで経っても物件を買えなくなってしまうと指摘する。

 

マスコミ大手やシンクタンク、経済評論家などの専門家で話されているマクロ的なマーケット感を鵜呑みにしないで自分で分析してみることや信頼できる不動産会社などの専門家に相談に乗ってもらうことも潮目の変化に慌てないで済む不動産投資となりそうだ。