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不動産レポート



加速する円安で外国人に買いやすさ

日銀、金融政策の変更はいつか

来春まで緩和マネー縮小なし 1ドル130円は通過点 

 

円安が止まらない。1ドル130円台に乗せて20年ぶりの円安水準。海外投資家にとっては、その分、日本の資産が買いやすい環境になっている。日本の不動産価格は東京オリンピックが終わった後も上がり続けており、首都圏の新築分譲マンション価格を見ると、1980年代後半から1991年かけてのバブル経済期を超えている。日本人から見れば、高嶺の花だが、海外投資家から見ればバブル超え価格を円安が吸収する。米国は、インフレ経済を抑え込もうと利上げに踏み切ったが、日本はゼロ金利政策を維持している。その日米金利差を受けて円が売られているが、どこまで円安が進むかを探る展開となっている。

 

主要先進国は、新型コロナウイルスの感染爆発によりダメージを受けた経済を建て直そうと一斉に利下げに踏み切り、国債を買い入れるなど大規模な金融緩和を進めて市中に溢れたマネーが不動産や株式などのリスク資産に向かった。言ってみれば資産バブル、コロナバブルを誘発し、ニューヨークやロンドン、シンガポール、香港の不動産価格は高騰した。

 

株式や不動産だけでなく、食料や生活必需品も値上がりし、そこにロシアがウクライナに軍事侵攻したことで資源価格の高騰に拍車をかけてエネルギー価格の上昇は深刻となった。

 

米国はインフレ退治として利上げに踏み切った。ロシア・ウクライナ戦争で利上げを思いとどまるか? といった観測も侵攻当初に一部で見られたが、40年ぶりのインフレ率を抑えることを最優先とした。中央銀行に当たるFRB(連邦準備理事会)は5月4日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を0.5%引き上げて年0.75~1.00%にすることを決めた。0.5%という大幅な利上げは22年ぶりである。コロナ禍で膨れ上がった国債などの保有資産を縮小する姿勢も強めている。

 

日銀は、加速する米国の利上げを横目に見ながら金融緩和政策の維持を続けている。日本が利上げに踏み切らない限り円安は止まりそうにない。

 

日本が抱える借金は2021年時点で1212兆円を上回る。GDP比で237%。国民1人当たり1000万円近い借金を背負う計算だ。世界で最も借金を抱えている。利上げに踏み切れば、その利払いに窮するため、もはや日銀は利上げに踏み切れないという世間の見方もある。

 

一方で国民の金融資産は増え続けている。日銀が3月17日に公表した資金循環統計を見ると、2021年12月時点で家計が保有する金融資産は初めて2000兆円を突破した。コロナ禍での株高と1人当たり10万円の給付金などが家計の金融資産を増やした。2000兆円のうち1092兆円が「現金・預金」が占めている。投資よりも貯蓄性に向かう国民性が1000兆円を上回る国の借金漬け体質を支えている格好である。

 

 

資源高の長期化が経済下押し圧力

 

利上げができない状況とはいえ、日銀が日米金利差を放置し続けることは円安の定着を意味する。米国など先進諸国が利上げに舵を切る中で、金融政策を変更する時期を模索する動きが注視されている。日銀総裁である黒田東彦氏の任期は2023年4月8日までで、それまでは低金利政策の維持が続くとの見方がもっぱらである。来春まで金利の引き上げはなく、緩和マネーが市中に流れ続ける構図が続く。資金調達環境は良好な状態が続きそうだ。

 

ポスト黒田が焦点となる。この春に政府は、日銀審議委員にタカ派色の強い人事を発令した。金融緩和を推すリフレ派が減ることで、ポスト黒田の利上げを見据えた動きとの見方が広がっている。外資大手証券の一角は、「マーケットは長期金利だけでなく今年の後半から短期金利の上昇も盛り込み始める」と審議委員の人事が金融引き締めの地ならしではないかとみる。ちなみに、住宅ローン金利の固定型は10年国債利回りを指標とするが、変動金利は日銀の政策金利に連動している。

 

FOMCは5月4日の会見で今後の2会合でも0.5%の追加利上げを表明している。日米金利差は来春まで広がり続けるのが必至だ。こうした動きを受けて1ドル130円は通過点に過ぎないとの指摘も少なくない。140円、150円もあり得えるなどとの声も……。

 

なかには、仮に日銀がマイナス金利を解除するなど利上げに向けて動き出しても円安傾向が続くとの指摘もみられる。円安の解消には、金融政策だけでなく日本経済の復活が欠かせないということだ。ロシアの軍事侵攻などで資源価格が上がり続ければ、資源を輸入に頼る日本は貿易赤字が続き、経済の弱さを嫌って円が売られる展開が予想できる。経済悪化を食い止められるかがドル・円相場を左右する。大敵はロシア・ウクライナ情勢。世界が脱ロシア産に動いており、資源価格の高騰は高止まりが長期間に及ぶ可能性が高く経済の下押し圧力となる見込みだ。

 

東京都心の物件資産価値は上昇中

 

日本の不動産投資を好機と捉えることもできる。東京都心であっても、前述したように米欧など主要都市などに比べてれば割安であり、円安がさらに割安感を演出する。日本人では、手を出しづらい水準まで値上がりしている物件を容易に狙える。東京カンテイが5月9日にプレスリリースした「分譲マンションの収益ランキング2021(首都圏)」を見ると、都心の資産価値が上がり続けていることが分かる。同調査は、マンション竣工から10年間賃貸運用して売却したことでどのくらいの利益を得られるかを駅ごとに調べたものだ。

 

首都圏の1位は、東京メトロ南北線「六本木一丁目」駅だった。新築分譲時の平均坪単価は483.6万円、10年後に中古として流通時の平均坪単価が1021.1万円である。その差益は826.2万円になっており、その内訳を見ると、売却益が坪537.5万円で、運用益が坪288.7万円である。トップ5には、「麻布十番」(売却益+運用益=491.9万円)、「赤羽橋」(同472.6万円)、「代官山」(同437.3万円)、「芝公園」(同409.6万円)がランクインしている。上位30駅に入った全駅がJR山手線エリアとなって特に港区に位置するのが12駅と最も多い。

 

都内でも千代田区や港区、渋谷区、目黒区といった人気エリアでは、交通の利便性などの立地の優位性に加えてステータス性が加わっていることで富裕層から引き合いが強い。最近では、渋谷区広尾で10億円を超える築浅物件(戸建て住宅)が売り出されるなど高級住宅の取引は活発に動いている。そうした高級住宅は未公開物件として売り出されることが少なくない。さらに円安が進むことで海外の富裕層がどう動くか注目され始めている。