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不動産レポート



大都市はコロナの影響を吸収─2020年日本の都市評価、京都が3年連続1位

地方都市にも投資好機が増えるか 

 

新型コロナウイルスで揺れている2020年。東京五輪・パラリンピック開催が1年延期とされ、感染防止対策としてステイホームが叫ばれての外出自粛やテレワークの普及など社会経済活動は様変わりしている。向こう数年は、活発な人の交流が難しく、国をまたいだ交流も難しい局面が続きそうだ。これまで日本は、訪日客(インバウンド)の急増により経済が潤い、特に訪日マネーは商業施設の収益性をアップすることを反映して商業地も上昇を続けてきたが状況は一変。都市力の評価は変わってきそうだ。その都市力の変化が住宅・不動産の需要にも影響を与える。そうした中で、直近の都市の評価が発表された。

 

森記念財団都市戦略研究所は9月3日、「日本の都市特性評価」をまとめた。今年で3回目となる。それによれば、都市評価が最も高い総合スコア1位は3年連続で京都となり、2位が大阪市、3位が福岡市となった。大阪市が初めて2位になった。

 

国内109都市を経済力や暮らしやすさなどについて採点して結果を発表したものだ。「経済・ビジネス」「研究・開発」「文化・交流」「生活・居住」「環境」「交通・アクセス」の6分野・83指標を用いて評価し、4位以下トップ10は、横浜市、名古屋市、神戸市、仙台市、金沢市、札幌市、松本市の順番となっている。

 

上位3位都市を見ると、京都市が評価されたのは文化・交流や研究・開発の項目だった。特に文化・交流に対する評価は109都市の中で最も高く、観光地の数、文化財指定件数、景観まちづくりなどの「ハード資源」の評価が群を抜いている。大阪市は、経済規模の大きさや新規の商業用不動産の供給面積の大きさに代表されるビジネス環境の良さが評価されているほか、生活・居住などでもスコアを伸ばした。

 

3位の福岡市でも経済・ビジネスに加えて、交通・アクセス面での評価が高い。他の都市と違い特筆すべき点として、前述の2分野だけでなく文化・交流、研究・開発、生活・居住の領域であっても評価が高い。成長を続けるバランス型都市と評している。8位の金沢市(石川県)は「文化を育む住みやすさを備え合わせた城下町」として相変わらず評価を上げ、トップ10圏外でも出雲市(島根県)や立川市(東京都)、安城市(愛知県)に注目。熊本市では弱みだった環境が改善し、前年の22位から16位に躍進した。

 

これらに加えて、新たに魅力的な都市を追加しており、42位の安城市(愛知県)や29位の立川市(東京)、49位の出雲市(島根県)などを挙げている。

 

 

コロナ影響前の都市評価

 

こうした全国の109都市とは別に、森記念財団では東京23区も同様に評価した。それによれば、都区部での評価1位は千代田区、2位が港区、3位が中央区とトップ3はこれまでと変わらず。特に千代田区は、経済と生活・居住、交通・アクセスが23区の中で最も評価が高い。文化・交流では、ホテルなど高級宿泊施設客室数やイベントホール、国際会議・展示会開業件数などの指標が高い。

 

2位の港区は、経済、文化を中心に進化を遂げているバランス型都市と評した。経済・ビジネス、文化・交流では突出した強みを持つとし、研究開発や暮らしやすさでも評価を上げているのが特徴だ。3位の中央区は、「交通利便性と居住環境が強みの活気あふれる街」とした。特に環境面では、都心3区の中で最も高い評価を得ている。電気自動車(EV)充電スタンドの多さや水辺の充実度が高いスコアとなっている。都心でありながら利便性と自然環境を備えた住みやすい都市としている。

 

ただ、これらの調査は、新型コロナ感染の影響が反映されていない。このことについて、評価作成に携わった明治大学名誉教授の市川宏雄氏は「交流人口の多い都市はコロナの影響が大きく、今回のコロナによるシミュレーションでは、少なからず人の動きが都市から郊外に動くだろう」と説明している。今後は、各都市が自らの特性を踏まえながら工夫する必要していく必要があるする。

 

その上でコロナ影響を踏まえて、全ての都市で経済が一定程度悪化し、訪日客の減少が元に戻るには数年を要すると見る。海外からの往来が減り、それに伴い国際会議の開催件数も減少すると見立てている。働き方改革も進むことで柔軟なワークスタイルが生まれて勤務地も多様化すると見ている。

 

これにより、109都市の上位7市(京都・大阪・福岡・横浜・名古屋・神戸・仙台)と東京23区の上位6区(千代田・港・中央・新宿・渋谷・文京)の総合ランキングのスコアが下落し、それ以外の都市や区の多くが相対的にスコアを若干引上げると予測。ただし、現行の順位変動が大きく変わるまでには至らないとした。ただし、国内外からの交流人口の往来の多い東京や近畿圏の都市では、文化・交流分野でのマイナス影響が大きいとする。

 

また、人の動きが地方、郊外への流れが強まることで都市部の二酸化炭素(CO2)が減少する可能性があり、交通量の減少で都心部を中心に渋滞もやや緩和されるとする。

 

(出所:森記念財団都市戦略研究所)

 

スマートシティの進展がカギに

 

こうした状況を踏まえながら、市川名誉教授は、東京や大阪に限らず、全国の地方都市の魅力を引上げるためには、スマートシティの実現が重要だと強調。スマートシティは人工知能(AI)やビッグデータなどデジタル技術を活用した都市作りのことで、キャッシュレス決済や自動走行車両の導入、行政手続きのIT化などのデジタル社会創出への取り組みだ。

 

人口が減少する中で、いかに効率よく住みやすい街づくりができるかだ。コロナ禍で一気に注目を集めたリモートワークにより東京への一極集中が緩和されることで地方の活性化とともに、地方でもビジネス好機が生まれる。リモートワークでのビジネス環境と教育環境、遠隔診療などが実現すれば新たな社会が開けるとの期待が多い。

 

しかし、「日本の場合は、何か新しいことに取り組む際に規制改革が進まない。スマートシティに向けても同様に進んでいないので、都市の評価に影響を与えていない」としている。コロナ禍では、スマートシティに欠かせないデジタルインフラの整備が遅れていることを図らずも露呈している。自民党では「地方創生・未来都市推進議員連盟」を立ち上げて自治体を支援する意向を示している。

 

これからの焦点は、新型コロナの終息後に向けての街づくりとなる。京都や大阪などの文化・交流に強みのある都市は引き続きそれらを軸に都市力を一層高めることが求められるとした。都市圏の要としてバランス力を持つ福岡や横浜、名古屋、神戸、仙台に加えて、今回スコアが減少した札幌や広島では、新たな働き方への柔軟な対応を先進的に取り組むことで他都市に抜きん出た都市づくりが必要だとしている。

 

東京23区については、フレキシブルなワークスタイルの増加に伴う勤務地の多様化などの新たなニーズへの取り組みが鍵となる。そこにはコンパクト化と快適な集積地を創出することで今まで以上にダイナミックな街づくりが求められているとした。