実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



2017年不動産市場を振り返る:分譲住宅は及第点・商業用物件は安定感増す【東京都心に需要集中の1年】

住宅・不動産業界は、東京都心の一部でバブル経済期を上回る水準にまで地価が高騰し、分譲事業や商業用不動産の価格が跳ね上がっている。2020年の東京オリンピック開催まで3年近くを残すなかで、すでにピーク感が募っており、五輪待たずに市場がピークアウトを迎えるとの見方が強まっている。2017年1年間の不動産マーケットを俯瞰する。

 

●新規供給・契約率の回復感鈍い 人気のマンションは高所得者集まる

 

分譲マンションの新規供給を見ると、首都圏は2016年から引き続き縮小傾向が顕著だった。不動産経済研究所の毎月の発表の数字を見ると、供給・契約率ともに回復傾向が見られず、契約率は直近10月までの3カ月連続でも好不調の目安である70%を割り込んだ。


昨年は、消費増税の動向がはっきりしなかったなどで供給のタイミングを逸したことが大きいが、2017年は、供給立地が足りなくなってきたことと、材料や人手不足などに伴う建設コストの上昇が影響した。マンション向けの用地確保では、インバウンド需要を背景にホテル開発との競合が激しく入札ではホテル開発の後塵を拝するケースが少なくなかった。

 

不動産協会が会員を対象に実施した「マンション供給動向調査」でも10月を見ると、首都圏の分譲戸数は1949戸で、前月の2759戸から29.4%と大幅に減少した。1年前との比較でも24.0%減らした。初月契約率は67.6%、前月の68.8%から1.2ポイント落ち込んだ。平均分譲価格は5765万円となり、前月の6010万円から4.1%下落した。

 

ただ、不動産協会の菰田正信会長(三井不動産社長)は、「マンション市況としては全体的に好調だ」と判断している。これは、東京都内の目玉物件の販売が好調に推移したことから出た言葉だと類推できる。実際、三井不動産レジデンシャルなどが今春販売した「ザ・ガーデンズ東京王子」(総戸数864戸)は、エアリーコート(452戸)とブルームコート(255戸)が完売し、最終街区の販売もスタートしている。東京建物は、都心部で「Brillia Tower 代々木公園 CLASSY」(地上19階・総戸数195戸)を手掛けて1期で100戸超を即日完売した。「パークタワー晴海」(総戸数1076戸)では1期で300戸を超える発売となった。

 

大手が開発・供給するこれのマンションは年収もしくは世帯年収が800万~1000万円を超える層が買い付けている。平均的なサラリーマンの年収500万円前後では買いにくい。

 

こうした状況を踏まえ、大手不動産会社では、「サラリーマン向けの物件は、かなり高い水準のまで達しているものの、都心3区(千代田・中央・港)に限っては価格上昇の余地を残している」(菰田会長)とのマーケット感になっている。2017年の新規供給戸数としては3万戸半ばから後半にかけての水準と見られ、4万戸割れが続きそうだ。

 

新築分譲マンションに手が届かない消費者は中古マンションを物色してきたが、この中古物件の価格も高騰したのも今年の特徴だ。アットホームが調べた首都圏10月の中古マンション価格動向によると、都区部の平均価格は、同社が調査を始めて以来過去最高となった。東京カンテイの同月の調査では、都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)が前月比横ばいだったとは言え7327万円と依然として高水準の7000万円台をキープしている。

 

中古物件の品質が高く、低金利といった物件取得環境の良さが続いていることで、不動産流通業界からは、「アベノミクスの恩恵を受けている人が人気物件を物色している」ほか、「マンション転売業者の活発な動きが価格を押し上げた」といった声が着かける。投資用物件も同様で収益物件サイトの健美家(東京都港区)によると、11月の一棟マンションの価格は1億7045万円と2009年4月以来の高値圏を記録している。

 

東京湾岸エリアの資産価値(価格)の上昇にもスポットが当たった。リスト・サザビーズ・インターナショナル・リアルティによると、同エリアの資産価値は10年余りで1.5割り増し。2004年に4300万円で購入した住戸が6300万円で売却できた例もあった。

 

2017年不動産市場を振り返る

 

●オフィスビルは不足感強い1年 賃料・稼働率も安定して推移

 

商業用不動産マーケットはビル不足が強かった。だが、賃料や稼働率は好調に推移して賃貸業としての安定感は申し分ない1年。みずほ証券の石澤卓志氏は、「一部に空室が目立つビルがあるが、これは相当に賃料を強気に設定しているからであって需要が弱いからでない」と話す。不動産協会の菰田会長は、「ビル市況を見ると、需給はタイトでほぼ満室稼働だがもう少し空室率が下がる可能性がある。2018年以降からビルの新規供給が増えるものの、経済・景気の回復が持続することで十分に吸収できるマーケットだろう」とも話す。

 

ザイマックス不動産総合研究所が11月にまとめた2017年第3四半期(7-9月期)のオフィスマーケットレポートによると、東京23区のビル空室率は3%台と依然として低水準で推移している。新規の成約賃料も再び上昇に転じた。

 

空室率は前期比0.38ポイント低下し3.28%だった。賃料水準を示す新規成約賃料インデックスは前期から5 ポイント上昇して109となり、成約賃料DIは前期比7ポイント上昇してプラス13と大幅に上昇している。

 

フリーレントも短期化傾向が続いて平均月数は3.3カ月と前期から0.4カ月短くなった。この期中に竣工した主なビルは、赤坂インターシティAIR(2万4806坪)や神宮前タワービルディング(6941坪)などがあった。

 

総体的に商業用不動産のマーケットは安定感が増し、新規のビル供給が少なかったものの、新たな一手を打つ動きもあった。政府が推奨する働き方改革が注目を浴びるのに合わせて、多様な働き方を実現するとして三菱地所では、今年2月に「大手町パークビルディング」を竣工。オフィスビルでありながら住機能を備えており、シンガポールのアスコット社による最上級のサービスアパートメントを併設した。就業者専用のラウンジや店舗、保育所など約500坪も整備し、新しい働き方改革に対応したオフィスを提示することになっている。

 

こうした商業用不動産に限らず、レジデンシャル部門の賃貸マーケットについては、相続対策に対する需要が多いが、貸家の新規着工戸数にようやく一服感が出てきた。

 

相続増税を受けて地主が賃貸マンションやアパートを建設する動きが相次ぎ、人口減少が本格化する中で供給過剰が募っていた中で、需要に関係なく供給を増やした結果、貸家の空室率は上昇したことに加え、需要が強いエリアと弱いエリアの地域格差を鮮明にしたのも特徴だった。こうした賃貸物件の開発を積極的に展開していた事業者は、当局や専門家などの指摘から地主に収益物件を強く提案することがしづらくなった。