実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート

不動産の選別でマネー流入

老後資金2000万円問題が投資家を刺激か

コンプライアンス欠如で失った信頼回復に照準 

 

過熱感が漂っている。国土交通省が3月に発表した公示地価に続き、7月1日に国税庁が発表した路線価でも同様にインバウンド需要が地方都市を含めて地価を押し上げているのが鮮明だ。全国平均は4年連続で上昇し、東京・銀座の鳩居堂前の地価は1㎡当たり4560万円(前年比2.9%上昇)と34年連続で全国の最高価格となった。沖縄、東京、宮城、福岡、京都など大都市圏や観光地が上昇。石川県と温泉で人気の大分県も27年ぶりに上昇に転じ、観光需要の強さをうかがわせた。ただ、東京都心部などの上昇幅は前年に比べて縮小しており、地価に天井感がうかがえる。投資資金が物件選別を本格化する時代に突入した。

 

一連の不祥事がもたらした衝撃、実利を追う市場に

 

不動産市場を俯瞰して見ると、投資マーケットの様相が変わってきたことがわかる。特に個人投資家に対する融資審査が厳しくなった。女性向けシェアハウスを舞台に不動産会社と金融機関で不適切な営業と融資が明るみに出たことと、賃貸開発大手の施工不良問題などの不祥事が相次いだことを受けて、金融機関が不動産向け融資を絞り始めたためだ。マクロ的な見方として、低金利の継続が見込まれ資金調達環境が良いことで不動産市場は全般的に底堅く動くと見られている中にあって気になるところだ。

 

銀行や信用金庫、信用組合を対象に昨年秋に実施した投資向け不動産融資についてのアンケート調査を金融庁が今春まとめたところ、投資家の財産・収入を証明する資料を物件販売会社経由で入手する場合に原本を必ず確認する銀行は25%、インターネットバンキングの預金残高で必ず原本確認する銀行は11%、信用金庫・信用組合が7%に過ぎない実態が明らかになった。

 

融資関係書類の改ざん、二重契約や金融商品の抱き合わせ販売、不動産事業者の悪質な行為、物件価格の水増し。これら一連の出来事が投資意欲を減退させる可能性を指摘する声がある一方で、金融庁が老後資金として2000万円を自分で用意する必要があるとの報告書を出して国会で論争になったが、これが逆に個人の不動産投資意欲を刺激して積極的に不動産を購入する方向に向かわせるとの見方もある。実際、中古ワンルーム販売専業者によると、2000万円問題がクローズアップされたあとに投資セミナーに参加する人や問い合わせの電話が増えているという。

 

個人投資家が主戦場とする賃貸住宅の稼働率も利便性と賃料の見合いで決まるが、特徴のある賃貸経営をしないと人口減少下では生き残れない。これからは外国人や高齢者など社会構造の変化を捉えながら需要が見込める場所での賃貸経営が求められる時代となっている。

 

また、入居者の動向にも目を配る必要がある。収益物件の入居者は単身者が多いことから、通勤・通学の利便性の高い立地を好みやすいが、東京都心部など人気エリアは狭小であるのに賃料が高い。本当は東京23区内で、もっと言えばその中でも好立地に住みたいが、それがかなわず東京都心へのアクセスが良い郊外エリアを選択するなど、いわゆるブランドが確立された街よりも無名の立地であっても生活の質が保たれる実利を追う傾向が強くなっている。

 

これは賃貸にとどまらず、分譲マンションでも同様の動きがじわりと出ている。その一つとして、小田急不動産では、リニア停車駅指定に伴う駅前再開発予定の神奈川・橋本エリアに総戸数425戸の新築分譲マンションを今年12月に第1期を販売する予定だ。最寄りの橋本駅から19分であるが、大型商業施設や小学校など子育てをしやすい住環境という実利で勝負する。10月にはモデルルームをグランドオープンする予定だ。販売価格は2500万円台~4800万円台と周辺の新築相場よりも割安に設定されている。

 

 

物件の担保力が求められる時代に

 

足もとのマーケット感としては、相続税対策に絡んだ売買取引や不動産私募ファンドに物件を売却する物件ニーズは変わらず堅調である。日本では、毎年100前後の会社が新規に上場するが、オーナーが上場後に得た資金を相続対策や事業承継にまわしたりする不動産需要は依然としておう盛であり、創業者利得を将来のために回すニーズはあまり以前から変わっていない。

 

しかし、銀行系列の不動産仲介会社によると、「今は、賃貸マンションなど収益物件を購入しようとしても融資が受けられない。少なくとも3割、属性によっては5割と半分の自己資金がないと銀行の審査は通らないことが少なくない」と話す。資産を持たない個人投資家は、これまでのように過度に融資に依存することができなくなった。その一方で融資に頼らない、自己資金でキャッシュ買いできる、そうした投資家にとっては、低い利回りであっても気にしない。ローン返済がないことからキャッシュフローを満額受け取れるため、利回り目線を気にしないで優良物件を買い付けられる環境にある。

 

金融機関は、現預金を持っているかどうかと、土地・建物の担保力によって融資の可否を見極める様相が強まった。不動産取引は、1億~5億円の物件の売買が減っている。だが、不動産売買に伴う資金循環が悪化すると、マイナス金利など金融機関を取り巻く収益環境が悪いだけに貸し渋りが過ぎると自らの首をさらに絞めてしまいかねない。一定の線引きで融資を出していかざるを得ない状況でもある。

 

大規模な金融緩和は限界に近づいたとの指摘も、当面の資金調達環境は有利な状況が続く見通しである。融資を受けられない人が増えているなかにあって、「融資を引き出せて不動産を買える人にとっては人気物件の購入競争が若干緩和されるのでは?」といったような声が冗談交じりにも聞こえてくる。

 

日本経済の動向に左右される不動産市場

 

商業用不動産においても、賃料はこの6年間緩やかに上昇し続け、空室率も史上最低の水準と異常な活況を呈している。ファンドバブルと言われたリーマン・ショック前の9割ほどまでに市況を戻し、いまの経済条件からすると事実上のピークにほぼ達している。政府の働き方改革の意識も手伝って、経営者層は1人当たりのオフィススペースの拡大など拠点の移転・増床ニーズが市況を支えてきた。このことから向こう2~3年のオフィスビル市場はひっ迫感が続く見通しであるが、賃料がさらに上値を追うことが考えづらいという踊り場にある。

 

法人の取引の過渡期を受けて、金融庁と銀行は、リテール部門(個人)の取引において融資前に限らず融資したあとのことも注視するようになった。特に事業性の乏しい賃貸経営に対する見方は厳しくなっており、収益物件の購入段階から賃貸経営の健全性が問われ、購入後の運用において経営不振の不動産を処分して資産を組み換えたりするなど事業性が担保できているかどうかも注視される。今後の不動産市場に影響してくると言えそうだ。

 

ちなみに金利動向を正鵠に言い当てることはどの専門家も不可能に近いことであるものの、日本での金利上昇には2つの局面がある。1つは、世界経済の好況に伴う各国の金利上昇に合わせた金利上昇であり、もう1つは、世界が低金利を維持しているのに、日本だけがなんらかの理由で金利を上げなければいけない局面になっていること。前者は良い金利の上昇、後者になると悪い金利上昇である。

 

日本国債は、アベノミクス以前から減ることなく発行されてきたことで残高が積み上がっている。悪い金利上昇は、国債の発行元である日本国の信頼を損なうとともに国の膨大な借金が急速に膨らみ始める。米ドルに並ぶ安全資産とされる円の信任も損なってしまうこともある。今後の日本経済の動向を注視することもまた不動産市場を予見する上で欠かせないファクターとなっている。